虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「GODZILLA ゴジラ」

toshi202014-07-26

監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:マックス・ボレンスタイン



 初日に、成田のIMAXに見に行った。
 ・・・そして見終えた私はその足で、日本橋へ向かった・・・・!
 レイトショーのTCX&ドルビーアトモス版を見るために。


 2度目を見終えて、しばらくして私は吹き替え版を見て、私の三度参りは終了した。


 恥ずかしながら告白すると。私はそれほどゴジラに詳しくないし思い入れもなかったりする。
 少年期には一切見に行かなかったし、なにせ映画館で初めて見たゴジラローランド・エメリッヒ版の「GODZILLA」であったし、その後1999年から始まったいわゆるミレニアムシリーズも一通り見てはいるものの、それほど深い印象を残さなかった。ボクの中では怪獣ものとしては、平成「ガメラ」3部作の方がインパクトがでかく、その平成ガメラシリーズを撮った金子修介監督の「ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃」も、「面白いっちゃ面白いけど、ガメラほどじゃ・・・」というほどの感想で終わった記憶がある。
 なんというか・・・・!それぞれの作品が、「今現在、最高のゴジラを!」という気持ちで作られてきたことは知っているのだが、リアルタイムで見たゴジラたちは、気合いが空回りしていたり、どこか迷走しているように見えてしまって、私のゴジラというものへにこだわるためのフックがないままに来た。
 言ってみれば、私はゴジラシリーズを心から愛する機会を逸し続けたまま、現在に至っている。


 だから、頭では「ゴジラにはこうこうこういうテーマがあってね。」というのを知ってはいるものの、心がついてきていなかった。ゴジラの旧作を名画座へ見に行こう!とか、そういう気持ちも持てぬままに。せいぜいテレビでやっている旧作を見るとか、その程度の私である。



 本来ならば、フックになってくれるはずだったのはローランド・エメリッヒ版のゴジラではあったのであるが、あれはあれで、実はそれほど嫌いではない。ただ、やはり・・・・なんというか。こういうジャンルのパニック映画である、と言われればそうなのだが、やはり私のゴジラ愛を喚起するフックにはなり得なかった。
 ミレニアムシリーズにしてもそうなのだが、「ゴジラ」という題材に対して、「平成的な味付け」というものにこだわりすぎていたような感じがしていて、相対的に「ゴジラ」シリーズは古くさいという固定観念を植え付けることにもなっていた。



 なので、批評的な観点でこのエントリを書くつもりはないし、今更付け焼き刃的に解説をしようという気もないのだが、私はこの映画でようやく、ゴジラというジャンルのあるべき進化形を見たような気がしたのである。
 ようやく、ようやく、「心のフック」となるゴジラが目の前に出てきたと思ったのである。



 正直なこというと、テーマ的な目配せみたいなもの「原発」「震災」という日本に対して払われた敬意はもちろん嬉しいのだが、あまり今回の映画では心奪われる要素ではないし、怪獣に翻弄された「家族」の悲喜劇にも、それほど深い共感をしたわけでもない。シナリオの出来映えもちょっとご都合主義と言えばそれまでといえばそれまでだ。
 しかし。それでいいのだ、とこの映画は教えてくれた。主役は人間ではない。ゴジラなのだと。


 焦らされるほどに、出番がなく、やがて中盤あたりで、足下からゆっくりとなめるように映し出され、顔のアップになり、轟音一閃!観客に向かって咆吼するゴジラの姿を見て、俺は完全に心奪われたのだ。



 「これが・・・・これがゴジラ!」


 そうだ。俺はこれが見たかったのだ。DNAに刻まれていたかのように、心の中の本能が三十路も終わりに近づきつつあるこの身において、これほどに心奪われるフォルムをたたえて、屹立するその姿!見栄を切る千両役者の登場に、完全に魂持ってかれてしまった。
 惚れた。惚れてしまった。


 この高揚は、ノスタルジーではない。「今」である。


 常に「今現在」の映画感想を、シコシコと15年書き続けてきた私が、「リアルタイム」で初めて、惚れる新作「ゴジラ」に出会えた!そのことがね、嬉しくて。だから。
 むしろね。旧作にあまり思い入れのない人こそが、この映画を見るべきなのだと、いうことなのだと思う。未体験者にとって、確実に惚れるゴジラがそこにいる。はずだと思う。そしてこれから、この映画が「ゴジラ」シリーズの新基準になる。CG技術の粋を結集し、あるべき姿がある。娯楽映画として瑕瑾はあるのはわかる。だが、ここから、新たなゴジラは始まる、その一歩としては、確実に大きく、そしてこの上ない一歩だ。


 檄戦の末、宿敵となるムートーを斃し、やがて、海へと帰るその背中。
 その姿に、私は言えるのはこの一言である。


 「やっと遭遇えたね!」と。(★★★★)



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