虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ベガスの恋に勝つルール」

toshi202008-08-19

監督 : トム・ヴォーン
脚本 : デイナ・フォックス


 同じニューヨークで、一方は仕事をクビになってヤケクソになった職人と、一方は尽くしたあげくに男に振られて傷心のOL。それぞれ二人組でベガスで憂さ晴らしに来たら、ホテルのダブル・ブッキングで鉢合わせ。ホテルに豪華スイートルームに部屋替えさせ、なおかつVIPチケットをゲットした4人。だが、酔いつぶれて気がついてみると、二人は夫婦になっていた。
 互いに別れ話をしようとしたその時、たまたま「間」をもたせるためにやっていたスロットが大当たり。クビになっていた男がその総額300万ドルを独り占めしようとしたため、女の方は婚姻を盾に折半を主張。裁判沙汰にまで持ち込んだが、裁判長の気まぐれからふたりはその300万ドルを凍結された挙げ句、金のために半年間の強制的な結婚生活を強いられることになるのだが・・・。


 
 スクリューボール・コメディを目指した、というより、どっちかっつーとシットコムというのが正しい気がする。あらすじを読んで「「フレンズ」(言わずとしれたシットコムの人気シリーズ)でこんな話あったなー」と思ったら、ノリがまさに「フレンズ」みたいだったのでビックリだったんだけど。どうにもこう、ふたりが小競り合いを繰り広げるための「シチューション」立てが雑なため、いまひとつ入り込めず。
 しかも、諍いの原因がほんとに子供のケンカレベルで、「あーあ」と思いながら見てしまう。しかもその動機がほとんど「金」がらみというのも、変に生々しくて笑いを削ぐ。くだらないのに、笑えない、というのが一番やっかいで、どうにも反応に困る。


 出だしの「ありえなさ」は許容範囲でも、そこから始まる「同居生活」自体はもっと地に足つけたレベルに落ち着けないと、共感するまでには至らない、ただのバカ騒ぎになってしまう。シットコムの国なんだから、もっと巧く料理できる人間もいたろうに、どうにも空回りに次ぐ空回りで落ち着かない。ふたりが徐々に惹かれていく過程だってもうちょい丁寧に伏線を張ってくれりゃあいいのに、どうにもこう「百年の恋も冷める」ようなケンカばっかりで、説得力が感じられない。
 ・・・やはり、この映画の最大のネックは、当初の二人の動機が「金」であり、そして同居後も、金のために相手を出し抜こうとするような浅ましい話になってしまうのが、最大の問題で、そういう業を描くのはいいが、そこに恋愛を絡めるのは少々無理が出てくる。


 嘘の結婚生活、というシチュエーションだけでも、かなり面白く料理できそうなのに、変にスクリューボール・コメディにこだわったせいで、どうにも落ち着かない映画になってしまった。終盤のまとめ方は悪くないが、そこに行くまでがあまりにも雑で、素直に感じ入ることが出来なかったのが、残念。(★★)