「アイランド」
マイケル・ベイってもしかしてすごい監督なんじゃなかろうか。
この映画を見終わってふと、この思考がぐるぐると浮かんでしまった。うううん。まあ、そんなわけ…ないん…だが。「アイランド」の序盤のイメージビジュアルが実に良かったんである。序盤のなんともいえず、非人間的なまでに清潔感に満ちた施設。白い制服。手塚治虫のモブシーンのような人々が行きかう時の虚無的な感じとかが、…実に恐ろしくってねえ。
いやあ…こんなとこ…絶対住みたくねええええ!
と思うくらい嫌でして。いやまあ、住みたくはないんだが、クローンを題材にした映画ということで、そんな舞台の意匠としては、清潔で閉鎖的でそれゆえ怖い雰囲気によって、「アイランド」というシャンバラ(楽園)が一層輝いてみえる。如何にも綺麗過ぎるというか、綺麗過ぎて気持ち悪いという世界観によってもたらされる説得力。うーん、いいじゃん。そう思っていたのである。
そんな世界に一筋の不協和音。ブシェミ登場。
彼が出てきてから、その完璧に気持ち悪かった世界が、軋みを立てて崩れていく。ああああああ…その崩れてできた割れ目から、見えてくる…マイケル・ベイの真骨頂が徐々に顔を現す。あああああ。なんてことだ。このときになって、愚かにも思い出す。これはマイケル・ベイの映画なのだと。当然のようにカーチェイス。ふっとぶ車。対象に寄り過ぎて何起こってるんだかわからないアクション。70階から落ちても死なない主人公。あっさり死ぬブシェミ。だんだん深みをなくしていくビジュアル。
すごい。ありえない。あの序盤の見事なデストピアっぷりはなんだったんだ。愕然とする俺を尻目に映画は進む。SFとしては結末が尻切れだし*1、結局主人公のしたことって根本的には何の解決にもなっとらん気がするのだが、マイケル・ベイがやりたいようにやった時点でこの映画は、そういった突っ込みをしても無効化してしまう。だってベイだもん。すっげーかっこいいぜベイ!…そうだ。
マイケル・ベイという作家性そのものが「アイランド」だったんだよ!!
な、なんだっt(以下略)
…などと一瞬でも思ってしまった自分がね、いたんだよね、って話。とほほ。ま、楽しかったのでいいかー。(★★★)
*1:ハッピーエンドっぽく処理されてるけど、絶対んなわけない