虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「鍵のかかった部屋」面白い。

toshi202012-05-07

原作:貴志祐介
脚本:相沢友子


硝子のハンマー (角川文庫)

硝子のハンマー (角川文庫)

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

http://www.fujitv.co.jp/kagi/index.html


 今、毎週月曜日夜9時から、フジテレビ系列で放映中のテレビドラマ「鍵のかかった部屋」が面白いです。


 俗に言う「月9枠」では「ガリレオ」以来の1話完結ミステリードラマなのですが、すごく美しい本格密室ミステリとしてのテンプレートにちょっと感動します。個人的に「いいな」と思う理由をいくつか挙げていきたいと思います。



・メインキャストがたった3人
 「解錠と密室にしか興味がない朴念仁。解錠オタクの密室大好きセキュリティー会社社員」榎本径(大野智)、「ドジでマヌケだけど、一本気で情にもろいために事件解明へと暴走する新人女性弁護士」青砥純子(戸田恵梨香)、「基本的に拝金主義者で効率主義者、この世で一番嫌いな小説のジャンルは推理小説と言い切る多忙な法務系エリート弁護士」芹沢豪(佐藤浩市)。
・メインキャストの中に、警察関係者、及び探偵という「事件」を捜査する職業のニンゲンがいない
・事件の内容は「現場が密室の状態にあった他殺の疑いがある事件」に限られる。さらに言えば、探偵役・榎本の目的は「密室による他殺の証明」であって、犯人が誰であるか、また動機の解明などのフーダニットの要素は二の次とされる。
・基本的に探偵役の榎本は「真犯人」の行動や動機は密室解明の「重要アイテム」ではあっても、真犯人や被害者、その関係者の心情には必要以上の興味は抱かず、彼らの心に寄り添うことはなく突き放している。それでもきちんと関係者まわりのドラマを固めることで、「密室による他殺」の証明そのものが、結果としてドラマとしてのカタルシスもきちんとあるようにしている。


 そしてきちんとしてるな、と思うのは密室へと至る道筋をきちんとつけた上で、その道筋を類推するいくつかの「伏線(ヒント)」は視聴者にも、物語中できちんと提示されていく点にある。それゆえに、もう一度見返すと、「あ、そういうことか」と納得できるようになっている。
 さらにメインの3人の、事件に対する態度や人間関係も少しずつ変化をつけていて、そこから生まれる信頼関係の微妙な変化をきちんと描いているシーンも多くて、第1話では鍵や密室以外では、感情のないロボットのような榎本が薄皮をはぐように少しずつ人間味がつけられていく点も好きな点です。


 演出も、最近流行りの過剰な味付けはないけれどユーモアがあり、推理する場面でつかわれる「密室ジオラマ」もいい味。キャラ付けも面白い。現在第4話まで放映していて、今、続きが楽しみなテレビドラマです。オススメ。