虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「プロデューサーズ」

toshi202006-04-09

原題:The Producers
監督:スーザン・ストローマン 脚本・作詞・作曲:メル・ブルックス 脚本:トーマス・ミーハン
公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/theproducers/


 トニー賞12部門受賞だっけ。うーんアメリカってなんて下品が好きなのか。というほど、コテッコテのアメリカン・コメディである。びっくりした。そんなコメディーとミュージカルの最悪の組み合わせが、驚くほど幸せな結合を果たした、映画生まれ舞台育ちの大ヒットミュージカルコメディが満を持して映画界に凱旋。


 実は映画化としてはあまり芸がない。舞台の演技をそのまんま映画に持ち込んでいる上に、映像設計もへったくれもなく、演出も基本的に舞台に準拠している。映画としての出来はお世辞にも良いとは言えない。それに、キャストももっと芸達者をそろえられただろうという意見がでてもおかしくない。主演のネイサン・レインマシュー・ブロデリック二人もめちゃくちゃ芸達者という感じはしない。最初の掛け合いも、不安の方が先に立つ。
 ロブ・マーシャルによる「シカゴ」の映画化が如何に天才的でクールであったかを再確認することになったのだが、この映画化に関していえば、その泥臭さが大きな傷になっていない。
 繰り出されるネタは下ネタ、同性愛ネタ、人種ネタ、舞台劇の内幕ネタという、下品に次ぐ下品なネタの連打なのだが、そこにミュージカルという魔法をかけるとそれが愛すべきものになるという不思議*1。主演の2人の「それなり」な歌と踊りも、物語が進んでも一向に「さえない」2人というキャラクターに、次第にピタリとはまり始める。
 物語自体が最低な作品を上演した方がもうかると気づいた2人(ベテランプロデューサ+会計士)が、最低な脚本、キャスト、演出家で最低な作品を上演するつもりが、最高の傑作になってしまった!というもの。ナチ・きちがいの手による脚本、ゲイの演出家が演出・主演!そしてヒロインは北欧の頭カラッポ淫乱美女!その濃ゆーいキャラクターたちに舞台そのまんまの演出というナンセンスが、違和感なく絡み合うのだ。


 そして、完成した「春の日のヒトラー」!これが素晴らしい。これだけで全編見たい!と思わせる爆笑のステージ。まさに傑作。


 これぞものづくりの奇跡!ともいえる、醍醐味をたたきつけながら、本人たちにとっては大ピンチ!という筋立ても爆笑だが、それがやがて、孤独な2人の間に深まる友情という大きなハッピーエンドがもたらす多幸感たるや!鑑賞後に得難い余韻を残す辺りは、さすがである。
 スタッフロールの歌も爆笑もんで、その後にもお楽しみがあるので、お急ぎのご用がない方は最後までお楽しみを。(★★★★)

*1:これは「サウスパーク」映画版にも言える。