2019年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。
みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年を越しましたでございます。
去年ブログ更新はまったくせず、Twitterでは映画感想をガンガンかいてたりします。鑑賞量は過去最多を更新している有様。
しかもこのブログ記事を書いているのがこの日付の翌年(2020年)の年末という体たらく。
というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。
10位「ブラインド・スポッティング」
- 発売日: 2020/04/03
- メディア: Blu-ray
「ブラインドスポッティング」。懲役後の保護観察が残り3日に迫ったコリン。無事乗り切れば晴れて自由の身。だが、偶然目撃した警官による黒人射殺事件、白人の親友マイルズの暴走がコリンの立場と心を追い詰める。人種、生き方、格差。たとえ同じ境遇の親友でも、互いの見え方は違う事を描いた傑作。 pic.twitter.com/AgVZ7qTy86
— 窓の外 (@madosoto) 2019年9月11日
9位「シティーハンター 史上最香のミッション」
シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 豪華版 [Blu-ray]
- 発売日: 2020/05/08
- メディア: Blu-ray
見終わって度肝抜かれるとはこの事。日本で生まれた漫画/アニメ作品が、これほどの愛情と誠意とセンスによって、フランスで「まさにこれぞ!」という実写映画として生まれ変わるとは。それだけでまさに僥倖。その偉業に敬意を。
「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」素晴らしかった。フランスとこれほど親和性あるとは思わなかった。下ネタから挟まれるギャグから徹頭徹尾くだらないけど、ドラマ構成や獠と香のやりとりからして数話にまたがるテレビアニメ版感覚で違和感なく見られるの凄い。ファンも納得だわ。 pic.twitter.com/w1uLBn2uNj
— 窓の外 (@madosoto) 2019年12月1日
8位「スパイダーマン:スパイダーバース」
スパイダーマン:スパイダーバース ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
- 発売日: 2019/12/06
- メディア: Blu-ray
「スパイダーマン:スパイダーバース」先行IMAX見た。
— 窓の外 (@madosoto) 2019年3月1日
なるほど、こいつぁー素晴らしい。「スパイダーマン」の可能性を限りなく拡張する意思に満ちた傑作。人種も、性別も、国境も、次元すら超えて。俺も貴方もスパイダーマンになれる! pic.twitter.com/d3Kf13QW0l
7位「国家が破産する日」
現実と向き合わない。国民を欺く。平気で嘘をつく。国家がそれを平気で行ったとき、国はどうなるのか。この映画はそんな韓国の「歴史的失敗」を描いた映画である。そして、それは決して我が国も他人事ではない。学ぶべきことが多い映画である。「国家が破産する日」。1997年に韓国を襲った金融崩壊を引き金とした通貨危機とその顛末を、危機と向き合う者、利用する者、翻弄される者の視点から描く、国家レベルの「しくじり先生」。現実を見ず、国民を欺き、危機になった時国家が真っ先に見捨てるのは誰か。この映画は決して対岸の火事ではない。 pic.twitter.com/ROwOViL7aM
— 窓の外 (@madosoto) 2019年11月17日
6位「金子文子と朴烈」
かつて日本に、これほど魅力的な人物たちがいたことを日本映画ではなく、韓国映画に描かれてしまったこと。それ自体が敗北である。関東大震災で行われた事をも描き出しつつ、日本という国の本質を暴き出しもする。善悪に依らず「日本人からは見えなかった日本」が描かれた映画である。「金子文子と朴烈」日本人に描けなかった、韓国発の「日本映画」。参った。朴烈と文子のアナキスト時代を整理しつつ、彼らが何故大逆罪を引き受け、獄中や法廷で明らかにしたものとは何かを描出。理不尽への怒りに満ちた生を生きながら、驚くほどチャーミングでユーモラスな2人の輝きを描き出した傑作 pic.twitter.com/GBSqNcLWgh
— 窓の外 (@madosoto) 2019年2月19日
5位「アラジン」
アラジン MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 発売日: 2019/10/09
- メディア: Blu-ray
「アラジン」遅まきながら。
— 窓の外 (@madosoto) 2019年9月17日
なんだよー!最高に楽しいジャーン!すげー良かった!癖のある主人公、陽気すぎる魔人、野心高く屈折した悪役、まっすぐに国を思うプリンセス。
歌と踊りと見せ場がてんこ盛り!物語も緩急が素晴らしく飽きさせない。ガイ・リッチー監督の手腕が遺憾なく発揮された傑作! pic.twitter.com/xvg0k4THQ2
4位「ブレッドウィナー」
- 発売日: 2020/07/10
- メディア: Blu-ray
「ブレッドウィナー」。傑作。タリバン圧政下のアフガン・カブール。女性は一人で外出も許されず、男性と一緒でないと買い物も出来ない。あらゆる制約の中ヒロインの支えは愛する家族と母の作った物語。だがある日父親が拘束・収監、残された家族は外に出られなくなった。家族のため少女は少年になる。 pic.twitter.com/FjaPh8YrXS
— 窓の外 (@madosoto) 2019年12月24日
3位「パラサイト 半地下の家族」
- 発売日: 2020/07/22
- メディア: Blu-ray
「パラサイト 半地下の家族」日比谷で鑑賞。「ポン・ジュノ、さすが」としか言いようがない。素晴らしい。
— 窓の外 (@madosoto) 2019年12月27日
上映前に監督キャストから「ネタバレしないでネ」と映像で優しく頼まれたので、最善策をとって詳しい感想はまた後日。年明け公開後にでも改めて。 pic.twitter.com/DaliQA4nFL
2位「工作 黒金星と呼ばれた男」
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス) と呼ばれた男 [Blu-ray]
- 発売日: 2020/01/08
- メディア: Blu-ray
「工作 黒金星と呼ばれた男」。韓国の安全企画部から北朝鮮に送られた実在のスパイを描く、実録激シブ男泣きスパイ映画の傑作。色々ビックリすぎる話が次々と出てきて「マジかよ」と思うんだけど、これが大体実話だっつんだから腰抜かす。とりあえず前情報一切遮断してから見るのがオススメ。すげー。 pic.twitter.com/co7ltmwYDD
— 窓の外 (@madosoto) 2019年7月21日
1位「ガリーボーイ」
- 発売日: 2020/02/19
- メディア: Blu-ray
父親の横暴、貧民街から抜け出せない現実、新しい事をしても認められない鬱屈。それらへの不満をすべて吐き出す。その術がラップだった。絞り出すように紡がれた言葉は、同じ境遇の若者たちはおろか、この映画を見ている老若男女を問わず、深く響くはずだ。そう信じる。
「ガリーボーイ」。フリースタイルラップでのし上がっていく青年を描いたサクセスストーリーなのだが、インドに未だ根強い格差、貧困、因習に押し潰されそうな若者たちのドラマ、そこから搾り出すようなラップの「ライム」との親和性が凄まじく、国境を越えてそれは俺たちの言葉になる。号泣。ド傑作。 pic.twitter.com/CZesbCv6lf
— 窓の外 (@madosoto) 2019年10月27日
男の魂に火をつけろ!の映画テン年代ベストテンに参加します
参加します。
washburn1975.hatenablog.com
映画テン年代ベストテン
1位:「これは映画ではない」
2位:「新感染/ファイナル・エクスプレス」
3位:「この世界の片隅に」
4位:「花とアリス殺人事件」
5位:「サバイバルファミリー」
6位:「かぐや姫の物語」
7位:「バーフバリ 王の帰還」
8位:「悪女 AKUJO」
9位:「アベンジャーズ」
10位:「ジャージー・ボーイズ」
「ジャージーボーイズ」
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2015/09/02
- メディア: Blu-ray
テン年代中ごろから、自分の中において「ミュージカルブーム」のようなものが起きたというか、ミュージカルの「楽しさ」に目覚めたようなところがあって、その先鞭をつけてくれたのが「ジャージー・ボーイズ」だと思う。「ボヘミアン・ラプソディ」の応援上映にあししげく通うようになったり、「グレイテスト・ショーマン」を繰り返し見てしまったり、とにかくミュージカル映画を何度も何度もいつくしむように見るようになったのは私の中で事件でした。
「ジャージー・ボーイズ」はとにかく、「君の瞳に恋してる」からのロックの殿堂での再会、そしてフィナーレへとつなぐシーンで毎回号泣してます。
「アベンジャーズ」
アベンジャーズ:4ムービー・アッセンブル [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2019/09/04
- メディア: Blu-ray
「悪女/AKUJO」
日本でもリメイクされた「殺人の告白」というとんでもない傑作でデビューしたチョン・ビョンギル監督が世界に放つ、壮絶暗黒エモアクション。とにかく開幕アクションで度肝を抜かれ、気おされたまま激情と悲哀の物語に突入する。彼女が「完成」したとき、最も悲しい戦いが幕を開ける。その壮絶さ。「とんでもないアクションに始まりとんでもないアクションに終わる」映画でありながら、胸に落ちるは爽快感とは程遠い切ない痛み。この後味を含めて、この映画に完全にノックアウトされたのでした。「悪女/AKUJO」見ました。はいヤバイでーす。映画館で見なかったら舌噛み切って後悔するやつでーす。多分今年俺ベストに入れまーす。悪い事は言いません。見なさい。傑作。 pic.twitter.com/UJI2TnXtGE
— 窓の外 (@madosoto) 2018年2月13日
「悪女/AKUJO」。「殺人の告白」の監督の新作だけあって、構成が練りに練られてるのがいい。冒頭の掴みの一人称アクションで呆然とさせておいて、ヒロインを待ってるのは幾重にも仕掛けられた罠。吐き気がするほどの切なさが、終盤残酷に爆発する。恋、愛、謎、裏切り、そしてバイオレンス。特盛。 pic.twitter.com/Wk558qOVil
— 窓の外 (@madosoto) 2018年2月13日
「バーフバリ」
- 出版社/メーカー: 株式会社ツイン
- 発売日: 2018/02/21
- メディア: Blu-ray
インドからやってきた映画の化け物。それが「バーフバリ」。それまでの映画の概念を大きく揺るがし、自分を含む映画ファンがこぞって熱狂した、存在自体が「事件」ともいえるとんでもない作品でした。とにかく映画館で見なければいけない映画という意味では他の追随を許さない、応援上映の盛り上がりも、今思い返しても異常というべきもので、見る「活力剤」ともいうべきものでした。映画ってこんなすごいんだ!と肌で感じさせられた映画でした。
「バーフバリ 王の凱旋」絶叫上映@新宿ピカデリー 終わりました。そして思い知った。我々はしょせん、王を称えることしかできぬ群衆に過ぎぬと。野暮なツッコミは脳内からかき消され、ただ「バーフバリ!」と叫ぶことしかできない。そんな映画でありました。ありがとうございました。 #バーフバリ絶叫 pic.twitter.com/tz4XUuP8cw
— 窓の外 (@madosoto) 2017年12月29日
「かぐや姫の物語」
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2014/12/03
- メディア: Blu-ray
kyoba.hatenablog.com
「サバイバルファミリー」
毎年年間ベストテンを出している当ブログですが、テン年代、我が年間ベストには常連監督がいらっしゃいます。それこそ誰あろう矢口史靖監督であります。そういう存在が自分にいることもまた「事件」でありましょう。日本を代表する喜劇監督であり、コメディでなにを表現できるかをつねに突き詰める矢口監督の姿勢は首尾一貫しており、題材は千差万別、それがたとえ極限のシチュエーションであろうとも一切ブレがないことを証明した大傑作こそが本作であります。「サバイバルと銘打ってるのに死がない」と言う野暮な批判を目にした時は「この映画のなにを見とるんじゃ!」と激昂した私です。そんなの「戦場の兵士の戦闘を描かなきゃ戦争映画じゃない!」って言うくらい間抜けな話だ。例えリアルにシミュレートされた死と隣り合わせの世界であっても「人間性と笑い」を手放さない。そんな軽やかで強靭な矢口監督の意志を本作からは感じるのです。
「サバイバル・ファミリー」。ド傑作。面白かったーーーー!
— 窓の外 (@madosoto) 2017年2月11日
「サバイバル・ファミリー」。いやー素晴らしい。電気が全て消えた世界という設定を徹底的にシミュレートしつつ、一家族が生き残りを賭けて日本を迷走する中で、家族の絆と生きる力を獲得し始めるまでを丁寧に描いてる。ワンアイデアもここまで突き詰めるとゾンビものより怖いホラーにも喜劇にもなる。
— 窓の外 (@madosoto) 2017年2月11日
「サバイバル・ファミリー」。電気のない世界に放り出された世界では人間は時にゾンビより怖いけれど、だからこそ生まれる感情の爆発や肉体の躍動、人間の本来あるべき情が溢れ出る。それを丁寧に段階を追ってきちんと描くことで、限りなく説得力を持たせる矢口史靖監督の手腕、ここに極まる。見事。
— 窓の外 (@madosoto) 2017年2月11日
「花とアリス殺人事件」
近年見たアニメ映画の中でいちばんの「事件」でした。岩井俊二監督が見せる実写映画さながらの繊細なカメラワークで演出されたロトスコープアニメーションは、岩井俊二の実写の制約すら越えたイマジネーションの具現化とアニメーションとしても未知のカメラワークが融合し、どこかで見たようで誰も見たことがない映画になってると思います。お話はあくまで「花とアリス」の前日譚。2人の少女の細やかな機微と様々な感情をすくいつつ、アニメ表現の可能性を押し広げる傑作だと思います。テン年代で一番見てる映画かもしれません。「この世界の片隅に」
見終わった時の「泣くでもなく、感動したという言葉でもなく、ただただ静かに衝撃を受けた」という感覚。「重いパンチ」を喰らったように。しばらく心が酩酊して立ち上がれないような、そんな体験は初めてだった。ヒロイン・すずさんの生活と、確実に動いていく歴史(世界)との距離。遠く向こう側にありながら、確実にそこにある。僕らはそれをより深く知っていかねばならない。この映画だけでは終わらない、「片隅」から見える、その世界の広がり、そこに続く現在までの道。そんな広がりを感じさせる映画でした。「新感染/ファイナル・エクスプレス」
- 出版社/メーカー: 株式会社ツイン
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: Blu-ray
「これは映画ではない」
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2015/05/30
- メディア: DVD
映画とはなにか。映画をなぜ撮るのか。イランの巨匠、ジャファール・パナヒ監督が突きつけた問いは、テン年代最大の衝撃でした。撮りたい話はある。撮りたい絵もある。しかし、映画を撮る自由だけがない。軟禁状態である、その中で映画を撮ろうとするジャファール・パナヒ監督の、そのiPhoneを前に悪戦苦闘する姿は、僕の心に深い爪痕を残す。傑作「オフサイド・ガールズ」を撮った後、政治的に「映画を撮る」事を禁じられていく。そんなイランの閉鎖的状況の中でも抗い続けるパナヒ監督は、今も様々な形で新作を作り続けている。「これは映画ではない」という。この映画が「存在」するということが、映画というジャンルは決して死なないという、力強い宣言にも思えてくるのである。
2018年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。
みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。
今年、ブログ更新量はいよいよ、見る影もなく壊滅状態で大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっておりTwitterでは映画感想をガンガンかいてたりします。鑑賞量はブログを書かない分、過去最多120本を軽く超えておりまして。しかも面白い映画ばかりで、選定作業は難航いたしました。
というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。
10位「ボヘミアン・ラプソディ」
- アーティスト: クイーン
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2018/10/19
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (10件) を見る
今年最後に爆発的ヒットを記録している、人気ロックバンド・Queenを扱った伝記映画。
とにかく映画館で見た回数で行ったら今年一番かもしれない。伝記映画としては構成がいびつな映画ではあり、そして虚実をないまぜにした「フィクション」でもある。そういう意味で毀誉褒貶があるのはわかる。だが、それでも後半20分強を実際のライブ再現に使い、そこにドラマを収束させたのは見事であった。あそこまで「ファン以外の層」に「Queen」の音楽を響かせるクライマックスを作り上げたのは、まさに映画ならではの離れ業だと思う。
加えて、私の初見が「Queenファンが集結した発声可能上映」というのもでかかった。その体験がとにかく衝撃的で、その出会いのせいで、私は「応援上映じゃなきゃ見れない」体になってしまった。どうしてくれる。とにかく「映画館でこそ見なければいけない映画」として忘れがたい体験でした。
未見の方は公開中に是非。
9位「タクシー運転手 約束は海を越えて」
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2018/11/02
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (3件) を見る
実話を元にしてはいるのだが、主人公のタクシー運転手当人がどういう人物なのか。実は長らくわかっていなかった。そこから想像を膨らませて描いた「フィクション」でもある。政治にまったく興味もなく、デモに対しても辛辣だった「ノンポリ」タクシー運転手が、外国から来たソウルから光州までの「長距離客」をせしめた事から、彼は「自分の国で何が起きているのか」を目の当たりにする。その主人公を肉付けするソン・ガンホの演技がとにかく人間くさく、政治と我々は不可分であることを身を持って教えてくれるのである。
この映画が韓国で大ヒットしたことで、モデルとなったタクシー運転手の身元とその後の人生が判明した事を含めて、映画の力ってすごいと思わせる傑作であります。
- 出版社/メーカー: 株式会社ツイン
- 発売日: 2019/02/06
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (1件) を見る
8位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 ブルーレイ+DVDセット[Blu-ray]
- 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 発売日: 2018/09/05
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (4件) を見る
この映画における「新聞」というメディアが「権力」におもねる事なく、戦うことの苦難とその重要性を描いた作品なのですが、とにかく僕にとって衝撃的だったのは、その構成。
僕の仕事は「新聞の印刷」であります。
僕は新聞を「書く側」ではなく、「刷って届ける側」であります。この映画は「書く側」のドラマではあります。だが、同時に「日々刷っている」人間に対して最大限の敬意を払ってくれた映画であります。あの「スティーブン・スピルバーグ」が、そんな映画を作ってくれたのです。これが感動せずにはおれますか。
日々書かれた内容を刷って顧客に届ける。
装填された弾丸が拳銃から射出されたかのように。輪転機が動く。魂を込めた記事が、新聞として刷られていく。その新聞を荷造りし発送する。その新聞が世界を変えていく。
この「刷る」という仕事も日々のたゆまぬ努力によって為されている、書くのと同じくらい大変な仕事なのです。そんな日の当たらない我々の仕事を、こんなドラマックに扱っていただけるとは思わなかった。劇場で嗚咽に近い号泣をしてしまった。とにかくこの作品には「ありがとうございます。」という言葉しかありません。スピルバーグ監督に最大の感謝を。
7位「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2018/11/21
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (1件) を見る
優美さを求められる「フィギュアスケート」界において、トーニャ・ハーディングは次々と前人未踏の技を開拓する「技術の天才」であり、彼女のそのハングリーさとある種向こうみずな性格は、母親によって形成されたことが明らかになっていく。そんな「フィギュアスケート」の技術を底上げすることに貢献してきた才能が、なぜ「転落」していったのか。彼女自身の目線から描かれていくのだが。
その真相はあまりに衝撃的で、劇場で腰を抜かしそうになった。人間って「こんな事」で未来を失うのか。これが「悲劇」なのか。それとも「喜劇」なのか。この映画の物語が事実ならば、そのシナリオを書いた「神」はなんと残酷な事であろうか。あまりの事に「爆笑してしまった」その真相は、是非とも映画本編でご覧ください。
6位「殺人者の記憶法」「殺人者の記憶法/新しい記憶」
- 出版社/メーカー: Happinet
- 発売日: 2018/08/02
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (1件) を見る
この映画の白眉は、自分を構成するために必要な「記憶」を徐々に失いながら、最愛の娘のために戦う「殺人鬼」の物語であることだ。「殺人鬼」とはいえ、娘が生まれて以降は殺しをやめて一介の動物医院を営む初老の男なのだが、体力差に加え狡猾さも併せ持つ「敵」に対し、「アルツハイマー」が進行する中で戦わざるを得ない苦闘が描かれる。のだが。
この映画の「別バージョン」である「新しい記憶」で、実はこの映画の物語に「もうひとつの可能性」が観客に提示される。この二本を見ることにより、観客は「記憶」という実にあやふやで不確かでいい加減な存在に、戦慄することになる。自分の「見ていた」物語はどちらなのか。自分は「何」を見ていたのか。観客を「思考の泥沼」に引きずり込む、恐るべき映画であります。
- 出版社/メーカー: Happinet
- 発売日: 2018/08/02
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (1件) を見る
5位「モリのいる場所」
- 出版社/メーカー: バンダイナムコアーツ
- 発売日: 2018/11/22
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (1件) を見る
30数年自宅から一歩も出なかったと「言われている」熊谷守一氏が自宅でどう暮らしていたのか。彼のとある数日を「スケッチ」した映画で、その自宅の庭がまるで「一個の小宇宙」のように描かれている。「モリ」を演じる山崎努とその奥さんを演じる樹木希林は、本作が初共演とのことだが、まるで長く連れ添った夫婦のように「その世界」にたたずんでおりその演技が実に素晴らしい。
もちろん「熊谷守一」氏はそこに至るまで様々な苦難を経験してはいるのだが、この映画ではそれは「匂わされる」程度で決して表立って描きはしない。あくまでも二人の老夫婦から見た「世界」に寄り添っている。その視点が実に見事で、沖田修一監督恐るべしと思った次第。
4位「ラッカは静かに虐殺されている」
シリアの内情を国外向けに報道するシリアの市民ジャーナリストのグループについてのドキュメンタリー映画。
今年、シリアで拘束された安田純平さんの事件が記憶に新しいが、シリア内戦とそこでの国内の内情を世界に発信するジャーナリストのグループがRBSS、日本語で「ラッカは静かに虐殺されている」である。
ISによって報道が統制され、真実を報道できない国がどうなるのか。シリアの内情の一端を描くこの映画は非常に衝撃的だ。
今、日本では「メディア」の存在は非常に軽視されはじめていて、安田純平さんへの一部で行われた「非難」もそこに端を発している。だが、権力におもねり、真実に切り込むメディアを失った国がどうなっていくのか。彼らが住んでいたかつて美しい都市だった「ラッカ」の無残な姿をそのカメラは捉えている。
ここに出てくるジャーナリストたちは元々記者ではない。様々な職種だった人々が集い、自らの国の惨状を世界に伝えようと文字通り命がけで戦っている姿を描いている。彼らが伝えるシリアの姿はあまりつらく、見るに堪えない。だが、これは世界が知るべき真実であるのだ。この映画は「メディアが死んだ国はこうなるのだ」という警句でもある。
3位「リメンバー・ミー」
リメンバー・ミー MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2018/07/18
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (6件) を見る
私には弟がいて、私が常に映画館まで行って新作映画を見に行くことに訝しげに尋ねることがあり、そこで私は常にこう答えてきた。「その新作映画の一部が、後に古典になるのだよ。」と。それでも弟は納得してなかったのだが、たまたま本作の試写会が当たり、一緒に見に行った時、見終えた後「ようやく言ってる意味がわかった」と興奮した。本作もまた「古典になりうる新作映画」の一本であります。
この映画を見た後の興奮は忘れがたい。歌を巡る葛藤の物語、死者と生者をつなぐ独自の世界観、ツイストの効いた脚本、そして圧巻のクライマックス。「忘れようにも忘れられない」映画であります。
2位「パディントン2」
パディントン2 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2018/07/04
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (3件) を見る
ペルーからイギリスにやってきた熊・パディントンの物語は第1作も非常に面白かったが、第2作は輪をかけて素晴らしかった。時まさに「移民問題」でヨーロッパが揺れる時代に作られた本シリーズは、家族向け映画としても大変優秀ながら、異邦人を受け入れる寛容な社会の重要さを高らかに歌い上げもする。
ミステリ、アクション、コメディ、刑務所もの、そしてミュージカル。この映画はあらゆるジャンルを横断する。
パディントンが無実の罪で刑務所に入った事から巻き起こる騒動とその顛末は、彼の人柄に触れて人々を巻き込みながら、やがて奇跡的なハッピーエンドへとつながっていく。多幸感あふれるエンディングはまさに素晴らしく、思わず感涙。まごうことなき傑作です。
1位「悪女 AKUJO」
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2018/06/22
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (1件) を見る
父を殺され、暗殺者として育てられた女が復讐の果てに逮捕され、国家直属の女暗殺者として生まれ変わり、新たな人生を始めた事から、さらなる悲劇へと巻き込まれていくアクション映画。
映画館で見て、一発で衝撃を受けたのはそのアクションである。とにかく「新しい」。オープニングシーンから「どうやって撮ってるんだ?」と思ってしまう壮絶なアクションを観客に叩きつける。
スタント出身のチョン・ビョンギル監督の目指すアクションは「見たことないもの」への飽くなき探求に満ちている。そして映画で描かれる物語は、激しい情念に満ちている。日本でリメイクされた「殺人の告白」でデビューしただけあり、その物語性も素晴らしい。アクションとドラマが不可分である点も特筆すべきことである。
激しく、儚く、美しくも切ない。一人の女の「愛」の物語であり、「哀しみ」の物語であり、「狂気」へ至る物語である。
「誰も見たことない映画」を高い次元で実現した、恐るべき映画だと思います。映画館で見れて本当に幸せでした。
男の魂に火をつけろ!の映画映画ベストテンに参加します
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20181030
ワッシュさんの「映画映画ベストテン」に参加します。
映画映画ベスト10
1位:Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!(2007年 スティーブ・ベンデラック監督)
2位:千年女優(2001年 今敏監督)
3位:これは映画ではない(2011年 ジャファル・パナヒ監督)
4位:ギャラクシー・クエスト(1999年 ディーン・パリソット監督)
5位:ブリグズビー・ベア(2017年 デイブ・マッカリー監督)
6位:アルゴ(2012年 ベン・アフレック監督)
7位:人生タクシー(2015年 ジャファル・パナヒ監督)
8位:アクト・オブ・キリング(2012年 ジョシュア・オッペンハイマー監督)
9位:劇場版 NARUTO 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!(2004年 岡村天斎監督)
10位:カメラを止めるな!(2018年 上田慎一郎監督)
「カメラを止めるな!」
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2018/12/05
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (10件) を見る
「劇場版 NARUTO 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!」
劇場版NARUTO-ナルト- 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!! [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- 発売日: 2013/11/06
- メディア: Blu-ray
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
「アクト・オブ・キリング」(The Act of Killing)
アクト・オブ・キリング オリジナル全長版 2枚組(本編1枚+特典DVD) 日本語字幕付き [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2014/12/03
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (24件) を見る
「人生タクシー」(Taxi)
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2017/10/04
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (8件) を見る
「アルゴ」(Argo)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2013/09/04
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (18件) を見る
「ブリグズビー・ベア」(Brigsby Bear)
ブリグズビー・ベア ブルーレイ & DVDセット [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2018/10/03
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (4件) を見る
「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest)
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (13件) を見る
「これは映画ではない」(In film nist)
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2015/05/30
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
「千年女優」
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (18件) を見る
「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(Mr. Bean's Holiday)
- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
- 発売日: 2012/04/13
- メディア: Blu-ray
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
2017年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。
みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。
今年、ブログ更新量はいよいよ、近年稀に見る少なさでございましたが、大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっており、いい映画との出会いがたくさんありました。その中から10本を選ぶという、なかなかつらい作業でございました。
というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。
10位「勝手にふるえてろ」
- 出版社/メーカー: Sony Music Marketing inc. (JDS) = DVD =
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (2件) を見る
東京国際映画祭にて鑑賞。十代からの片思いを引きずり、20代になってもなお、その「一番好きな彼」を片思いし続けてきたヒロインが、彼女にリアルに好意を向けてくる「二番目の彼」が現れたことで起こる、ヒロインの大混乱を描くラブ・コメディ。
一人の男を片思いを続けてきたが故にリアルな恋愛からは遠ざかり、コミュニケーション不全に陥ったOL・ヨシカの、大混乱を描いている点がとにかくイマ感がある。自分の絶対的な聖域を作り、そこに踏み込んでくる人間にはたとえ好意を伝えてくる男性であろうとも、心を許していたはずの親友でさえ攻撃的になる。そんなヒロインの心の「大激震」を描いている。
「理想の恋愛」に心をこじらせてき女性が、リアルな恋愛と対峙する。その時に初めて気づく、自分の中にある「狂騒」。刺さる人間は限定されるかもわからないけど、刺さる人間には思い切り、刺さる。その刺さり方がまたエグい。心臓を貫かんばかりの深さだ。
心の奥底に踏み込まれることで起こる、ヨシカの心の「ふるえ」は、みっともなく滑稽かもしれないけれど、だけど(人によっては)誰よりも愛おしく見える人もきっと多いんじゃないでしょうか。少なくとも私はその一人です。是非一度ご覧ください。
9位「サバイバルファミリー」
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2017/09/20
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (4件) を見る
ここ数年、なんだかんだと新作が出るたびに僕は矢口史靖監督の新作をベストテンに入れてきましたが、本作もまた非常に優れた娯楽作でありながら、3.11後の日本を見据えた娯楽作になっているように感じます。
電気を喪った人間がどういう行動を取るのか。その群集心理を描きながら、同時に、かつてない危機に立ち向かう、一家族のロードムービーとしての側面もあったりする。その中で、家族に少しずつ今までの自分にはなかった「自分」が目覚め始めていく。
今まで矢口監督が培ってきた、「取材によって徹底的にリアリティを固め」ながら、それをきちんと「コメディー」として落とし込むという蓄積が、本作もまた非常にリアルで、そして滑稽でありながらも少しずつ人間として成長していく家族の物語として、非常に完成度の高い形で結実していると思います。
何より本作は、非常に普遍性の高い設定であり、「ドメスティック」に陥らない、万国共通のテーマであり、きっと多くの人に届く傑作であると思います。
8位「アシュラ」
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2017/07/21
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (5件) を見る
とにもかくにも、主人公にしてからが最初から街の腐敗にどっぷり使った悪徳刑事で、冒頭で人生が完全に破綻するような事件が起こる。刑事を辞めて市長の正式な部下になるはずが、そのプランは頓挫し、そこから人生の歯車が狂い始め、そこから様々な「悪人」と絡むことになるのだが、それでもこの映画が面白いのは、言ってみれば「破滅」が定められた男の右往左往の物語としての魅力と、出てくる「悪人」たちが、それぞれに圧倒的な個性を放っているからに他ならない。
柔らかな物腰で主人公をえげつなく追い詰めてくるクァク・ジョヨン演じる、市長を告発しようと動いている検事・キム・チャインと、彼の右腕となって動き荒事も辞さない検事、チョン・マンシク演じるト・チャンハクが主人公をえげつなく追い詰めます。
そしてファン・ジョンミン演じる主人公がつるんでいた、悪徳市長パク・ソンベは、その純粋な悪でありながらも抗いがたいカリスマ性を持っており、その魅力はまさに悪魔的。主人公の代わりに彼の手先となる、純朴な性格の弟分・ソンモもまた、市長のカリスマ性によって心を奪われ、やがて「悪人」として開眼していく。そして主人公と袂を分かっていきます。徹底的に追い詰められた主人公が、最後に取った決断とは。その決断が、さらなる地獄の釜を開くのです。
悪に落ちる快感、後戻りできないと気づいた時の悲哀と絶望、破滅していく魅惑、容赦ないバイオレンスとハイテンションなアクション、そして悪と悪がぶつかり合う興奮。その全てをがここにある。一見の価値ある傑作と思います。
7位「LUCK-KEY ラッキー」
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2017/10/04
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (1件) を見る
日本では「漫画的」な感じになりがちな「殺し屋」という職業も、ノワールが盛んな韓国ならば「映画的」になる。45歳の殺し屋が32歳の売れない俳優として、大真面目に役者道へと邁進する姿を演じるユ・ヘジンはただただ面白いだけでなく、32歳として人生をやり直し、あまつさえ新たな人生を手に入れる、この一見いかついおっさんが、実にかっこよく、そして時に可愛いの。この映画のヒットによって、ユ・ヘジンと言う脇役俳優をも「生まれ変わらせた」この映画。
まだまだ人生やり直せるんだ!という「おっさんのファンタジー」としても大変優秀で、見ていて笑いながら、最後はうっすら涙を浮かべちゃうような、そんな映画である。一人のおっさんとしてこの映画大好き。本当に好き。
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2013/05/10
- メディア: Blu-ray
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
6位「昼顔」
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2017/12/20
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (2件) を見る
いや、実を言うとドラマの方は全く見たことがなく、いきなり劇場版を見に行ったのでした。理由は簡単。西谷弘監督の新作だからである。「ガリレオ」シリーズ、「任侠ヘルパー」など、ドラマの劇場版を傑作・秀作に導いてきた監督であり、本作においてもその期待を大きく超える仕上がりとなっている。
ドラマシリーズで不倫愛を知られてしまい、職も居場所もなくして、映画冒頭で地方都市へと移り住んだヒロイン。けれどそこでかつての不倫相手と運命の再会を果たしたことから、二人は次第に燃え上がり、物語は歯止めの効かない方向へと転がりだしていく。初めはただ、好きなだけだった。たとえ不倫であろうとも、お互い純粋に好きあった二人で生きていこうと決めた。だが、二人が向かった場所は引き返せない、あまりにも深い因業が渦巻く選択であることを、ヒロインは思い知ることになる。
実を言うと、この映画の前に「午前十時の映画祭」で「突然炎のごとく」を見ていたですが、この映画と「突然炎のごとく」がシンクロするシーンがあって大変興奮した。
人の夫を奪い、自分のものにする。その道はあまりにも、あまりにも業が深い。その愛は、奪われた者の気持ちを踏みにじることで成立する愛である。純愛などと決して言えはしない。
奪うもの。奪われるもの。この映画は、その業に真っ向から向き合い、そして物語は一つの終着へと疾走していく。憧れ的に消費されがちな不倫愛。それを巡る因業の果てを描いた傑作である。
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (7件) を見る
5位「ドリーム」
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2018/02/02
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (7件) を見る
時まさに冷戦時代。宇宙進出は人類の悲願であり、アメリカはソ連としのぎを削り、お互いの国の威信を賭けた宇宙計画を進行させていた。そんな中、圧倒的な計算力を誇るキャサリンはスペース・タスク・グループへと配属された。しかし、そこでも当たり前のように差別的な扱いを受けるキャサリンだったが、次第にその計算力が高く評価されていく。
ひとかどの人物として仕事で自己実現する「夢」。人類を宇宙へ運ぶ「夢」。そして自分たちに向けられた差別をなくしていく「夢」。黒人女性がそれらを実現することが、「夢物語」だった時代において、一つ一つ困難をクリアしていくことによって、その「夢」が実現していく流れをNASAにもたらした3人の女性。見終わった時に思った。「彼女たちこそが『ワンダーウーマン」である」と。
大きな目標に向かって、知性を結集していたNASAにおいて、「人種差別」と言うのは目標達成を阻む「エラー」でしかない。目標を持った知的な人間は、そのことにいち早く気づき、それを取り除く。3人の黒人女性のヒーローたちの物語というだけではなく、本当に知性のある人間と言うのは差別しないのだと描いてみせたこの物語は、まさに差別被差別者双方にとっても、学ぶことの多い傑作でありましょう。
ワンダーウーマン ブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2017/12/02
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (13件) を見る
4位「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2017/07/21
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (3件) を見る
アメリカ本国でもあまり知られてないこの人物は、南北戦争のさなか、南軍から脱走し、逃げ出した奴隷たちや脱走兵たちとともに、銃を取り戦いながら北軍、南軍どちらにも属さない、黒人と白人がともに暮らす独立区を作ったのである。黒人女性と結婚した彼は、戦争が終わり、自由州がアメリカに戻った後も、色濃く残る差別と戦い続けた。
そしてその戦いは、彼の子孫にまで及ぶ。アメリカ全土で黒人と白人が自由に結婚できる時代になるまでには、彼一世代では終わらなかったのだ。それは映画「ラビング」で描かれた、ラビング夫妻の法廷闘争を待たなければならない。
差別が根強く続くアメリカで、世代を超えた戦い続けた描く脚本の構成がまた見事である。今、アメリカを覆い始めている空気は、まるでニュートン・ナイトが戦った時代へと戻ろうとするかのようだ。戦いはまだまだ終わらないのである。
まさしく、今知られるべき人物であると思う。
- 出版社/メーカー: ギャガ
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (6件) を見る
3位「バーフバリ/伝説誕生」「王の凱旋」
- 出版社/メーカー: 株式会社ツイン
- 発売日: 2017/07/05
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (7件) を見る
インドで歴代興行記録を塗り替えた、インドの古代都市・マヒシュマティを舞台にした、貴種流離譚である。
滝の下で高貴な婦人の手によって救われた赤子シヴドゥは、実はある王国の英雄の息子マヘンドラ・バーフバリであり、数奇な出来事を経て再び王国に帰ってくる。彼はそこで、父である偉大なる英雄王アマレンドラ・バーフバリの活躍と悲しき運命を知ることになる。
その圧倒的イマジネーションは凡人である我々の想像をはるかに超え、圧倒的な演出に打ちのめされる。第1作こそちょっと突飛な話に見えながら、第2作を見ることで物語が全て繋がり、偉大なる王の数奇な運命と悲劇、王国に起こった物語を主人公が背負い、王としてマヒシュマティ王国へと帰ってくる。その熱量はまさに「王の凱旋」と言うにふさわしい圧倒的力強さで観客を飲み込んでいく。
この映画の声出し可能な発声可能上映、名付けて「絶叫上映」に何回か行かせてもらっているが、本当に最後は一人の群衆として、「王を称える」ことしかできない。大きな声で「バーフバリ!!」と。
ツッコミどころももちろんあるのだけれど、それを映画大国・インドの粋を詰め込んだかのような、その有無を言わせぬ力強さでねじ伏せて、全てに圧倒される前後編。是非スクリーンで王の凱旋を称えて欲しいと思います。
2位「トンネル/闇に鎖された男」
- 出版社/メーカー: アルバトロス
- 発売日: 2017/09/02
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
韓国・ソウル。突然のトンネル崩落に巻き込まれた自動車セールスマン。彼に残されたのはケーキ1個と飲料水2本、そして電波のかすかに届くスマートフォン。彼の救出作業は難航し、彼には逆境に次ぐ逆境が待っていた。
この映画の暴き出す経済優先社会の冷酷さ、大衆メディアは男に望むもの。主人公が受ける圧倒的な窮地は誰が生み出し、誰が彼を殺そうとし、誰が彼を救うのか。見終わってその流れにゾッとし、そして主人公が最後に叩きつける一言は魂の言葉として我々に突き刺さるのだ。
この映画において問われるのは、この映画のどこに「自分」がいるのかと考える想像力である。僕らは主人公を見捨てるのだろうか。そして、自分が主人公であったならばどうしただろうか。現場で救う側の焦燥と、悲劇を「消費」するメディアと、綺麗事を言いながら時に生命を簡単に切り捨てる政府と、時に冷めやすい大衆と。
優れた映画というのは様々な示唆をくれるものである。この映画を見た後、考えて欲しい。見ていた映画のどこかにきっとあなたが「いる」はずなのである。本当に孤独なサバイバルの中で、本当に信じられるものはなんなのか。それをつぶさに描き切った大傑作だと思います。必見です。
1位「新感染/ファイナル・エクスプレス」
- 出版社/メーカー: 株式会社ツイン
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (5件) を見る
今年の一番大きい収穫は、ヨン・サンホ監督というでっかい才能を知ったことである。
もちろん本作「新感染」も衝撃的だったのだけれど、彼の本来のフィールドであるアニメ映画も立て続けに公開されて、「新感染」の前日譚「ソウル・ステーション:パンデミック」や、信仰の意味を問う「我は神なり」などもまた、刺激的で面白くて、実に示唆に富む傑作であり、まさに私に強いインパクトを残した。
監督がアニメ映画で培ってきた卓越した人間描写は、初の実写映画である「新感染」においても変わらない。普段なら穏やかな人も、追い詰められれば一番大事なのは「自分」になる。本当に追い詰められた時、僕らは「人間らしい」選択をできるのだろうか。「ゾンビ」という題材でありながら、一人の人間としてどうするのか。観客の喉元に突きつけてくる映画なのだ。
この映画は一番恐ろしいのは、ゾンビではない。それによって右往左往する人間なのだ。それを言葉ではなく、映像で、音で、物語で観客にナイフを突きつけながら問うてくる。あなたならば、どうするのだ?と。
娘とろくなコミュニケーションも取れず、父親としては落第点だった主人公は、利発な娘さんの存在によって、「たまたま」、「人間らしい選択」を選び取れた。偶然にも、奇跡的にも。だからこそ、「選び取れないかもしれない」僕らは彼の選択に涙を流す。それは「せめてそうありたい」と願う涙なのだろう。そう僕は思うのです。
「新感染」、本当に恐るべき映画だと改めて思います。
- 出版社/メーカー: ブロードウェイ
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 出版社/メーカー: ブロードウェイ
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (2件) を見る