虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「龍が如く」

toshi202007-03-03

製作・原作:セガ 監督;三池崇史 脚本:十川誠志 


 ああああ、暑い。暑い。暑い。


 こう暑くちゃやってられない。こんなに暑くちゃお前あれだ、バカは金のない銀行で強盗起こすし、百億の金は消えるし、バカなカップルが連続強盗するし、キレたチンピラがショットガンぶっぱなすわなあ。あああああ暑い。そして熱い。この暑さは、暑苦しさは・・・たぶんあいつが帰ってきたからにちげえねえ・・・。


 というわけで、ある夏の日。日本有数の繁華街・神室町に伝説的ヤクザ・桐生一馬が10年ぶりに帰ってきた。すっかり店の並びも、勢力図も変わってしまったその町で、彼はなぜかひとりの少女を連れていた。欲と金、野望と混沌から生まれる暴力がうずまくその町で、彼は彼女の母親を追っていた。その母親は、消えた百億に関係しているらしい・・・。





 セガの大ヒットゲームの映画化ある。いくらヒットしてるっつったって、基本怖い顔したやくざがばんばん出てきて、そいつらをひたすらボコりながら、ストーリーを勧めていくゲームの映画化。女子供を味方につけなきゃならない映画興行。商売上のうまみなんかこれっぽっちもなさそうなこの映画。
 他人にまかせてリスクを回避すればいいものを、制作費をセガがほぼ出して、東映は最初のロゴと配給だけを請け負い、原作ゲームをしっかりクリアしたという三池監督が神室町という舞台と基本的なストーリーだけ借りて、やりたい放題に遊びまくる、という映画。
 そんな映画に自分から金を出す。それがセガという会社だ。スタッフロールに「製作総指揮:岡村秀樹」*1の文字を見たときはひっくり返った。この会社はいっつもそうだ。誰が見ても得しなさそうな、ハイリスクローリターンなことを思いついては実行する。
 かつてゲーム機つくっては、任天堂ソニーなどのガリバー会社に戦いを挑み、ジャンジャン金をつぎ込んだあげく、その失敗をアーケードでの利益で補填してきた。あそこまで失敗続きで今、ちゃんと存続してるのが不思議なくらいなんだけれども、それをなんとかしてきちゃった会社だ。「バーチャ」、「ムシキング」「ラブ&ベリー」などのアーケード部門のヒット、そして北米での健闘なんかが出なければどうなっていたことか。


 でもおれは、そんなセガが大好きだった。ドリームキャストでゲーム機戦線から撤退するまで、俺はそこのゲーム機「だけ」しか買わなかった。セガ信者というやつだ。俺にとっての横スクロールアクションはマリオではなくソニックであり、RPGと言えばFFでもドラクエでもなく、「グランディア」や「ファンタシースター」、「レンタヒーロー*2である。
 セガ関連の映画であれば、あのゲーム画面をただつなげただけの「シェンムー・ザ・ムービー」だって*3サクラ大戦」のアニメ映画だって、見に行った俺だ。俺が見なくて、誰が見るんだ。という気持ちで見た。これがですね。


 面白い。面白いんですよ。騙されたと思って見てください。もう本当に、本当にこの映画おもしれーから。
 この作品を日本映画になぞらえて言ってみれば架空の街でのヤクザの抗争を描く「暗黒街」シリーズの復活である。


 キャストも無意味に豪華で、おそらくほぼ理想通りの配役なのだろう。もう三池監督のはっちゃけ方も尋常じゃない。特に桐生の兄貴分・真島を演じる岸谷五朗がね、最高!最高!もう、映画の前半部は彼の独壇場と言って良く、桐生と彼のガチンコ対決としてカッチリアクションつけながら、コミカルな色を生み出す間合いも含めて、暴力を笑いに昇華する三池演出の完成型かもしれない。
 さらにこの映画は神室街を舞台にした群像劇になっている。カップル、殺し屋、刑事たち、情報屋、強盗たち。神室町という「もうひとつの日本」でそれぞれの思惑や生き方が交差していく構成は、セガサターンで最初に発売されたサウンドノベルの傑作「街」にも似て、しかし、しかし、馬鹿馬鹿しいほどの熱量は決して失われない。十川誠志の脚本に多少のアラや「穴」はあれど。それらをすべて演出で笑い飛ばす、映画が持つ本来のパワーが漲っている。
 そしてこの映画はそれらのドラマを追いつつも、ゲームの映画化としての本領を失わない。クライマックスの、かつての朋友との対決。そして、トリックスター三池監督の真骨頂とも言うべき、あっけにとられる大逆転劇は必見だ!


 爆笑。そう来たか!と笑うしかない。素晴らしい。


 原作ゲームプロデューサーの名越稔洋*4がセリフが一言もないながらも、物語のキーを握る重要な役でしっかり存在感を残すおまけまでついて、満腹。
 師匠筋の鈴木裕があの見返りのない超大作「シェンムー」を作ってから6年。セガはついに、その志を受け継いだ漢(バカ)の作ったゲームから、こんな傑作映画を制作するまでに復活した。おめでとうセガ。あんましもうかんないだろうけど、いいじゃん。映画、面白いし。(★★★★★)

*1:セガ常務取締役CS統轄本部統轄本部長。

*2:今思えば、「龍が如く」と基本的に同じシステムだったような気が

*3:しかも初日に。シネパトスでの舞台挨拶まで見て。

*4:どっちかっつーとデイトナUSA制作者のイメージが強かったのだが、このシリーズ作ってからいよいよヤクザみたいになってきたな。