虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「グラインドハウス」

toshi202007-08-29

原題:Grindhouse


 見てきました、二本立て。


 (それぞれ作品のきちんとした?感想は、まだ単品ごとの前売り券が残ってるんで、単品公開版鑑賞時に改めて。)



 壮烈なワインスタイン一門会in六本木。*1



 まずくすぐりの小咄(ニセ予告編)があって。
 で最初に出てくるのがロドリゲスのゾンビ噺ですわね。てけてん。お題「恐怖の惑星」。



 監督として脂ののりきった世代、そしてなによりもやりたいことを贅沢にぶち込んで、自分の人脈とテクニックの粋を集めて語りきる。という。残虐な表現を使いながらもそこに、ファミリーというメキシコ人監督らしい「人情」も絡めてさらっと描ききる。いちいち表現が豊かで、渾身の演技演出が続く力作で。しかも、「後にはなにも残らない」噺を全力で語りきる、まさに見る贅沢、とでもいいましょうか。
 キャラクターの一人一人まで手を抜かず、オールスターキャストに見せ場をふんだんに盛り込み、フェティッシュなギミックが盛りだくさんで飽きさせない。俺は映画のテクニック的なことには興味がないし、他の映画サイトでさんざん語られてるだろうから割愛するけど、かなり「フェイク70年代」感を出すお遊びてんこ盛り。もうこの時点でかなりおなかいっぱいで、これ以上楽しめるのか不安になるほどなんだけど。


 で、ロブ・ゾンビなどの小咄で客を温めつつ、そのまま大トリ、タランティーノ師匠が登場。お題「地獄行きの屋根」。



 ロドリゲス師匠はある意味全編力漲る力作だったが、タランティーノ師匠は「キル・ビル」という大作のあとということもあり、適度に力を抜きながらスルスルと噺を始める。女の子との他愛のない会話、そこに異分子の男がさりげなく入ってくる。しかしその男は実は・・・というスラッシャー映画の趣の噺・・・なのだが。この映画は、そんなジャンルの枷を軽く超えてくる。
 ゆったりとした導入で彼女たちの日常に、やがて理不尽な悪意がド派手に牙を剥く。このゆるいスタートで、低速を身体に慣らさせておいてから、突然のニトロダッシュとも言うべき急加速が、物語に縦Gを起こす。この大胆な加速から来る強烈プレッシャーこそが、我々を覚醒させる「序」、そして同じようなダベリを別のグルーピーたちにさせながら、さらなる悪意にボルテージが上がっていく「破」、そしてその先にある「急」で、この映画についてこられたものだけが味わえる絶頂が待っている。


 「END」の文字とともに劇場内が一斉に拍手にわく。そんな光景、久々に見た。俺ももちろん大拍手。すげえわこれ。名人芸の域だ。恐るべき超傑作。


 さすが「キル・ビル」という冒険の中で、己のアクション演出とストーリーテリングの牙を研ぎ続けてきた男は、その演出もものがたり方も大胆だ。ロドリゲスは相手が悪かったとしか言えない。そのくらい、「デス・プルーフ」は色んな意味でやばすぎる。ロドリゲスの作品は優秀なオタクが作った完成度の高いオタク映画だが、タランティーノのそれは、オタク映画というジャンルでありながら、そこに留まらない拡がりと、大胆さが同居してる。そこに映画の宇宙を見た。参った。感動。


 何とも言えぬお祭り感、そして見終わったあとに残った、奇妙なグルーヴ感と満足感は、実に得難い体験だと思いました。くそ暑い中見に行って、本当に良かった!あー、楽しかった!(★★★★★)*2

*1:いや、三番館パロディと書くべきなのは分かってますけど、さすがその表現ばっかだと面白くない気がしたんで。

*2:2本合わせての評価。単品評価は改めて。