虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「HERO」

toshi202007-12-07

監督:鈴木雅之
脚本:福田靖
製作:亀山千広


 ずるずると見ないでいたら、上映終了間際。というわけで滑り込んだ。完全に興業のピークを過ぎているせいか、日に一回の上映のシネコンで、客2人しかいなかった。


 いやあ、オープニングが、キャスト名じゃなくてあえてキャラ名を示したのはずっこけた。
 テレビシリーズはたまたま見た第1話以外、見たこと無いんだけど、キャラクターの人間関係は第1話からほとんど動いてないドラマなので、比較的安心して見られた。久利生のキャラクターも信条も基本的に変わっていないので、違和感もあまりない。しかし、あまりそのまんまドラマの演出を踏襲しすぎてて、映画としてのリアリティは皆無といっていい。
 なんかさくらが妹じゃなくて、恋人である寅さん、みたいな安心感。その安心感はおそらく、キムタクの良くも悪くも変わらない演技にあると思うんだけど。ヒットした理由もたぶんそれだな。いつスーさんが倒れるかわからない「釣りバカ日誌」の後釜として松竹が買い取って、1年に1回くらい作ればいいのに。



 「くりうはいまどこに転勤になったんだろうねー」「きっと宗谷支部あたりで通販番組見てるんだろーなー」みたいな。転任地にはいろんなヒロインがいて、そこに松たか子が殴り込んできててんやわんや、なんて展開はどないだ。


 ・・・という冗談はさておき。
 多分脚本の福田靖は6年のインターバルの間に「逆転裁判」でも遊んだのか、ドラマ版ではほとんど描かれなかった(らしい)法廷をドラマのメインに据えて、裁判で足りない証拠を探す捜査パートと証拠を抱えて、松本幸四郎演じる最強の弁護士(というふれこみ)の蒲生との対決の中で、真実を探る法廷パート、という流れで物語は進行。
 問題は基本が法廷劇であるにも関わらず、そこが全然面白くないこと。法廷パートの丁々発止があって、はじめてライバルである最強の弁護士が最強たる説得力が生まれるはずなんだけど、理解者ぶりやがって、全然本気出してない感ありありなのがなあ。久利生は別に完璧な立証を期して裁判に臨んでいるわけではないらしく、蒲生が「おまえそれ証拠足りねーじゃん」というだけで、押し黙り「さすが蒲生さん」みたいなことをいうんだけど、それはお前、単なる無能であることを認めただけじゃねーのか?そこははじめっからきっちり固めておくべきところだろ。
 そりゃあさ、ひとつのささいな証拠がほころびになることがあるのが、法廷劇の醍醐味だけどさ、決定的な証拠を探して仲間が右往左往して、裁判は停滞してろくに進まない、というのはそれはお前、法廷劇にする意味がわかんねーよ。つーか法廷開く前にきっちり証拠固めしとけよ、って話でさ。すべての証拠をさらけ出し合って、その上で手詰まりになり久利生大ピンチ!の流れで仲間が切り札を持ってくれば「キタキタキタキター!」となるけど、仲間の証拠だけが頼りって、そんな検事いねーだろ。


 正直韓国パートは蛇足の一言。10分もあれば済む話をだらだらと体感時間30分くらい引き延ばすので、うんざりすること請け合い。さんざ引っ張ってイ・ビョンホンの出番、3分くらいなのは、なんかバカにされてる気がする。さらにタモリこと森田一義が巨悪の大物議員として出てくるんだけど、タモリの演技はかなり省エネで、一タレントにしか見えないのも残念だったな。期待してたのに。小物にしか見えないのは、残念すぎる。


 2時間10分もある必要性はあまり感じなかったな。うーん。(★★)