虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ダイナマイトどんどん」(1978年製作)★★★★



 「ニンキョー!!!」


 時は昭和25年。北九州一帯は暴力団の抗争が頻発していた。特に、小倉では岡源組と橋伝組がしのぎを削り、日々抗争を繰り返す。これでは警察のGHQや世間からの信用があがったりだってんで、警察署長は民主的に、民衆のみなさまに納得出来る形で、抗争しようと提案。かくして、北九州一円のやくざに寄る野球大会が催されることになったのであります。


 「仁義なき戦い」MEETS「がんばれ!ベアーズ」といった感じの、パロディ喜劇。深作欣二作品などのヤクザ映画でおなじみの錚々たる面子が、如何にも汚い手段で野球大会をサバイヴしていく、というまさに仁義なき野球大会。裏で札びらが飛び交い、当然のごとく賭けが催され、アル中の投手に裏で酒を振る舞っちゃうなどの、浅ましい行為が頻発する。キャラクターも馬鹿馬鹿しい奴らばっかり。当時としては珍しく自分のキャラをカリカチュアした演技が快調な菅原文太、クールだけれどどこか子供っぽい北大路欣也、元名投手だったが今は満身創痍の傷痍軍人であるフランキー堺、しゃべりが聞き取りづらく通訳が必要な組長・嵐寛寿郎、柔和だけれど腹黒い金子信雄、キザだけどアル中の名ピッチャー田中邦衛、ピンクのスーツでやりたい放題の岸田森など、滅茶苦茶な奴らが大いに笑わせる。特に田中邦衛、最高。端役なのに最高。出てきた瞬間拍手しちゃった。


 ただ正直言うと、北大路欣也が裏切った裏切らないだのの件は、もう少しどうにかならなかったものか。ちょっとここだけ、やたらと重く感じた。大体なんで、こういうコメディが140分もあるのだ。確かに面子は凄いけど、それをからっと軽く揚げるのが喜八流のはずなので、この重さはちょっと残念。


 そこから殺人野球へと発展するに至って、ようやく調子が戻ってくるのだけれど、とにかく無駄に長丁場なのが玉に瑕。それに耐えられれば、なかなか良いパロディだと思うであります。


●予断な余談
 「紅の豚」のクライマックスは、「ダイナマイトどんどん」のパロディだったのかなあ、などと思った。似てる。つくづく似てる。