虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ディスタービア」

toshi202007-11-17

原題:Disturbia
監督:D・J・カルーソー
脚本:クリストファー・ランドン、カール・エルスワース



 父親の死というトラウマを逆撫でした教師を殴ってしまい、暴行罪でGPS器具による自宅軟禁刑に処された主人公。ゲームやパソコン、テレビを見る自由まで取り上げられ、毎日手持ちぶさた。ケータイや携帯ゲーム機をいじるだけでは物足りなさを感じる彼は、おとなりに美少女が住み始めたこともあり、近所をのぞき見する趣味を持つに至る。斜向かいの家に住む男の車の傷を目撃した主人公は、次の日、完全に傷がなくなっていることに違和感を持つ。やがて、男の家に呼ばれたコールガールの悲鳴を聞くに及び、主人公は疑惑の目を、その家に向けるようになる。


 覗き見から殺人を目撃する、という古典的設定ながら、「GPS器具」による自宅軟禁刑という設定により、アクションホラーの要素が多分に増した青春B級サスペンス。


 この映画のキモはやはり、「GPS」軟禁のアイデアに尽きる。この設定を、うまく主人公の足枷にしながら、同時に武器にする、というアイデアが秀逸。この辺のルールを語る手際はなかなかのもので、「裏窓」的のぞきサスペンス云々よりも、まずこのルール作りのうまさが、この映画に揺れ幅を与えてる。
 前段はユルユルなんだけれども、この辺は「GPS」軟禁のルールにリアリティをもたせる肉付けのようなもので、そこに突っ込んでもしょうがない。百戦錬磨の殺人鬼相手に、親友のロニーくん、ご近所になり親しくなる美少女ひとりだけが仲間、という心細さや、そして片親になり、心理的に不安を抱える母(主人公に物を買い与えすぎているのはその反動か?)、そこに付けいろうとする「敵」という風に、キーになる人間をしぼりこんでいく辺りも悪くない。
 彼の「担当」になりつつある警官が、ピンチの時に限って気まぐれの温情を見せたりとか、そういう不確定要素も織り交ぜている辺りも小憎らしい。


 ただ、どうしても引っかかるのは「敵」となる殺人鬼の描き方で、物語を展開させるためとはいえ、いままで逃げおおせてきたわりには行動的で短期間で犯行を重ねすぎていて、地下に堂々と死体を放置したりしてる割に、主人公に罪を着せようとしたりとこすい真似をするのもちょっと違和感がある。もう少し周到にやりそうなものだが。
 あまりに非道な犯罪を繰り返してきた割りには、妙に短絡した印象を与えてしまうのはマイナスだと思うし、この辺をもう一歩詰められれば秀作と呼ぶにやぶさかではなかったのになーと思う。その点がなんとも惜しい、佳作。(★★★)