虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「スマイル/聖夜の奇跡」

toshi202007-12-20

監督・原作:陣内孝則
脚本:陣内孝則金子茂樹



 1975年。修平(森山未來)は、東京でタップダンサーになる夢半ばで挫折を味わい、恋人・静華(加藤ローサ)と結婚するために北海道に戻ってきた。だが、彼女の父親は厳格で承諾せず、もし地元の弱小小学生アイスホッケーチーム・スマイーズを勝たせたら、結婚を認めてもいい、と言われ、結婚のためにスマイラーズの監督に就任する。
 まったくの素人の修平は、得意のタップダンスを活かした練習法*1でチームを鍛え直していく。徐々にチームの結束は固まっていくのだが・・・。ある日、スマイラーズの面々にとって憧れの女子、礼奈ちゃんが白血病にかかったことが判明する。彼らは彼女を励ますために、国際レベルの強豪もいる道内大会の優勝を目指し始める。



 陣内孝則監督作品の2作目。第1作は未見なので初めて見たのだが。


 ふむう。うん。なんかね。いいね。



 題材自体は、熱血(実話系)スポ根のノリに難病エピソードをからめて、コミカルに味付けした作品という手垢のついた話でね。まあ、お世辞にも巧い映画ではないですよ。陣内孝則監督にはテクニックは備わってないので、どうしても緩急をつける余裕はなくて、どうしても一本調子で突っ走り、ギャグもとにかく当たり外れ関係なくかましていく陣内ギャグ(テレビの彼のキャラの延長線上のギャグ)でたまに劇場内を凍り付かせ、しかも試合の流れがわかりにくいなどなど、欠点がかなり散見されるんだけど。
 ただね。俺は嫌いになれないのは、とにかく監督が観客を楽しませるための方向性でね。難病ものの要素をからめているにも関わらず、情緒的泣かせの部分はさらっと引き上げてとにかく、前向きに笑いの要素を入れる演出を入れていく。敵もものすごく分かりやすい。チャウ・シンチーもびっくりの「ブラック団」っぷりを嫌みたっぷりに演出していて、基本は陳腐といえるほどの「泣き映画」のストーリーラインなのに、あえてベタベタなコメディ演出に徹することで、結果として絶望の中でこそ希望と笑顔の大切である、ということを描いた*2喜劇となったのは非常に好ましい。


 素人の小学生たちにきちんと「演技」させた力も含めて、テクニックと撮りたい方向性の歯車が噛み合った時、陣内監督は喜劇の名手として一皮剥けそうな片鱗を見た。次回作での更なる飛躍に期待したい。よって星半分追加。(★★★☆)

*1:ドカベン殿馬の「ずんずんずらずらずらずらずん!」的な作戦もあって爆笑

*2:俺の中ではそれを「みなもと太郎イズム」と呼ぶ。