虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

今週のプラネテス-ΠΛΑΝΗΤΕΣ- PHASE.22「暴露」

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●あらすじ(公式ページより)
 デブリ課は月支部に異動になった。同じく月で、ハチマキはフォン・ブラウン号での事件の取り調べを受ける。クレアも取り調べを受けるのを知り驚くハチマキ。市街で偶然ラビィ達に会ったハチマキは、ギガルトが月の病院にいるのを知り見舞いに行くのだが…。その頃、月ステーションでは地球外で初めての連合評議会が開かれようとしていた。


●メモ

 暴露=宇宙へ放り出されること。

「どうして浮かばなかったんだろう。あいつの…あだ名。」

 内面(というかキャラクター)をするどく読みとるギガルト先生のあだ名術において、あだ名を与えられなかった「無名」の男・ハキム。それこそがハキムという男の中に潜む「虚無」。


「今のままでは君に人の命は預けられない。貨物船で勉強しなおせ。」

 チェンシンの精神の傷は未だ治らず、捨て鉢状態継続中。客船クルーとして長い間築き上げた信頼すら失ってしまう。


「知らなかったでしょ。私、あなたのこと大嫌いだったの。…自分のこと、思いやりがある人間だと思っている。醜悪よね。」

 愚痴るチェンシンに対して、毒を吐きまくるクレア。前回のタナベに対する啖呵といい、勘違い人間にはほとんど容赦がなくなってる。それだけ彼女の絶望はチェンシンのそれよりもずっとずっと深い。


「私を宇宙防衛戦線のメンバーだと思っているのよ。」
「私がハキム・アシュミードの女だから。」

 クレア、衝撃発言連発の今週。


 だが、クレアがハチマキの前で言う、この台詞。これが真実なのかどうか。…結構考えているのだが、どうしても分からない。結局ハキムと彼女の間がどの程度進展したものなのか、明確な描写がなされていないので、判断はしずらい。彼女が一方的に好意を抱いたのか、あるいは実際肉体関係になってるのか。
 この場合、タナベと付き合いだしたハチマキに対する当てつけ、のようにも思えるのだが、捜査員が肯定も否定もせずに流す、その態度が絶妙で、判断材料にならない。


 ただ、確実なのはハキムとクレアが逢瀬を重ねたことと、彼らの間に強いつながりが生まれていることで、それはマイノリティという「同志」としてか、「男女の仲」としてか、その両方か…。



「結局一人なんだ、人間は。ひしめきあうように見える夜空の星だって、実際には遠く離れているものさ。星々の間には、暗くて寒くて、残酷な宇宙が広がっている。」

 チェンシン。ハキム。クレア。彼らに対して、ハチマキの心に浮かぶのは「裏切り」という言葉。すがるものもないという孤独に、ハチマキはさらされている。


「遺品を売っていたのかっ…」
「いいよ。そんなもんだろ…人間なんて。」

 わがままの代償によって喪われた者と、「なにか」を失った者の存在をハチマキは知る。


・壊れる道具。地球を見上げるノノ。託されたカメラ。

「お前がこれを見ているということは俺は、もう死んでるな。…ガンだよ。」

・外される名札。がらんとしたベッド。

「そして気付くのさ。人は一人で死んでいくことに。ギガルトのように


 宇宙に裏切られた男の、あまりに孤独な末路。家族も親族もなく弟子には裏切られ、死に際を看取る者もいない。遺品すら、病院で出会った少女などに託さざるを得ない。宇宙について教えてくれた師匠のそんな死に様。


 さらにタナベがギガルトがガンであることを秘密にしていた。不信と絶望に苛まれるハチマキにささやきながら挑発する「自分」。思わずタナベの存在を忘れ、激高する。


「全部おれのもんだ。

 孤独も
 不安も
 後悔も。

 もったいなくってな…タナベになんかやれるかよ!!


●雑感

 わがままになるのが怖い奴に宇宙は拓けない。しかし、ハチマキはその怖さを今になって味わっている。
 宇宙へのおびえと、もう一人の自分のささやき。タナベに対する不信、ギガルトの死、忍者達の死。


 宇宙を目指す代償は暗く、重い。その絶望を踏み越ようとするハチマキ。その目にタナベは映らない。