虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ヤッターマン」

toshi202009-03-10

監督:三池崇史
原作:竜の子プロダクション
脚本:十川誠志



 びっくりした。


 脚本が「少林少女」の十川誠志じゃん。


 というのは置いといて。結果としてはちょー面白かった。
 「ヤッターマン」をリアルタイムで見た、とは言い張れないのが哀しい。えー、再放送で何話か見たくらいだけれど、それでも基本的にはそう変わりのない世界だったように思う。


 脚本の基本構成が「テレビアニメ3話分+α」で、十川氏の「アニメ脚本」出身のスキルが、意外な形でマッチした。
 タイムボカンが持つ、いい意味でのマンネリ感を、そのまんま「世界の法則」として取り入れつつ、実写映画として「現実にそれをやったら結構大変!」なアニメのお約束を、ギャグを交えつつ再現するという、なかなか練った画づくりが面白い。何故彼らが「週1回」戦ってるのか、という根本的な理由はわからんけど、「そういうもんだ」として流している辺りが潔すぎる。
 お約束もデザインを寺田克也でリファインさせながら、演出も三池監督流に見事に味付けして「映画としてのヤッターマン」として、きちんと楽しめるようにしてあって、タツノコが持つ「くだらなさ」との相性も抜群で、違和感がまったくないのが素晴らしい。


 でね。この映画では、ドロンジョが、あることがきっかけで、ヤッターマン1号ことガンちゃんに惚れてしまうわけなのだけれど。


 ガンちゃんを演じる櫻井翔って、ボクの中では未だに「木更津キャッツアイ」のバンビなんだけれども、役者として見ると非常に没個性というか、キャラクターとして「強烈な個性を持った人々に囲まれて、そこから一歩引いてる役」みたいのが多い気がするし、彼の自然体っぷりは良くも悪くも「平凡」というイメージを想起させる。
 で、ドロンジョ役の深田恭子はってーと、以前ちょこっと書いたんだけれども逆に、彼女としては「自然体」だったとしても、その場に「変」オーラを常に放ち続ける天性の「変」女優であり、彼女はただ演じながら「虚構性のかたまり」となってしまう、という存在の持ち主。彼女の天性のヘンさには、ボヤッキー役の生瀬勝久はともかく、トンズラー役のケンドーコバヤシですら、元の顔すらよくわからん「変装」をしなければとても拮抗できるものではないのである。


この映画が物語として面白いのは、「普通の結婚」を夢見る「虚構性のかたまり」である「深キョンドロンジョが、結果として「没個性」の「櫻井」ガンちゃんを好きになる、というところが僕の中では非常にすんなりと受け入れられたところで、この辺はキャスティングの妙を感じましたね。
 きっかけがむちゃくちゃ、とかそんなことはいいんですよ!きっかけなんざなんだっていいんでね。だけど、結果としてガンちゃんは、深キョンに比べたら全然「普通」な女の子である「2号さん」を選んでしまうわけだけれども、結局「深キョン」は普通になんかなれない、という結果もまた、彼女の運命として非常に「真っ当」だと思ったわけです。


 「下妻物語」や「富豪刑事」など、普通になれない女の子を演じさせたら天下一品だった深キョンが、年齢を重ねて「普通になれない女」ドロンジョを演じるのはある意味運命であり、この映画の存在は、そんな彼女の作品としては、結果として非常に「真っ当」な映画になったと思うのです。(★★★★)