「パラダイス・ナウ」
英題:Paradise Now
監督:ハニ・アブ・アサド
評価が難しい映画。良くできた映画ではあるけれど、どこかで共感を拒むところがあるのも事実で。
評判がかなり良かったので期待しすぎた面もあるのだが、個人的にはそれほど感情が高ぶることもなく、淡々と見終えてしまった。テロリストだって普通の人生の中の選択なんだい、というのは分かるが、個人的にはもう少し踏み込んで描いても良かったのではないか、という気がする。
なんというのかな、感情移入への入り口がまず、狭い。占領下の閉鎖的な空間で、抑圧されているのはまあ、いいとして、問題はなぜ彼らが、自爆テロを強要するような組織と関係を持ち、「自爆テロやったるぜい」みたいな感じでノッてしまっているのか。その時点で、「あ、違う」と思って「しまった」。我々とは「違う人」の話だと。そのとっかかりの時点で感情のフックが俺の心にひっかかる前に、映画はひっかかったことを自明として、先に進んでしまった感じがあった。そうなると、俺は目の前にいる「彼ら」を他人として見るしかなく、展開する物語を傍観するしかない。
彼らの道行きを決して(「怪物」としての描写に逃げることなく)他人事にさせない為には、たかだか彼らの「48時間」を描いただけでは、我々との「感情」の溝は埋まらないのではないか、と思う。彼らの「人生」を台詞に頼ることなく描き切れたなら、ラストの一青年の「選択」に感情の奔流を感じることが出来たかもしれない。(★★★)