虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」

toshi202013-01-26

監督:アン・リー
原作:ヤン・マーテル
脚本:デビッド・マギー



 信じるか信じないかはあなた次第。そもそも物語とはそんなものだ。


 真実は虚構の向こう側に隠されて、あざやかな虚飾の世界で命がけの冒険する物語。としまえんIMAXシアターに映し出された映像はまさに甘美。それだけで、大スクリーンで見る価値がある映画である。


 カナダ在住のインド人・パイさんの元へ、作家志望の青年が訪れる。パイさんは彼がカナダで暮らすまでに至った数奇な物語を語り始める。
 動物園で生まれ育ったこと、父親がつけた名前が元でいじめられた幼少期、神に魅せられて複数の宗教の神に帰依した話、そしてベンガルトラ「リチャード・パーカー」*1との出会い。パイは「彼」とのある出来事によって、神を求めることをしなくなった。
 そしてパイが16歳の時、両親は彼の兄とパイと、動物園の動物たちとともに、カナダへと移住しようとするのだが、その客船が太平洋上で沈没し、家族は一緒に海の底へ沈んで死亡。パイは救命ボートに乗って難を逃れる。しかし、そこにはシマウマ、ハイエナ、オラウータンが乗り込んでおり、ハイエナはシマウマをかみ殺し、オラウータンの命を奪う。だが、一瞬でハイエナをしとめたものがいた。パイが「リチャード・パーカー」と呼ぶベンガルトラであった。
 こうして救命ボート一艘の中で飢えた肉食トラと呉越同舟しつつ、パイ少年の命をかけた漂流が始まった。


感想:神のみぞ知る贖罪 - 虚馬ダイアリー

 
 この映画を見て思い出したのは「つぐない」である。物語というのは語り手こそが「神」である。
 「トラとの奇妙な漂流譚」こそが物語であるならば、この映画で語られる「もう一つの物語」は余録である。しかし、この映画はその余録があってこそ物語は本当の真価を見せる。神のきまぐれ、神のみぞ知る真実。物語は語るものによってねじれが出るものである。
 アン・リー監督は、「神」の気まぐれによって真実を向こうに隠し、パイ少年のサバイバルと精神世界の彷徨を描いた物語を、真に迫りながらも色彩鮮やかで虚実定かならぬ映像という形で観客に提示することで、より明快な形で演出してみせた。
 その映像世界に耽溺する、トリップするようなめくるめく映像体験をしながら、その結末によって物語の深さに感嘆する。そんな体験が出来る希有な映画である。是非、映画館の大スクリーンで見ることをおすすめします。(★★★★☆)