虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「エリザベスタウン」

toshi202005-11-24

原題:Elizabethtown
監督・脚本:キャメロン・クロウ


 えー。キャメロン・クロウの映画って昔からなじめなかったんだが、なんでなんだか今まで全然わかんなかった。


 で。彼が「個人的な映画」とのたまう、本作を見て、なんでかわかった。キャメロン・クロウ、あんた自分大好きだな!大好きで大好きでしょうがない、ってくらい自分が好きだろ!!キャメロン・クロウの作品に対する、全体的なスイート感って、結局のところ監督自身に向かってるのだ、と本作において気づいたのだった。


 だってすげえよ。
 会社に総額10億ドルの損害与えてしまい、クビを言い渡されて死のうとしたら、父が先に故郷で死んじゃって葬式に行く主人公。おそらくクロウの投影のはずの主人公を演じるは、当代きってのイケメン、オーランド・ブルーム。どんなナルシストでも躊躇するんじゃね?普通。
 で、彼がその途上で出会うのは、キルスティン・ダンスト演じるスッチーなんだけど、客として搭乗してた主人公にお気楽に話しかけてきて、いきなり「アタシが大変だから前の席に来て」と言ったあげく、隣に座ってアンニュイな主人公に延々と語りかけ、降りぎわには丁寧にエリザベスタウンまでの地図(アタシの電話番号つき(はーと))まで書いてあげて、次のフライトから戻ったら主人公から電話がかかってきてその電話に延々付き合ってくれたあげく、朝日まで見に行っちゃって、「アタシフライトついでに、ハワイで休暇なの」とか言ってたはずが実はまだいて、主人公の骨壺探しにつきあってくれたりなんだかんだうんにゃらへんやら・・・。



 このままだとあらすじをおおまかに言ってしまいそうなのでやめるけど、彼女、主人公に出会ってからずっと不眠不休で仕事以外の時間のほとんどを使って、出会いと彼を励ます出来事を演出しつづけるのである。なんで、そこまで?ってくらい。いや、俺も最初はダメ男の天使たるキルスティンの魅力にどっぷりだったんだけど、あまりの「ありえねー」サービス過剰っぷりにだんだん胃がもたれてきちゃって、なんでこんな負け犬な彼にそこまでするんだ?なんか作為でもあるんじゃねーの、とか思い始めちゃった。で、なんか嫌らしいオチがあるんじゃないかと待ち構えてたんだけど、結局普通に感動的に物語は終わりを迎えてしまい、ずっこけた。
 おいおいおい、何この「甘い人生」。人生「大失敗」したって次があるんだぜ!って映画なんだろうが、だからって出会ったスッチーが、こんな膨大な時間外サービスしてくれる人生ってどんなだよ!この超絶ポジティブな思考はどっからくるんじゃい!こういう映画を「個人的映画」とか言うなー!


 いや、全体的にはいい映画なんですが、なんかこう、観客に向けて「がんばろうぜ!」って言ってるんじゃなくて、クロウ監督が自分で撮った映画を自分で見て、主役のオーリー様を自分に重ねつつ「俺がんばるよ」とか泣く映画、なんじゃないかなーと思った。(★★★)


公式サイト:http://www.e-town-movie.jp/