虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ブルークリスマス」(1978年製作)★★★★

toshi202005-06-09



 倉本聰オリジナル脚本を、岡本喜八が監督した作品。喜八監督唯一のSF。


 映画に限らず、フィクションという「嘘」がある種の予見性を持つのなら、それは真実を描いているからだ。「UFOを見た者は血が青くなる」という、この荒唐無稽な「ルール」のみがSF的要素であるこの映画。しかし、そのたった一つの現象が起こす人間社会の反応を、この映画はドラマ描写だけで描ききる。なんで青くなるのか、説明はされず、カタルシスを得るような物語はなく、陰鬱な展開が続く。大作感を出そうと、海外ロケを16ミリで盗撮まがいに撮ってる辺りが涙ぐましい。


 青き血と赤き血。この明瞭な区別が起こるとき、人は哀しいかな、差別に走る。この映画がインスパイアされたのは、かつてのヒトラーの浄化政策なのだろうけれど、昔から人間社会は「穢れた血」というものを信じるのだ。みずからの体に流れる「血」。それをさらに人種間を隔てる「血」。「血」のガンである「エイズ」。「朝鮮人」「中国人」に対する「日本人」の優位感覚。人間ってのは、そういった「隔たり」によって自己を認識するのだ。人間はそんな間抜けな感覚を時代を超えて持ち続ける。その「血の隔絶」を象徴する青き血の人々の運命は、いやがうえにも過酷である。


 その「隔絶」による「差別」に抗えない「人間社会」の「不安」。この映画が描き出そうとしたものは、今現在も続いている。