虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」

toshi202005-11-25

原題:Four Brothers
監督:ジョン・シングルトン


 感謝祭を目前に控えたデトロイト。小さな食料品店が強盗に襲われ、店主と買い物中だった中年女性エブリンが無残にも殺される。捨て子だったところを彼女に拾われたボビーは、エブリンの葬儀に出席するため久しぶりに帰郷、同じく彼女に育てられた3人の義弟と再会する。懐かしい我が家に揃った4兄弟だったが、思い出されるのは優しかった母のことばかり。兄弟は地元警察に頼らず自分たちで犯人を探し出し、復讐しようと決意する。


 今時珍しいくらい、直球ど真ん中な復讐活劇である。


 なんとなく、クラシカルな気分で見ていたのだが、その奇妙な古さは決して気のせいではないと思う。西部劇「エルダー兄弟」からの翻案とのことだが、むしろ感じるのはジョン・シングルトンが前にリメイクした「シャフト」に代表されるブラックスプロイテーション映画の匂いだ。
 今時珍しいくらいの博愛主義の義母。しかも元ヒッピー。70年代の理想を今まで持ち続けて来た女性に育てられた悪ガキ4兄弟が、母親を殺され、復讐の劫火を燃やす。前半はむしろ、そういった彼女の喪失の痛みを描くことに重点を置いているあたり、昔の気風を懐かしむ気分が伺える。そんな「喪失」の痛みを和らげようと、彼らは真犯人を探し始めるが、そこに見え隠れするのはデトロイトを仕切る、巨悪の影。彼らはその悪党どもにせまるべく、銃を片手に動き出す。
 やがて、復讐と報復の連鎖によって、血で血を洗う兄弟と組織との抗争が始まり、兄弟たちも、一人死人が出てしまう。兄弟を失い、巨悪への復讐への道は閉ざされたかに見えたが、今まで復讐に乗り気じゃなかった一人の兄弟が、逆襲への鍵となる。


 今時こんな悪役いるかよ、ってくらい荒んでて傲慢でかつ狡猾な黒幕なんだが、彼を失脚させる因子が、彼らの復讐の劫火ではなくて、兄弟のひとりが行っていた「地道な組合活動」ってあたりが、なんか新鮮だった。なんかこう「勝ったのは組合員だ。わしらではない。」って感じ(笑)。作品全体に漂うカウンターカルチャーへの憧憬とか、左翼的な戦いの勝利、という結末もまた、今時の映画じゃない感があるのかもしれない。(★★★)


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