虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

今週のプラネテス-ΠΛΑΝΗΤΕΣ- PHASE.24「愛」

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●あらすじ(公式ページより)
宇宙防衛戦線のテロはフォン・ブラウン号にも及んでいた。テロに巻き込まれたタナベはフォン・ブラウン号の船内で傷ついたクレアを見つける。救命艇で脱出した2人は月に着陸するが、降りた所は何もない月の砂漠だった。タナベは傷ついたクレアを背負い、有人施設を目指して歩き始める。ところが、クレアは自分を置いていくように言うのだった。


●メモ

前回から続くテロ。


フォン・ブラウン号の軌道復帰限界点まであと30分。それを過ぎると墜落は決定的。巡視船は間に合わない。


フォン・ブラウンが墜落すれば、静の海市の12万人は一瞬で消滅する。宇宙開発は大幅な後退を迫られることになるだろう。さあ、共に立ち会おう。歴史の修正点に!


命。そして、「愛」を試される愛の話。



「くだらん報告をするな。ミディに生ませた子供だぞ。所詮は予備だ。」
「こんなところで死んでたまるか。まだあいつをしゃぶりつくしていない!」


手の掛かる妾腹の子を見下す父親と、4話での教訓を生かし成り上がると決めた息子の暗闘。こういう醜い応酬大好き<歪みすぎ。



「私さえ生き残れば、フォン・ブラウンはまた作れるよ。まあ、大事な息子だから、ギリまでは待つつもりだけど。」

大事な息子(=フォン・ブラウン号)と周りの人間を置いて逃げ出す算段を始めるロックスミス。アニメ版のロックスミス、ドライ過ぎ。
ちなみに彼の言うギリとは軌道復帰限界点のこと。


★フィー・カーマイケル、ライターで拘束を焼き切り、DS-12号を復帰させフォン・ブラウンを押し上げようとする
★カオ・チェンシン、フォン・ブラウン号のテロを察知し、乗船している貨物船でフォン・ブラウンへと向かう。


「みんなが行くとか行かないとか、関係ないでしょう!…そうとも。やっぱり放っておけない。あそこにはハチがいるんだ!」


性格の良さを偽善と言われ、人当たりの良さを醜悪と罵られ、みんなにお坊ちゃんと呼ばれ、バカな男と見限られて、さりとて、嫌な人間にもなりきれない。底抜けのお人好し、チェンシン復活。今彼は、最高に輝いている。多分。


★田名部愛、足を負傷して倒れているクレア・ロンドを発見。彼女を救うため救命カプセルを探す。


★宇宙防衛戦線、テロから手を引く条件として、クリフォード議長に「議長案廃案」を要求。


議長案を要約すると「金を出したやつが資源を多くもらえる」ってこと。それを握りつぶせ、というのがテロリスト側の要求。


「静の海市の人口はたったの12万人だ。」「たったァ!?」「ホシノ。君は昨年の餓死した人数を知っているか。」「何を!」「500万人だ!ワクチンがなく病死していく人間は1000万人!マナンガの紛争でも85万人が死んだ!命にどんな違いがある!あそこにあるのは膨大なる犠牲の上に成り立った命だ!我々の命はどうでも良くて、自分たちの命は惜しむのか!」


対峙するハキムは、ハチマキに命の重さを問いかけ、テロの正当性を主張する。だが、自分もいつの間にか命を軽く語っていることに気付いていない。そんな人間の言葉に正義はない。ハキムの哀れさはそこにある。



「あきらめるなバカ!私はやりたいこといっぱいあるのよ!欲しい服も!行きたい場所も!食べたいものもいっぱい!」


…などという欲望を糧に銃を取る女・リュシー・アスカム(愛称:クリームシュー)。彼女が無事ってことは、あそこにいたテロリスト全員……。相変わらず、ただもんじゃねえ。


★救命カプセルのあるブロックの障壁が破壊され気圧が急激に低下。田名部愛、クレア・ロンドとともにフォン・ブラウン号より救命カプセルで脱出。


「もう墜落は防げないでしょう。だけど、せめて直撃だけは避けたい!少しだけでも!」「少しの力でも軌道を逸らせば人のないところに!」


せめて多くの命が失われる悲劇は避けたい。だが…軌道復帰限界点は間近。


★非常エンジン停止装置が突如解除され、フォン・ブラウン号のエンジン復帰。軌道復帰限界点より離脱、上昇。



「連合の最高評議会は連合への分担金に応じて月資源を配分するという議長案を廃案にし、人口比を基本とした資源配分を採用すると発表しました。」
「君のスポンサーにはこちらで確認を取った。例の島の領有権は譲るとね。」「タフな方だ。12万人の命を盾に取引とは。」


推測だけど、12万人を人質にされた政府はテロリストの要求を飲んで市民の安全を確保した上で、今度は政府がテロリストのスポンサーを脅して権益を獲得し、その代わり宇宙防衛戦線への支援を黙認する、という…。つまり、三つどもえの妥協案というわけか。…ただでは起きないと感心するより、どっかが麻痺してるとしか思えないが…。駆け引きとはそういうものか。

ちなみに、人口比率による配分で得をする国は…どこでしょうね。



「ああ、そうだ。その目だ。蝿を潰すのと同じ感覚で自らの邪魔する者を排除出来る…。その引き金を引けば君は完全に生まれ変わる。先へ進むことしか知らないブレーキの壊れた生き物に。」「俺の相手は大宇宙なんだ。そのくらいでちょうどいい。」


銃を取られ、追いつめられたハキムだが、この期に及んでなお、ハチマキを幻惑しようと駆け引きする。だが、ハチマキの意識はとっくに「向こう側」に行っていた。





「ああ、撃つさ。撃って…俺は!」






★星野八郎太、引き金をそっと引く。







★田名部愛、救命カプセルで月に不時着。周りは砂漠。カプセルの通信機は壊れ、軌道保安庁にSOSを自動発信を出すも応答がない。


フォン・ブラウンは軌道保安庁の船が接舷。軌道保安庁、ほどなくテロリストに襲われたフォン・ブラウン号を制圧。


★田名部愛、クレア・ロンドを背負って、ケプラークレートにある宇宙港を目指して歩き始める。


「私は…私は…テロリストよ。」
「フィーさんもユーリさんも…、ハチもあそこにいたわ。何人死んだかしらね。月もテクノーラも…ざまーみろ!…みんな私を置き去りにして…!さ、あなたも私を置いて行きなさい。私はあなたの大事な人たちを殺したんだから。私は…生きる価値のない人間なんだから。」


捨て鉢になったクレアは、テロの全容を飲み込めていないタナベに自らの行いを告白し、同時に激しく挑発する。彼女の絶望、その全てに決着をつけるために。


「全ての命は尊いんです。愛すべきものなんです。それなのに価値があるとかないとか…そんなの全然わかりませんよ!


クレアがはき出す、まごうことなき真実を、タナベは彼女が信じる「愛」の為に耳をふさぎ、自らに言い聞かせるように、自らの信じている美しい「愛のかたち」を叫ぶ。


だが、叫べば叫ぶほど、かつて見てきた「現実」たちが彼女の「愛」を否定していく。


「間違っています!先輩は絶対に間違っています!愛があれば人は…」


愛されていると信じたかった。だから、愛という言葉に固執した。そして気付く。

自分には何もないことに。


「先輩が愛しているのは………あたしじゃなかったんだぁ…。」





★田名部愛の足が止まり、倒れる。




★警告音が鳴る。田名部愛の宇宙服の空気残量がなくなりつつある。




★赤く点滅する警告ランプ。急速に漏れていく空気。




★迫る死という現実。わき上がるのを抑えきれない恐怖。




★助けを求め田名部愛、絶叫。




その時、クレアのさっきの言葉がタナベに囁く。




「私はここで死ぬんだから。」




「一人で行けって言ってるのよ!」




「諦めたんじゃないわ。覚悟していた。」






「私はあなたの大事な人を殺したんだから。……私は…生きる価値のない人間なんだから。」







「生きる…価値…。」







★早まる鼓動。薄れていく空気。




★田名部愛、呆然とクレア・ロンドに近づき、酸素ボンベに手を伸ばす。




★点滅をやめ、煌々と光る警告ランプ。空気残量0。アラームが鳴る。





●雑感


テロという「生み出された状況」によって、試される「覚悟」。


生き死にのかかった状況において、試される「愛」。




絶対的な孤独という闇と対峙する、タナベとハチマキ。絶望に引き寄せられる二人。