虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「スターダスト」

toshi202007-11-09

原題:Stardust
監督:マシュー・ボーン
脚本:マシュー・ボーン/ジェーン・ゴールドマン
原作:ニール・ゲイマン



 一人の青年が、壁で閉ざされた街の外へ飛び出し、奴隷の女性と一晩恋に落ちる。数日後、青年のもとに赤ん坊と手紙が入った籠がとどけられる。それから18年後。赤ん坊はトリスタンという名で、立派なぼんくら青年に成長していた。
 数日後。彼の地を収める王が息を引き取る。彼がいまわの際に王子たちに示したルビーは夜空へと飛び去り、その刹那、流れ星が地上へ落ちてきた。その流れ星を見て、三人の老婆があわててなにか準備を始める。
 トリスタンは片思いの女性のために流れ星のかけらを手に入れることを、彼女に誓い街を出ようとするが・・・。




 思った以上に軽いファンタジーでびっくり。なのに?すこぶる面白い。「俺、クレア・デインズでも全然萌えるぜ」って感じのニッチなオタクとかにおすすめ。俺だ。



 すげえなあ、と思うのは、ここまでカルい感じのライトファンタジーでありながら、ところどころ観客をなでるようにシニカルでブラックな笑いを放り込み、しかもおとぎ話という枠内できちんきちんと話の整合性を保っていることで、ぼんくら主人公が片思いの相手のために、流れ星を取りに行く、というあたりの始まりでありながら、いきなり「パンくわえてて登校してたら曲がり角でいきなりぶつかった」的なヒロインとの出会い、しかも主人公のドジマヌケさがそう簡単に直るはずもなく、そのドジに対してヒロインは容赦なく「ドジ!マヌケ!」となじってくるけど、やがて少しずつかっこよくなる主人公に、徐々にほだされて・・・な、わっかりやすいツンデレ風味な展開が心地いい。



 先王が夜空に放ったルビーを求める3人の王子と、誰かが王になるまで成仏できない王子の霊たち、二百年前に「星の心臓」を食べて長命を誇る三人姉妹の魔女などが、それぞれにリスクを持ちながらも、全力でそのカギを握る「流れ星」のヒロインを求めて追いすがる一方、主人公も、コワモテの(だけど気のいいゲイ気質を隠し持つ)海賊と出会ったことで少しずつ変わっていく。
 あとから考えると主人公が、船長と楽しく過ごすうちにたくましくなっちゃったっぽく描いてるけど、実はあんまり変わってないちゃうんか、とか、つーかなんで流れ星が美少女・・・げふん、女性やねん、などなど疑問がわくことはわくんだけど、展開する物語がたのしくってたのしくって、そんなのどうでも良くなっちゃう。そのくらい面白い。


 しかもクライマックスの対決に次ぐ対決は、かなり盛り上がる。死体のかんかんのうみたいな、「王子」対主人公の対決は、かなりのアイデアで感嘆。そしてラストはもろに愛と言う名の「バ●ス」で大笑い。思わず魔女の断末魔に「眼があー眼がああああ」という●スカの声が脳内にかぶさったのは俺だけではあるまい。・・・俺だけ?そう?

 細かい伏線を、軽やかに回収していく手際も含めて、ここまで気持ちよい正統派B級娯楽作も久々な感じがするな。重厚長大こそすべて!・・・というクロサワ時代劇的なファンタジーに対するアンチテーゼとしての、ライトファンタジー*1の秀作!楽しかった。大好き。(★★★★)

*1:一瞬「岡本喜八的」と書こうと思ったんですけど・・・ちょっと違うかもだ?