虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ニコラス・ケイジのウェザー・マン」(DVD/劇場未公開)

toshi202006-09-06

原題:The Weather Man
監督:ゴア・ヴァーヴィンスキー


 彼は天気キャスター。やたらと物を投げつけられる。妻とは離婚し、子供も彼女が引き取っている。だが、子供に会いたいがために、ずるずるといりびたっている。そして親父はマイケル・ケインで、偉大な作家。書き物はするが、親父のようにはいかない。
 そんな彼に転機が訪れる。ニューヨークのメジャー番組からオファーが来たのだ。これで人生変わるかも・・・。しかし、人生はなかなか好転しない。父が不治の病に懸かり、妻には恋人。そして息子には変態セラピストの魔の手・・・・。彼の悩み多き人生を描くのだが・・・


 しかしまあ、地味。なんつーしょぼくれたストーリー。アメリカン・ビューティーを3倍くらい水で薄めたような地味さを誇る。コメディとしてひたすら身につまされる系のネタが続くため、笑えるかと問われれば、笑えない、と応える。曇天が続く人生を象徴するように、この映画には気持ちよく晴れた日、などという場面が巧妙に避けられている。俺の人生ひたすら曇天。



 では映画の出来はどうか。これがなかなかどうして。面白い。面白いっつーか、目が離せない。そのしょぼくれ人生街道まっしぐらの男を演じるのが、ニコラス・ケイジだからである。
 タルタルソースを買った買わないのケンカが元で妻と離婚、娘が興味を持ってすぐ飽きたアーチェリーを続けさせようとして自分がドハマり、テレビに出ているくせに陰気で、外で話しかけられると拒絶反応を示したあげく、自分の方がブチきれる。ちっさい。あまりにちっさい。そんなキャラなのに、あまりのなじみっぷりに愕然とする。まるで、彼が演じるために作られたキャラクターだ。ニコラス・ケイジの俳優人生最強のハマリ役と断言してもいい。



 ・・・ってお前は本当に映画スターか!! 信用されない天気キャスターがお似合いて!そんなんでいいのかあああああ!



 つーわけで、キャスティングがピタリとハマるだけで、映画はこれほど面白くなる、ということだろうか。マイケル・ケインも、寡黙でありながらも優しさと威厳を兼ね備えた父親を好演。ギル・ベロウズが変態セラピストを地味かつリアルに演じて、嫌な新境地を開発するなど、みどころも多い、ダウナーコメディの秀作。つーか、ヴァーヴィンスキー監督なのな。最高傑作と違う?(★★★★)