虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

今週のプラネテス-ΠΛΑΝΗΤΕΣ- PHASE.21「タンデム・ミラー」

http://www.planet-es.net/
http://www3.nhk.or.jp/anime/planetes/


amazon.co.jp:「プラネテス」関連商品



●あらすじ(公式ページより)
 ついにハチマキはフォン・ブラウン号にやって来る。これから半年間、乗組員第三次試験のため滞在するのだ。一方、タナベは月に向かう途中なんとかハチマキに連絡をとることができたが、冷たく突き放されてしまう。ショックを受けるタナベだが、偶然にもあるデブリを回収する。それは以前事故を起こしたタンデムミラーエンジンの残骸だった…。


●メモ

 二人の男、タンデム・ミラーと邂逅する。


「君たちにはこれから半年間の三次試験で、フォン・ブラウン号のすべてを覚えてもらいます。」

 木星計画乗員試験は三次試験まで進む。


「とうとう来た…」「ああ………ここまで…来た。」

 タンデム・ミラーエンジンを前にした、ハチマキとハキムはそれぞれの感慨に浸る。


「最低でも1ヶ月も月にいるんだぞ!その間私に禁煙しろってのか!?」

 タンデムミラー2号エンジン事故の助っ人として、第3事業部のデブリ課に出向する第2事業部デブリ課はその準備中。つーか、今はフィー姐さんの「暴走ストッパー」運びだな。


「こないだ大学を卒業して今は連合の監査部にいるんだ。…もちろん、親父のコネ。」

 第4話で醜態をさらしてしまったコリン・クリフォードぼっちゃま、したたかになって再登場。


「コリンさまが一デブリ回収船の抜き打ち監査とは。」

 監査部の新人として抜き打ち監査にやってきたのだった。そして何故かその場にいるノーマン事業部長。


「僭越とは思いましたが、我が社のキャビンアテンダントを同行させますので、なんなりとお申し付けください。」

 このノーマン事業部長の上の者に対する抜け目なさが、ドルフに足りなかったところだな。人がその地位にいるのには、それなりの理由がある。


「いいさ。はっきり見えないくらいの方が。始めようか、アルテミス。」

 前回知り合ったノノとギガルト先生。すっかり親しくなった(らしい)ノノ(=アルテミスw)にギガルトはメッセージの録画を依頼する。
 ちなみにアルテミス=月の女神。


「お金も地位も権力も申し分なし。月までの間に絶対きっかけ作ってみせるんだから。」

攻めのリュシー嬢、復活。チェンシンといいコリンといい、ボンボン好きだな。


「ホシノ。木星計画は必ずしも人類の総意ではない。反対運動も各地で行われ、計画が成功してもその恩恵に預かれるのはごく一部の先進国だけだ。巨大な計画の影でマイノリティは黙殺されようとしている。君は迷うことはないのか?」「ないね。わがままになるのが怖い奴に宇宙なんで拓けねェよ。」

 
 このハキムの質問の真意はなんだろう、とふと思う。もしかしたら最後の最後で、ハキムにもまだ迷いがあったのではないかと思う。前回交わした「ためらいがちの」握手は只の偽りだったのか。そうは思えない。
 試験を共に戦う中で、ハチマキとの間でなにかしら共有するものがハキムにも存在していたはずなのだ。この質問に対するハチマキの答えは、彼の目的を果たす上でのストッパーだった「情」を外すか否かの最後の鍵だった。今にしてみればそういうことなのではないか。


「俺のことだろう。お前に話してどうするんだよ。俺は俺、お前はお前だろう。」

 ユーリの手回しで、やっとハチマキに電話することが出来たタナベ。嬉しくて色々話しかけるが、ハチマキは冷たく突き放す。前回のチェンシンの言葉を裏付けるように。


デブリの回収するんでしょ?監査用のカメラ回してよ。月に着く前に監査が終わるなんて、ラッキーだなあ。」

 DS-12が月に入港する直前、管制課からデブリの回収指示が来る。そして見計らったように行われる監査。


「昨日民間のデブリ回収員がエンジンの一部を回収しましたが、このデブリには局所的な過負荷による応力破断の痕跡があり、それによる構造破壊が暴走事故につながったと事故調査委員会はみています。」

 2号エンジンの事故がテロによるものという情報操作、そしてテクノーラは責任を逃れ、さらにはそれにつけ込み停止装置をロックスミスに許可させ、そしてその流れを利用しようとする者がいる。


「クレア。あんたは優秀だった。私が知る限り5本の指に入るよ。」
「お手柄ですね。予定通り。」「賢すぎるのも考え物だね。見えなくていいものが見える。」

 その優秀さが逆に、見なくても良い資本主義の汚さが見えてしまう。それが彼女の不幸かもしれない。


「また愛…?あなたの愛は薄っぺらいのよ!あなたの愛が、一人でも救ったことがあるの!?
「愛では救えないわ。エルタニカもマナンガも。」

 誰も言わなかったことを…!!!クレアの啖呵が炸裂。
 ハチマキに拒まれ、仕事しかなくなったタナベは自分の仕事に意義を見出そうとするが、その発言がクレアのマイノリティ魂に火をつけてしまう。まあ、デブリ課の人間もあえて言わなかったであろうことを口にしてしまう直情さはドルフゆずりというべきか。  


「そろそろ宇宙維持法案の審議も始まりますしね。」

 どういう法案かは知らないが、テロリスト対策法案だろう。今回の報道もこの法案を進める横車でもあるのだろう。それを口にだしちゃうドルフの大人になれない青臭さ。それが彼の弱点であり、そして魅力でもある。


 そしてハキムは動き出す。  


「今さ、ワイアーアンカーの射出機で狙ってる。船の外板にロープをぶちこむ奴だ。」

 ハチマキは行動を予測し先回りして、彼の行為を止めようとする。ワイアーアンカーを武器にするのは15話のエーデル仕込み。


「テマラ・ポワチエのこと覚えているだろう?彼だけじゃない。デブリを拾いながら、宇宙開発の影であがく人間達を見てきたはずだ。君は何も学んでいないのか。すべて通り抜けるだけか?どれもこれも自分とは関係のない他人事か?想像力のない君が、世界を都合良く捕らえていく君などがなぜ、そんなものを持っている!?」

 忘れたはずだった。デブリ屋のことも、友達も恋人も仲間も、全て切り離してきたはずだ。だが蘇る記憶。


口先だけの愛なんてふりかざないで!
口先だけの決意なんてふりかざないでくれ!



●雑感。
 いよいよ連綿と張られてきたマイノリティたちの伏線が、一気に回収され、爆発する回。弱者の声がかき消され、広がる一方の格差の中で、彼らが声を上げる方法は限られている。