虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「モンスター・ハウス」

toshi202007-01-14

原題:Monster House
監督:ギル・ケナン 脚本:ダン・ハーモン、ロブ・シュラブ、パメラ・ペトラー


 大人なんてみんなクソだ。

 
 子供時代というのは今思い出してもくそったれな時代だと思う。大人になって思う。子供時代は今と比べて良かったか。そんなことはない。大人が大人であることを振りかざし、自分は子供でしかない現実の前に常に押しつぶされている。抑圧抑圧の中で生きることは真に苦しく辛い。くすぶる火だねを抱えながら子供たちは生き、いじめや格差の中で強者、弱者が生まれていく。それが子供たちの、逃れられない現実だ。


 郊外の新興住宅地。まだまだ発展途上のこの街に住む主人公・DJは、その「貧乏クジを引いた子供時代」を過ごしている。親は留守。ベビーシッターの女は大人であることをカサに来て、他人の家を我が物顔で占領するクソ女だ。学校での彼の立場を象徴するように、友達は頭の弱いデブのチャウダーしかいない。世間はハロウィンだが、そんな行事に素直に参加する気にもなれない。ネットもテレビもゲームもない部屋で過ごす彼の趣味は望遠鏡で向かいの家を覗くことだった。
 そこには偏屈な老人・ネバークラッカー氏が住んでいた。彼は芝生に入った子供を脅しつけ、そこに入ったボールや三輪車などのおもちゃは、例外なく老人が没収することから、子供たちに恐れられている。彼もまた大人であることを笠に着たクソ野郎だ。


 しかし、主人公はやがて、老人の家の重大な秘密を知ることになる。それが、くそったれな日常から抜け出す、小さな大冒険の始まりだった。


 この映画の素晴らしいところは、夢もへったくれもなく現実に縛られた少年たちが主人公であることだ。子供時代に誰もが感じていた、「自分が子供でしかなかった頃の現実」をきっちりと描いた上で、ハロウィンなのにその無関係に過ごす劣等生であるDJとチャウダーが、ハロウィンの子供たちを狙った怪物化した家と対決に追い込まれていく姿を描く。
 そんな彼らには当然ながら女友達なんて気の利いた存在はいない。ヒロインのジェニーはハロウィンをしたたかにこなす女の子で、たまたま巻き込まれそうになっところを助けたところから、共同戦線を張ることになったのだ。したたかに家であることを世間に誤魔化しながら、次々と飲み込んでいく暴食の家と子供たちの対決は、やがて、一組の夫婦の哀しい物語を浮かび上がらせることになる。

 初めは純粋な思いで結ばれた、小男とデブ女の愛は、彼女が怪物化し歪むことで、彼を縛り付ける呪いとなった。老人もまた、少年と同じ、家に縛り付けられた存在だ。老人と少年は、呪いを払うために、怪物の家との最後の対決に向かうことになる。


 その対決との決着こそが、呪われた日々からの解放へとつながっている。
 歪んだ愛の恐怖と哀しみ、くそったれな子供時代の冒険とその終わりを描いた。秀作アニメーションである。(★★★★)


追記;「REAL D」上映方式(吹き替え版)で鑑賞。飛び出し具合はかなりすごい。
http://www.ikspiari.com/cinema/monster.iks