虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

テレビアニメシリーズ「ブレイブ・ストーリー」パイロット版

え?コレ総集編?



監督:千明孝一 脚色:大河内一楼 原作:宮部みゆき
公式サイト:http://www.bravestory.net/



おだやかな生活を送っていた男の子に、突然、両親の離婚話がふりかかる。家を出た父を連れ戻し、再び平和な家族に戻りたいと強く願う少年が向かった先は、運命を変えることのできる女神の住む世界「幻界(ヴィジョン)」だった。5つの「宝玉」を手に入れ、女神のいる「運命の塔」を目指す彼を待ち受けるものとは!? トカゲ男にネコ娘、火を噴くドラゴン。コミカルなキャラクター勢とともに、次々と沸き起こるトラブルを乗り越え、少年は強くたくましくなってゆく
はてなキーワードよりあらすじ抜粋)



 うおおおおおお。見たい。見たいなあ。このアニメシリーズ、いつ始まるの?


 という位の、原作の超ダイジェストであった。内容を言えば、テレビシリーズの再編集+新作カットで構成された「Zガンダム」とかと大して変わらん。つーか、作り手にアニメーション「映画」として物語る意志がハナからなくて、テレビアニメの豪華版、という形でしか、劇場用アニメを認識していないのだから、仕方ない。



 というわけで、映画における物語として、描くべきものが欠落した箇所が多すぎる。現世<うつしよ>でワタルが出会う現実の掘り下げは足りないし、ワタルがラストの「願いを叶えるために幻界<ヴィジョン>を犠牲にしてはいけない」という結論に至るまでの重要なエクスキューズとなるべき幻界の仲間との膨大な「経験」も、挿入歌1曲のダイジェストで済ましやがんの。あほか。



 亀山千広プロデューサー(以下、亀P)も所詮、テレビプロデューサー上がり、ってことか。感覚がテレビ屋だから、こんな話でオーケー出すのだ。「踊る2」の時も感じた*1が、この人は、テレビシリーズにすべき話まで、劇場にかけようとする癖がある。
 実を言うと宮部みゆきのファンタジーは苦手で原作読んでないのだけど、俺に原作文庫、上中下巻をまとめて買っちゃったくらい、原作小説への興味を抱かせる「プロモーション映像」としての力はあったけれど、それ以上ではない。大河内一楼が全話の脚本を手がけた傑作テレビシリーズ「プラネテス*2に心酔した者としては、それこそ、彼に全26話の脚色をしてもらって、テレビシリーズとして立ち上げて欲しい、と思いましたよ。


 ワタルが幻界へと向かう過程や、そのきっかけとなる現世での厳しい現実や残酷なミツルの過去、ワタルとミツル、ミーナたんの三角関係(?)、カッツがワタルに信頼するにいたる過程などの、幻界での彼が通過してきた経験や試練、人間関係を掘り下げて、ワタルが「過酷な現実と向き合う諦観」を手に入れるまでのドラマを丁寧に描けば、ラストの救済も含めて感動的な物語になるはずである。テレビシリーズとしてならば、傑作になる予感はすごいある。


 というわけで、テレビシリーズへの投資と考えれば、全然許せるな*3。亀Pはこの映画によって得たいくばくかの利益で、責任持ってテレビシリーズを製作するように。義務。(★★)

*1:俺は「踊る2」はテレビシリーズであったならかなり面白くなる話だとおもったのだ。

*2:当ダイアリー全話感想。このアニメシリーズの作画監督が、この映画の総作画監督千羽由利子

*3:そうでなかったら全然許せんの意。