虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「Mr.ビーン/カンヌで大迷惑?!」

toshi202008-01-19

原題:Mr. Bean's Holiday
監督:スティーブ・ベンデラック
脚本:ハーミッシュ・マッコール、ロビン・ドリスコル



 あの男が帰ってきた。というよりもなんとなくふらっと生き続けていた、というべきだろうか。相変わらずのマイペースで。


 可愛い子には旅をさせよ、という言葉がある。ビーンは基本的に自分大好きである。だから、ローワン・アトキンソンは「自分可愛い」な男・ビーンを旅に出す。基本引きこもりみたいな幼稚な男なので、ちょうどいいのかもしれない。


 前作は仕事だったが、本作では完全なプライベート。くじが当たって海をひとつ隔てた南フランスへのお気軽旅行。日本人で言うなら、韓国や台湾への小旅行感覚の旅だろう。目的地は「かんぬ」の「びーち」。お手軽な異国情緒。いつもはくまちゃんと一緒のビーンだが、今回のおもちゃは最新の「でじたるびでお」。あっちこっち構わず撮りまくってはご満悦。
 マイペースな自己中キャラで迷惑かける前半部で、相変わらずな面を見せる。だが、パリで一人の男*1に無理難題を押し付けた挙句、電車を乗り過ごさせた(しかも自分はちゃっかり乗ってる)ことから、彼のお気軽旅行はあらぬ方向へと迷走しはじめる。その男には一人息子がいて、その子はすでに乗車していたのだ。こうして、ビーンと男の子の珍道中が幕を開ける。


 てなわけで。10年前の映画版第1弾が不発だったことで、なんとなく封印されていた舞台発テレビ経由の人気キャラクター、ついに完全封印ということで、最後の花火を打ち上げるために、なんとなく復活したミスター・ビーン、最後の大騒動は隣国フランスを舞台に、大きな友情とささやかなロマンスと、映画への思いをいっぱいに詰め込んだ愛すべきコメディと相成った。
 

 電車一本のはずの旅なのに、公衆電話に切符を置き忘れて途中下車せざるを得なくなり、大道芸をしてお金を貯め、やっと乗れると思ったバスのチケットを追いかけて乗り過ごし、おんぼろ自転車でロードレーサーを抜き去り、自転車を壊され、ヒッチハイクに失敗して、右も左もわからぬ異国を彷徨う羽目になる。
 外国だろうと自分のためだけに行動することで、まわりに迷惑をかけてきた男はその結果、偶然たどり着いたとあるCM撮影現場で一人の女性と出会うことになる。ビーンの愛車と同じ車を駆る彼女と、ヒッチハイクで再会したビーン。彼女の名はサビーヌ(エマ・ドゥ・コーヌ*2)。フランスの新人女優で、カンヌ映画祭に出品する作品に端役で出演するので、カンヌへ向かう途中だった。


 彼らと道中をともにするうちにおっさんに芽生える、ある感情。それは彼とはもっとも無縁だった「責任感」。誰かのために必死になること。そのささやかな成長が、クライマックスで爆発する。ビーンというキャラクターでなければ起こせない「大迷惑な奇跡」は、彼が自分のためではなく、「彼女のため」に必死になることで初めて可能となる。
 ウィレム・デフォーの前振りを受けて、「それ」をあざやかにぶち壊すKYキャラ・ビーンの真骨頂が、見事にカンヌを揺らすクライマックスに、ただただ大爆笑、その後、さわやかな感動を呼び起こす。


 多幸感溢れるラスト、予想だにしない「ロマンスを匂わす」おまけまでついた、見事なハッピー・エンド。まさかまさかの、鮮やかな手際に感嘆すること仕切り。これにてビーンを封印すると宣言したローワン・アトキンソンも大満足であろう、見事な見事な有終の美。「ビーン」ファンもそうでない方も、一見の価値あり!の秀作に仕上がっていると思います。大好き。(★★★★)

*1:どっかで見たことあると思ったら、「ボーン・スプレマシー」でロシアの黒幕を演じてたカレル・ローデン!

*2:恋愛睡眠のすすめ」に出演してるそうな。ちょっと野暮ったい感じが好み。