虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「風雲児たち 幕末編」9巻

toshi202006-04-27



 毎度いつの間にか出ている「風雲児たち」最新刊。


 この巻では前の巻から続く福沢諭吉の前半生話と、日本開国に貢献したペリーとプチャーチンの後日談、ラブコメ編新展開、勝海舟が歴史の表舞台の第一歩を踏むと同時に、阿部正広が第一線から退こうとしたら、江戸に「安政の大地震」が襲う、という目まぐるしい内容。

 まずめぼしいところから雑感。


福沢諭吉の前半生・・・はあんまし面白くない。けれど、彼と前野良沢との意外な縁が明らかになったりするところは、「ほお」と思った。福沢諭吉の入塾と時を同じくして、手塚良仙(@「陽だまりの樹」主人公。手塚治虫の祖父ね)入塾、というトピックを押さえるあたりが、みなもと先生らしいところ。適塾を「蘭学界のトキワ荘」と落とすあたり、なかなかウマい、と思った。


・開国に貢献した2人の英雄、ペリーとプチャーチン、帰国後。プチャーチンは、自らが挙げた成果以上の評価を欧米で受けたという意外な事実と、そこに「風雲児たち」読者にはおなじみ、シーボルトの文章が絡んでいる、という一幕。ペリーとシーボルトには少なからぬ因縁があり、それが絡んでいるのだが、シーボルト親子の物語をメインのひとつに据えるこの物語としてはなかなか粋な終幕と言える。これにて、このマンガにおいてペリー(ヅラ)は退場。


 あと当時のロシアの内情を語る上で欠かせないクリミア戦争のくだりで、ヨーロッパ医療改革の女傑・ナイチンゲールについて触れているのは、みなもと先生らしい視点。彼女もまたヨーロッパの風雲児だったのだろう。


・ラブコメ編新展開。宇和島藩の一大事業・蒸気軍艦づくり計画が一区切りつき、村田蔵六蘭学を究めるため江戸へ。ここでおイネたん(シーボルトの娘。幕末編ヒロイン。)とお別れ。なれどイネたんは再会を胸に期して礼砲を放つ。


・江戸きっての傑物・勝海舟(当時まだ一貧乏御家人)、ついに歴史の表舞台へ。阿部正広に「勝を見出したワシは偉い」とギャグを言わせているが、この冗談が後に真になるあたりが歴史の不思議なところである。彼を見出したところで、幕末の改革派・阿部正広、退場と相成るかと思いきや、江戸に悲劇。安政の大地震が江戸を襲う。この震災で水戸藩きってのカリスマ・藤田東湖が母をかばい、圧死。水戸藩にとっての大きな損失となる。死者五万五千。火災による死者は含んでいない。