虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「タッチ」

toshi202005-09-14



公式ページ



 見てきました。いやー、良かったなー。



 空飛ぶ都市計画*1



 …というボケは置いといて、「タッチ」本編ですが。
 えーとですね。作り手が何をしたかったのかさっぱりわからん。だって、今更、この現代において「タッチ」を実写にするんだよ?なんでくそまじめに原作のダイジェストにしてんの?いや、再現するのはいいけど、じゃあ何で舞台が現代なんだ?


 「南を甲子園に連れてって」とか言う女*2と、彼女を巡る2人の男の話だよ?女子にキスされたことに動揺しまくって、「気まぐれにキスなんてするんじゃねー」「お前にとってキスってそんなもんなのかよ」なんて、原作の連載当時ならともかく、今どきそんなこと言う男子高校生いるかよ?
 大体、子供3人のための勉強小屋があるなんて、バブル時代だからこそ有り得た話だろうが。毎日が発情期みたいな年頃の高校生が、しかもそのうちのたった一人の女子が長澤まさみだってのに、2人きりになれるシチュエーションをわざわざこさえる親がどこにいると思ってるわけ?娘が可愛くねーのか、宅麻伸(朝倉父)はよぉおおお!しかも押し倒すシチュエーションまでご丁寧に用意して、コトに及ばない男子…って本気か?現代の高校生がヤらねーわけないだろが!
 その辺の有り得なさを、繊細な演出でリアリティを確保してきた原作者のあだち充、アニメ版監督の杉井ギサブローの努力や、時事風俗・若者の嗜好の変化による20年という時代の隔絶を無視して、単純に筋だけをそのまんま追ってる山室有紀子とかいう脚本家の、その脚色の意図がまったく読めない。実写で「タッチ」をやるんなら、ノスタルジーたっぷりの、繊細な80年代ファンタジーにする以外にないはずなんだが。


 そんな支離滅裂な脚本に対してダメ出しすることなく、職業監督に徹してしまった犬童一心監督の責任も重い。こういう駄目脚本にきちんとリアリティーを持たせるのが、あんたの仕事だろうが。「メゾン・ド・ヒミコ」や「いぬのえいが」などの掛け持ちで忙しかったのか知らないが、まったく「タッチ」を現代劇に落とし込むビジョンがないまま、撮影に入ったとしか思えない。監督本人の得意とする「青春と死」についての映画だっただけに、このやる気のなさは残念至極。


 ノスタルジーに訴えかけるような作りを拒否しているくせに、中途半端にアニメ版の主題歌を劇中に流す意図も全然わからんし。演出と物語の意図が最後までちぐはぐなまま、突き進んでしまったような半端な失敗作。(★★)

*1:スタジオジブリが手がけたPV作品。「タッチ」の前に上映。百瀬義行監督作品。(★★★)

*2:大体、今時甲子園に憧れる女子っているかー?