- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/08/05
- メディア: 文庫
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有頂天家族 (The Eccentric Family) 第一巻 (vol.1) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2013/09/25
- メディア: Blu-ray
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平安遷都この方続く、人間と狸と天狗の三つ巴。
それがこの街の大きな車輪をぐるぐる廻している。
廻る車輪を眺めているのが、どんなことより面白い。
私はいわゆる狸であるが、ただの一介の狸であることを潔しとせず、天狗に遠く憧れて、人間をまねるのも大好きだ。
したがって我が日常は目まぐるしく、退屈しているひまがない。
今年の夏、ひっそりと始まり、ひっそりと終わったアニメに「有頂天家族」がある。「四畳半神話体系」が湯浅政明監督の手により、傑作アニメーションとなったこともある、人気作家・森見登美彦の原作であるが、狸の一族と、力を失った天狗と、かつてそれにさらわれて、挙げ句力を乗っ取ったニンゲンの女性、というなんとも珍妙な登場人物の取り合わせの作品である。
僕はこのアニメが大好きで楽しんで見ていたのであるが、なんの話題にもならずに終わってしまった。それでも僕はこのアニメはなかなかの秀作であったと思っていて、つい見返したくなる強度を持った作品だと思う。
僕は「あまちゃん」も「半沢直樹」も第一話から楽しんでしまうような幸運に恵まれて、頭からしっぽまで堪能したのであるが、逆にこういう「みんなが見つけ損ねたもの」を見つけて密かに楽しんでいる、というのもまたいいものである、と思う。
生きていれば面白い、と思うのは映画にしろ、ドラマにしろ、ゲームにしろ、今年はちょっといろんな「フィクション」が本当に楽しい日々で身が持たない、というのが正直なところである。身体がついて行かない。
あらゆる「今ある」フィクションを飲み込んで楽しみ尽くしてみたい。そう思ってた時期もあって今もその気持ちだけはあるが、しかし、常に現実に飲み込まれてもいく。わが無力を嘆きながら、それでも目の前にあるフィクションに飛びついてはおもしろがる日々でもある。
14年。見てきた。ぐるぐる廻るネットの片隅。今年も私は番外地。
http://members2.jcom.home.ne.jp/t20/
このブログは「江戸川番外地」の一コンテンツである、ということになっている。
ホームページを始めたのが1999年の事である。私はあの頃から遠く離れ、それでもなんか同じようなことをやっている。私の人生自体がくるくる廻る車輪のようで、なにもないようで色々ありもする。
私はなにかの中心になるのが苦手だ。ぶきっちょでどうしようもなく、要領が悪い。14年も私は、この番外地で遠くから変わっていく人々を眺め、移りゆくフィクションを見ている。
このホームページ、始めたころは「日記」めいたものも書いていたのだが、そのうちにやめてしまった。いま、私は「主人公」として自分を語ることすらしていない。私などというものを語るくらいならば、もっと面白いものはこの世にいくらでもある。
私はいわゆる傍観者である。このホームページにおいてもそうである。
この世には面白いことがたくさんある。それを味わい尽くすことなく死ぬ。こんな恐ろしいことがあるか。そんなことを未だ考える。
私はつまらないニンゲンだが、それでも私の日々は退屈することとは無縁である。それだけは間違いが無い。
「私」などという存在の卑小さをもってして、この世には多くの宝がたくさん埋もれていて、それを探し出して味わいたいと願う。
年々減っていく体力、摩耗する感性、鈍っていく思考。刃こぼれする記憶力。
自分の無力を痛感する日々。それでも味わっておきたいものはいくらでもある。それらが消え去らない限り。
我が日常は目まぐるしく、退屈しているひまがない。
臥薪嘗胆。今年も来年も、どうかそんな日々が続きますように。変わらぬご愛顧をよろしくお願いします。
「江戸川番外地」管理人 窓の外 拝