虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」

toshi202005-12-09

原題:Harry Potter and the Goblet of Fire
監督:マイク・ニューウェル


 最高です。


 俺の理想のハリー・ポッターがここにある。他の人には知らないが。
 いや、感慨深い。第一作を見たときはなんと甘ったるい「お菓子箱」のような映画か、と思っていたが、しっかり「食事」になってきたじゃん。いや満腹。「ロード・オブ・ザ・リング」のような満漢全席にはほど遠い。けれどそれでいい。


 ハリー・ポッターは「理想の映画」である必要はない。ハリー・ポッターという魅力的な素材をいかにして、映画というフィールドで照射するかが肝なのだ。
 特に素晴らしいのは、今回、マイク・ニューウェル監督は本作を「イベント映画」と割り切っていることだ。冒頭でメインストーリーの伏線を最低限提示しながら、あとはイベントの連打連打。クイディッチのワールドカップ、三大魔法学校対抗試合開催決定、度肝を抜く登場の仕方で現れる他校生徒、ハリーの年齢詐称疑惑、それによるロンとの亀裂、そしてダンスパーティでの青臭い色恋のはなし。そして、運命の対抗試合が始まる。


対決!友情!初恋!


 ああ、素晴らしきかな、この何も考えずに青春なイベントの連打連打。もお、楽しくて仕方がない。物語をないがしろにしているのではなく、どのように映画として楽しませるか。重要なのはそこと定めて、きっちり決めてみせる。清々しい。実に清々しい映画。要はポイントさえ押さえれば、あとは説明すら不要という、割り切りは更に強まっていて、説明不足な部分は原作読みやがれ、というものすごい割り切りで作られている。
 この余裕のないまでの山場山場のイベント連打。これは優れた少年漫画的気風とも言える。説明なんて二の次。そして、重要なのは、こういう青臭いイベントは「この頃しかできないっ!」のだ。


 少年漫画的という意味では、演出のハッタリ具合もいい。マイク・ニューウェルは本当にイベント前のハッタリの効かせ方とか巧い。いや、褒めてるんですよ。ハリー・ポッターって如何にして「ハッタリ」を効かせるかが重要だと思うんだけど、イベントが始まるたびにこの戦いが如何に困難であるかッ、ということを、ダンブルドア先生が一席ぶったりするときの演出や、他校の生徒がやってきた!というときのは、本当に「どん!」「どどん!」*1って感じなんだよね。
 さらに、少年漫画的に嬉しいのは女性を美しく描いている事。特にエマ・ワトソンを美少女から美女へと移行した姿をきちんとフィルムに焼き付けた功績は大きい。ハリーとロンは別にイケメンとして成長する必要はないが、彼女の「見た目」はかなり重要だったわけだけど、ここまでの流れは「少年漫画的」に理想どおりだ。無論、ハリーたちが色気づくのも無理はないくらい、他の女性キャラも素晴らしいです。


 もう、この「幕の内弁当」のようなめくるめく色とりどりのおかずに彩られているような状況。映画ファンとしては、「おかず多すぎて、ごはん少なくね?」という感じだろうけど、いいんです。これで。この映画が今後どのような物語になっていくかは、原作者のJ・K・ローリングが握っているわけだけど、「あの人」が復活した以上、もはや物語は一気にダークになっていくだろうし、今回のようなエピソードは作られなくだろう。
 このシリーズで初めてとなる犠牲者が出た事で、いよいよ混沌の度合いを深めていく・・・であろう物語の山場としては素晴らしいハッタリぶりだったと思う。(★★★★)


公式サイト:http://www.gobletoffire.jp/

*1:ONE PIECE」で有名な見栄を切るときの擬音。笑いを取るばあいは「どーーーん」というのを使う。