虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「エマ」6巻を読む。

toshi202005-08-31



「ねえ  あなた  私と結婚した事

 後悔している?」




「しているが…



 していない。」




 静かに、そして早く。その受難は訪れる。


 メイド漫画の真打ちとして始まり、本格メロドラマとして加速し続ける森薫「エマ」最新6巻購入しました。5巻で一気に燃え上がったエマとウィリアムの関係。ウィリアムはエレノアとの婚約を解消しようとするが、それを阻止しようとリチャードは先手を打っていた。闇は忍び寄り、エマを静かに襲う。一方、ウィリアムとリチャードには決定的な溝が生まれる。
 様々な人々の、それぞれの思惑が絡みながら、物語の骨格は驚くほどシンプル。森薫ストーリーテリングはますます快調。だが、それとともに物語は流転の予兆をはらみ、加速している。予断を許さないまま、物語は続く。


 今後としてはエマの安否と共に、ウィリアムへの深い思いを挫かれたエレノアの今後が気に掛かる。嗚呼。



●キャラ雑感


・アーサー…父・リチャードの理知を受け継いだ、ウィリアムの弟。兄の行動に違和感を抱き、波乱の予兆をつかんでいる。鋭い。ウィリアムの婚約解消にも冷静。「物語じゃないんだ。」はいい台詞。


・ヴィヴィー…かつてエマに、身分不相応だと言い渡した、保守的なウィリアムの妹。ていうか、エレノアを慕い、彼女とウィリアムが結ばれることを願っているだけ、という風にも見える(まあ、保守的な考えとというのは、得てしてそういうところから派生するのだが)。多感な時期だけに、エレノアとウィリアムの破局にショックを隠さない。


・エレノア…恐れていたウィリアムとの破局が決定的に。ただでさえ、彼のことでいっぱいいっぱいで、やきもきやきもきの日々であったのに、この結末は不憫というしかなく。つくづく罪作りだ、坊っちゃまは。つーか、今後あるだろう、エレノア父の逆襲と、今回の失恋の反動が今から恐ろしく。


・ウィリアム…嵐をよぶ坊ちゃま、今回も絶好調。今回、動けば動くほど、裏目裏目に。そして、エマはさらわれ、トロロープはとまどい、リチャードは企み、アーサーが見守る中、グレイスは悩んで、エレノアは泣くのでした。あうあう。せめてエマを救い出して面目躍如といきたいところだが…。


・キャンベル子爵…エレノア父、今回はリチャードにいいように使われている感が。この代償はでかい気がする。エレノアの件も含めて。


・キャンベル夫人…予想以上にしたたかなご婦人でびっくり。さすが、社交界を生き抜いた女は違う。旦那の女遊びも見て見ぬ振りか。本人も若いツバメをつまんでそうだが…ってキャンベルの気性がそれを許さないだろうか。


・メルダース家の人々…今回はひとくくりで。エマのゴシップ&失踪で盛り上がるメイド&給仕たちを後目に、ご主人はさすが冷静だ。ターシャの、エマとの距離感が相変わらず面白い。親しいというほどではないが、いつの間にか依存しているという。


・エマ…いよいよ受難の刻。キャンベルの手先であるオドネルのシンプル且つ狡猾な罠にはまり、さらわれる。しかし、いよいよ流転の人生だなあ。


・リチャード…時に、環境は人を変える。社交界を憎んできた男が、社交界でのし上がる過程で積み重ねてきた様々なものが、時に彼を縛り、時に駆り立てる。ウィリアムの先を読んだ企みは、さすが、年の功。父の理知よりも、母の感情を色濃く受け継いだウィリアムだが、彼が指弾した一言が、リチャードをしばし沈黙させる。