「俺俺」
ジャニーズのアイドルグループ、KAT-TUNの亀梨和也主演である。
僕は彼についての認識は「江戸川区大杉出身」という情報だけが先行している。
江戸川区民にとって大杉は昔、おかじま電器(現・100満ボルト)という、当時としては比較的大きな電器店のあった町である。今は流れ流れてエディオンという電機屋チェーンに組み込まれてしまっているが、それはともかくファミコンを大量に扱っていて、小学生時代、ウィンドウ越しに眺めに、自転車こいでおかじま電器に行くのが好きだった。
なんで、いきなりそんなことをなんとなく思い出したかというと、亀梨クン演じる主人公・永野均がカメラマン志望で、今は電器チェーン店に就職して、冴えない日々を過ごす青年として映画に登場したからであった。
で上司の田島(加瀬亮)から嫌みを言われるシーンで、はたと気づく。
亀梨君、意外と頭でかい。加瀬くんが頭小さいというのもあるけど、比べると一回りくらいでかい。
しかし、この頭の大きさは、意外とこの映画にプラスに働いてる気がしてならない。
この映画は、冴えない日々を過ごしていた28歳の青年が、ハンバーガーショップでとなりに座った男のケータイをさりげなく盗みだし、それを使って「オレオレ詐欺」を働いたことがきっかけ?で、少しずつ他人が主人公と同じ容姿、つまり「俺」になっていく・・・というワンアイデアで最後まで押し切った作品。
印象としては「藤子・F・不二雄SF短編集」の一編のような趣で、三木聡流コメディを入り口にしながら、次第にブラックなスリラーの要素が入ってくる。俺が増えていくことで、「俺」が「俺」を「削除」し始めるのである。その時、「俺」はどうするのか、というのがこの映画の眼目。
この映画では亀梨くん演じる「俺」が次第に増殖していって、最終的には33役の「俺」を演じているのだが、それでも「亀梨くん」の「俺」をきちんと認識できるのは、彼の「顔」の意外な「大きさ」と顔の作りの「強さ」のバランスが非常に優れているからではないかと思う。
亀梨クン自体は実に整った、ちょっとオリエンタルな雰囲気もある二枚目であるが、彼の表情のバリエーションが多様ではなく、数パターンで構成されている。しかし、顔の印象は非常に強い。その顔の強さをさらに押し出すのは頭の大きさも多少関係していると俺は見る。
だからこそ、まったく違うタイプの亀梨和也=「俺」を演じ分けても、「俺」が増殖する「画」の面白さは消えない。それこそが、このワンアイデアのSF(すこしふしぎ)スリラーを、映画として説得力のあるものにしている気がするのである。(★★★)
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