虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」

toshi202009-03-12

原題:Street Fighter: The Legend of Chun-Li
監督:アンジェイ・バートコウィアク
脚本:ジャスティン・マーク



 タイトル通り、「ストリートファイターII」(以下「スト2」)の春麗を主人公にした映画である。


 「スト2」に思い入れがないと言ったら嘘になる。セガファンには忘れられないゲームである。私はセガオンリーユーザーだった時代、メガドライブに「スト2ダッシュ」(ストリートファイターIIダッシュプラス)の移植が決定した時には、その移植状況そのものが毎月(セガ系ゲーム誌は基本的に月刊)大きな話題になったほどのゲームである。当時スーパーファミコンにはすでに「スト2」は移植され、大ヒットしていたドラクエもFFもなく、友達にセガゲーム機を勧めるきっかけすら見いだせずにいたセガファンにとって、大きな福音をもたらす移植になるはず・・・であった。
 だがしかし、カプコンは結局、「ストリートファイターIIターボ」をスーファミに移植しやがって、しかも発売はターボの2ヶ月後という屈辱的結果で幕を閉じた。許すまじカプコン。この恨み忘れんぞ。
 ・・・ま、それはそれとして、当然私は「ダッシュプラス」をひたすらプレイすることでその寂しさを埋めるのだった。「バーチャファイター」が登場する、その日まで。


 完。


 じゃないや。老セガファンの愚痴なんざどうでもいいんだ(どうでもよくないケド!)。映画の話をしてない。
 えーとね。ボクはてっきり春麗「エピソード0」だと思って見に行ったし、それっぽい話ではあったんだけど、基本的には名前を借りた違う話だと思った。
 だって、ゲームの話では春麗の父親って刑事だったはずで、それがなぜか実業家になっていて、コネクションをたくさん持ってたから、という理由で犯罪組織に荷担させられたおっさんになっている。春麗は刑事ではなくなぜかピアニストになってるし、ガイルの友人ナッシュが米国軍人からチャラいICPOの刑事になってたり、ゲン(ストリートファイター「1」「ZERO」に登場する中国人ファイター)はタイの若者になってたりするので、基本的に換骨奪胎した「別物」として捉えた方がいいと思う。ツーか、ベガがタイの貧民街出身って設定になってて大爆笑だったんですが。
 だから、春麗のストーリーの大筋である「父の敵であるシャドルーを追ってストリートファイターに」という話だけが共通点の、まあ、なんていうんでしょうか。うん。「チュンリーって名前の女の子が戦う映画」です。


 でまあ、脚本の出来はどうかというと、・・・どうなんでしょうねえ。
 父を拉致られた後も高級な邸宅に病身の母と一緒に住むチュンリー(ピアニスト)の元に、巻物が送られてくる。で、なんだかんだあってそんで母親が亡くなり、彼女は謎の巻物の教えに従って、ゲンに教えを乞うために財産の一切合切を整理してタイ・バンコクに赴くんだけど。
 なぜか彼女はゲンに会うためにバンコク「路上生活者」になっちゃうんですよ!「そっちの意味でのストリートファイターかよ!」と驚愕。食い物の施しを受けたりと本格的に乞食になっちゃう辺り、「なんでそこまで?」の思いを断ち切れない。


 で、一方シャドルーはICPOに目をつけられていたのだけれど、ベガはかなり神出鬼没で姿を警察の前には現さない、という評価をナッシュ刑事はしているのだけれど。
 その割には春麗の親父を拉致る時は堂々と現場に赴いたりと、色々矛盾がある。それに意外とザルな組織で、シャドルーは親父を引き留めるために常に春麗を監視していたんだけど、春麗はかなり大胆に身辺整理をしてタイに飛行機で赴いたにも関わらず、彼女の行方を見失っちゃたりするお茶目っぷりを発揮したりする。


 ベガはある魔術の儀式によって、良心のかけらもない悪人になった、という設定なんだけど、その割には春麗に「紳士は子供を傷つけない」と言って、親父を拉致る際に幼い春麗を殺さなかったり、自分の娘を溺愛してたりするのはなんで? 幼女にだけ優しいとか?
 しかしベガ、大人になった春麗には容赦なし。ファザコンの彼女の目の前で父親を殺す。
 でまあ、ゲンの下で修行した春麗は、官憲の力を借りて父親をぶっ殺されたリベンジを敢行。受けることを余儀なくされたベガは、かけらも残っていないはずの良心のせいで春麗に破れるわけですけど。その際春麗、自分がされたことと同じことをベガの娘にやっちゃうんですね。あああ・・・と思っちゃいましたが、その後の説明が一切ないのはどうなのか。この映画に続編があるなら、親父の後を継いだ娘に春麗が追っかけられる話だな、と思いました。


 ていうか、この映画が「スト2」に続くならば、結末としてあの終わり方はない気がするので、ちょっと肩すかしを受けたわけですが、とりあえず、春麗役のクリスティン・クルックたんは可愛かったので良かったと思いました。終わり。(★★★)