虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「チャーリーとチョコレート工場」

toshi202005-09-26

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「PLANET OF THE APE」に置けるメジャーになることへの混乱から、「ビッグ・フィッシュ」の自己確認を経て、ティム・バートンは、作家的に素晴らしい熟成を獲得する方へと方向修正に成功した。その結果が、この映画だと思う。
永遠とも思える孤独への怯懦、そしてそこから発するイノセントな狂気を映画監督としての力に変えるのがティム・バートン監督だと思う。ゆえに彼の作品はラブリーでありながら、常に危うい光を放ってきたわけだが。この映画はティム・バートンにしか創出出来ない世界を見せながらも、前作にも増して安心して見られる作品になっている。*1


もともとの原作からしてが児童小説だけに、暗喩に満ちた物語である。世界中で爆発的な売り上げを記録しているウォンカのチョコレート。ですが、実は誰も工場に人が出入りしているところを見たことがありません。世界一のチョコレート工場だというのに。いったい誰がどのようにチョコレートを作っているのか?
ある日のこと、チョコレート工場に5人の子供を招待する!と工場を擁するウィリー・ウォンカ氏が発表。その工場の近くの、傾きかけた家で両親と両祖父母と一緒に健気に過ごす家族思いの少年チャーリーは、数少ないチャンスから幸運で、工場へ行けるゴールデンチケットを手に入れた。それ以外の4人の子供は、食い意地が張っているオーガスタス、親に対してものごっついわがままを言って入手したベルーカ、野心や名誉欲が高いヴァイオレット、すべてを無駄を嫌う情緒0%の計算マニア・マイク、という揃いも揃ったりのクソガキたち。こうして、ウィリー・ウォンカ氏のナビ付きで、5人の子供達の冒険が始まるのでした。
…とかいいつつ、実際の話、クソガキたちは容赦なく締める、なかなか子供にとっては悪夢のようなファンタジーです。


そんな物語を明るく不気味に彩るのが、原色バリバリの歪んだヴィジュアルと、子供達(&その保護者)への制裁の前に現れるウンパ・ルンパの愉快な歌。もう、それは見立て殺人ミステリーのように(いや、殺さないけど)、制裁を加える子供達の欠点をあげつらいながら、愉快に踊り狂うウンパ・ルンパを見ているウチに、なぜか幸せな気分になってくる俺がいたり。彼らが出てくるたびに「キタキタキタ、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!」と大喜び。ごめん、クソガキちゃんたち。


まあ、それはともかく。今時、主人公が貧乏で家族思いで、テーマが「家族って大事よね」なんていう話ってどうよ?とは思うんだけど、ティム・バートンがそれをやると「ああ、これが彼の見出した答えなんだな。」と思えて、ちょっとほっとするような、寂しくなるような。チャーリーの母親が「ヘレナ・ボナム=カーター」であることに(あからさまに)象徴されてるように、ウォンカ氏(&チャーリーのダメ父)にバートンは自身を見出している。この映画は親の目線で作られた、バートン作品の新たなる一歩なのだと思う。(★★★★)

*1:ティム・バートンにしては…だけどね。