虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ベルベット・レイン」

toshi202005-10-10

原題:江湖
監督:ウォン・ジンポー


 香港黒社会もの。なんである。で、主演が、アンディ・ラウショーン・ユーエディソン・チャンなんである。どうしても「インファナル・アフェア」を想起してしまうわけだ。で、どんな映画なんであろう?と思って見たわけなんだが、チャップマン・トウが出てくるわ、エリック・ツアンまで出てきて、えー?なにこの「無間」同窓会?とか思ってたんだが…。えー、さて。


 アンディが演じるのは香港を牛耳る大ボス・ホン。その暗殺計画の噂が持ち上がり、幹部たちは戦々恐々とする。ボスが死ねば、弟分のレフティジャッキー・チュン)が跡を継ぐことになる。そうなれば、幹部たちは根こそぎ排除されるだろうからだ。そんな中、ホンが妻との間に一児をもうけたことで、レフティはホンに、黒社会から足を洗うように進言する。
 一方、ボスであるトウ(チャップマン・トウ)によるくじ引きで、ターボ(エディソン・チャン)に誘われてやってきたイック(ショーン・ユー)は暗殺のための「鉄砲玉」に選ばれる。銃の代わりにナイフを与えられ、標的を教えられた彼らは、街へと繰り出していく。


 こうして2組の男たち、運命の一夜が始まる。


 「インファナル・アフェア」とかぶりまくってるキャスティングなんだが、この映画の面白いところは、ここまで無間道キャストを導入しながら、それを逆手に取った映画であるということだ。そういう意味では、「インファナル・アフェア」ありき、の映画でもある。
 監督のウォン・ジンポーの演出は、良くも悪くも「女々しい」。総じて劇画的に描かれやすいこのジャンルを、ウォン・カーウァイ的な繊細さなタッチで、ちんぴらたちの思いと焦燥を描いていく。まあ、それはいいんだが、黒社会ものとしては、いささか鈍重に感じるし、暴力シーンになると暴力そのものの直接的描写を避け恣意的にみせるという演出も、どうにも歯切れが悪く退屈な部分でもある。しかし、その退屈な部分を飲み込んで見ていると、物語は意外な「構造」を見せ始める。


 ウォン・ジンポー監督の個性は。リアルとファンタジーのバランスがいびつだ。そのバランスは、どこか「NANA」みたいっつーか、女性がやくざものの「二次創作」コミックを書いたような気持ち悪さがある。だが、それでもこの映画が描こうとしたものは、なるほど、そういう個性がなければ成立しなかったろう物語でもあると思う。骨太とはいいがたいが、不思議な味わいの映画になっていると思った。(★★★)


公式ページ:http://www.velvet-rain.com/


追記:ラム・シューが拳銃を奪われる警官役で登場。思わず爆笑。