「僕の彼女はサイボーグ」
監督・脚本：クァク・ジェヨン
えーと・・・これ、厳密には韓国映画ではない・・・のだよね。韓国映画界の純愛ファンタジーの鬼才が放つ新作であり、日本映画。
なんかね。クァク・ジェヨンが考える日本カルチャー像の体現のように感じたし、そこがなんかすごい面白かった。
ストーリーの導入としてはものすごくシンプルで、誕生日を祝ってくれる友達も恋人もいない、孤独な僕に「天使」が降りてきた風なファンタジー、のような感じで幕を開ける。毎年、同じレストランでパスタを食べる主人公は、その日、強引な形で彼女と邂逅し、楽しい時間を過ごす。
偶然？出会い、楽しい誕生日を過ごした綾瀬はるか似の美少女が忘れられず、同じレストランを予約してパスタを食べていると、彼女によく似ているけど、行動原理が少しおかしい少女が押しかけてきて、結果そこで起きる「事件」から彼を守るのだった。
彼女はその「事件」で不自由な体になってしまった未来の自分から送られてきた、「綾瀬はるか似の美少女」を模したアンドロイドだった。
はじめは「ああっ女神さまっ」とかの「ラブコメ」の王道のようなんだけど、そこからタイムトラベル+サイボーグというＳＦ要素が加味されて、「未来の主人公が過去の自分を変える」ために送り込まれたサイボーグ、という「ドラえもん」や「ターミネーター」要素が入ってくる。
で、主人公は自分の誕生日に、自分にプレゼントをする。そのプレゼントの中身は何か、というと「綾波レイ」のフィギュアで。「え？」って思うんだけど、これが割と的確だな、と思ったのが、その後の話とわりとリンクしてきてるような気がすることで。なんていうのかな、要はこの映画、主人公の周りと彼を取り巻く「セカイ」が割とリンクしてくる、ところ。
つまり、この映画は「セカイ系」映画でもある。
ヒロインである外見が綾瀬はるかの美少女サイボーグは、未来から主人公自身の生命と主人公が心を痛めた事件を解決するために現れ、そのために主人公のそばに常駐しつづけつつ、主人公は美少女サイボーグと愉快な日常を過ごしていくんだけれども。
その日常こそが、まさに歴史においては「最大のイレギュラー」でもあった。
タイムパラドクスものには大別して２種類あって、ひとつは時間の流れというものを「一本の幹」として捉えてその時間の流れで「イレギュラー」が起こるとそれを修正しようとする力が働くという考え方と、選択によって歴史は幾重にも分岐していてそれらが並列している、という「パラレルワールド」化という２種類の考え方がある。本作はその前者、「歴史の変化は元に戻そうとする力が働く」という概念を取り入れている。
だから、未来から来たサイボーグによって、過去に介入されることで「歴史」は歪んでいき、歴史はその歪みを直そうとする。
ただ、その歴史というのが結局のところ「個人史」というレベルでの介入にも関わらず、介入した数が膨大なために結果として「歴史」は「世界」そのものを破壊してまで、彼個人の「個人史」を元に戻そうと動き始める、という展開になっていく。つまり「未来の彼」が歴史に介入してまで守ろうとしたのは享受することなく終わってしまった、過去の自分の「平凡で平和な日常」そのものであり、にも関わらず、それが原因で世界は破壊されはじめる。
「個人」の「平和な日常」によって歪んだ「歴史」の力によって、「世界」自体が大きな力に飲み込まれていく、という展開はまさに「セカイ系」の体現である。ボク（主人公）がキミ（綾瀬はるか的サイボーグ）の存在によって、「世界の危機」となって主人公に襲いかかる。
それがこの映画の「クライマックス」でもあるのだが、話はさらに続く。この「セカイの危機」そのものが、「綾瀬はるか似の美少女」の邂逅とリンクしてくる、という超展開に口あんぐり。すげえ。なんだそれ。あの明らかに妄想のかたまりのような、「美少女」との出会いを肯定するために、さらなる「歴史介入」が別の人物によって行われていたのだ！！
「キミ」と「ボク」が日常の中ではぐくんだものが、意外な人物が意外な影響を受け、彼に会いにやってくる！それははるか未来に生まれた「綾瀬はるか似の美少女」だった！という超ウルトラＣを見せ、結果「ボク」は「キミ」と真の出会いを果たす！！うっそーん！！大爆笑。
まあ、よくよく考えて、あれ？おかしくね？と思うのはもう一度行われる「歴史介入」は、最初の「歴史介入」がなければ生まれ得なかったものなわけでしょ。でも、最初の歴史介入を行った未来の「ボク」も出会ってるんだよね。「綾瀬はるか似の美少女」に。
だとすると、そもそもの「綾瀬はるか似の美少女」は誰だったんだろう・・・・という疑問は残るのだけど。ま、いいか。可愛い綾瀬はるかがいっぱい見られるから。セックスセックス*1。（★★★）
*1:by id:teskere:20080601#p1
