虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ああ爆弾」(1964年製作)★★★★


 出所したヤクザの大親分と同部屋の爆弾作りが得意な天涯孤独な青年。だが、組はすっかり株式会社になり、縁もゆかりもない人間が社長に納まり、市会議員を目指して選挙の真っ最中。そして豪邸も取られ、愛人も組員もすべて親分を見放した。親分の奥さんは宗教(創●学会?)に狂い、息子は家計を支えて新聞配達。なんともやりきれねえ、これじゃあんまりだ。そうだ復讐だ復讐しかない。こうして組長と青年は結託して、社長への復讐計画を案ずる。それは万年筆爆弾による社長爆殺計画だった。


 ・・・ってな話なんだけど、主演が名バイプレイヤー・伊藤雄之助が頭と要領が悪いが憎めない組長を演じていて、かなりのインパクト。しかも、なぜか始まりは狂言仕立てで二人の生い立ちまで説明。そしてなぜか、全編ミュージカル仕立て。浪曲、歌舞伎、狂言モダンジャズ、演歌、読経(!)などが和洋入り乱れてもうメチャクチャなんだけど、喜八監督がインタビューで言ったことには、伊藤雄之助演じる組長が邦楽(狂言やら歌舞伎やら浪曲やら)担当で、対する中谷一郎演じる社長が洋楽担当とのことで、なるほどなあと思った。
 いやもう、音楽担当した佐藤勝氏おつかれさん、って感じなんだけどw、復讐劇なのに全編軽妙な色を失わないあたりがさすが喜八監督で、団扇やら読経の音にあわせて起きたり寝たりするという荒技を伊藤雄之助にさせて爆笑をさそう。つーか、アレは雄之助氏がすごい。


 洋邦のジャンルを縦横無尽に駆け回り、全体的に落語的な語り口で唄を交えて爆弾の行方を描いていく、という後半は凄すぎる。終わり方がグダグダなのが難なのだが、ここまでやってくれりゃあもういいよ、と言う気がする。
 こんな珍奇な作品なんだけど、「殺人狂時代」見たあとだと普通に見えるから、すごいな。