虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

オリが、オーリーに泣く日

toshi202005-05-25



 俺はオーランド・ブルームと相性が良くない。大体オーリーって愛称がむかつく。なんだ「お〜り〜」って。


 俺は「ロード・オブ・ザ・リング」ではレゴラスよりギムリ派である。「パイレーツ・オブ・カリビアン」はジャック・スパロウばっかり印象ぶかく、全然思い出せない。
 そして、「トロイ」である。この映画でオーランド・ブルーム演じるバリスは人妻に一目惚れし、イケメンにものを言わせてキモメンであるスパルタ王・アガメムノンから王女をお持ち帰り。結果トロイを滅ぼすきっかけとなる戦争の、戦端を開いてしまうのだ。


 このボンクラがあああああ!


 というわけで、すっかりボンクラで影が薄いだけのイケメン役者という印象しかなくなった。しかし、人気だけうなぎのぼり。


 くそ、イケメンめえええええ!万年レゴラスと言われ続ける分際でええっ!


…と心の底で毒づきながら、オーリーに嫉妬しまくるキモメンのオリが、オーランド・ブルームを見て泣く日がやってきた。


 「キングダム・オブ・ヘブン」を見たのである。


 主人公バリアンはすべてを失った男。神すら信じられなくなった虚無の男である。無個性なイケメンぶりだけが際だつオーランド・ブルームであるが、この映画においてその無個性ぶりが見事に虚無を体現する。まあ、当然イケメンなのでもてるんだけど、愛に生きるとかそういう執着を表現するのが苦手な俳優であることが、逆に愛に溺れることなく真実を見定める騎士として違和感なくスクリーンに存在し続ける。


 曇り無き眼で見て、決める。そんな美青年。


 この映画の彼を見ていると、「もののけ姫」のアシタカを思い出す。キリスト教イスラム教、共に生きる道はないのか。そんな道を求め続ける。慈悲深かったイスラム側の王は、十字軍側の非道に激怒し、エルサレムに大軍をさしむける。まるで暴走するシシ神様のように。

 そんなイスラム軍と対決する彼は、求め続けた真実のありったけを、味方にむかって叫び鼓舞する。そんな姿に、心ねじくれまくった我が輩も思わず涙。ああ。正直すまなかった。俺が間違ってた。オーリー。この役、あんたにしかできないよ。あんたあっての、「キングダム・オブ・ヘブン」だよと。真実の騎士を体現した一人の男に、兜を脱いだのでありました。


 生きろ。そなたは美しい。(★★★★★)