虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「シャーロック・ホームズ/シャドウゲーム」

toshi202012-03-24

原題: Sherlock Holmes: A Game of Shadows
監督:ガイ・リッチー
キャラクター創造:アーサー・コナン・ドイル
脚本:ミシェル・マローニー、キーラン・マローニー



 呪・ワトスン結婚


 ということで、ロバート・ダウニーJr.演じるシャーロック・ホームズ映画第二弾。


 今回はホームズシリーズの「完全悪」モリアーティ教授が登場することで、冒頭で前作のヒロイン・アイリーン・アドラーがあっさりとお役御免となり、モリアーティ教授との全面対決の様相を呈するのであるが、もうひとつ、ホームズの心をかきみだすのは、同居人・ジョン・H・ワトスンの不在である。そう、メアリー・モースタンと結婚するのである。
 というわけで、ワトスン結婚が決まって以降、ホームズの奇行は一層拍車がかかり、ハドソン夫人に無理難題を言いつけて怒らせている。通いで助手をするワトスンと結婚についての話題が出ようものなら、皮肉の応酬やら嫌がらせやら始まる具合で、「お前はどんだけワトスンLOVEなんだ!」と観客を呆れさせ(一部喜ばせ)ること請け合いである。
 そして、いよいよモリアーティとの邂逅と相成るのであるが、モリアーティは「おめーの弱点は、あの新婚ほやほやの医者だろ!」と喝破し、アイリーン・アドラーの死と、ワトスン夫妻を標的にしたことをホームズに告げる。


 な、なんだってー!メアリーなんて小娘はどうでもいいけどワトスンだけは殺させない!というわけで、結婚式を無事終えて新婚旅行へと旅立った夫妻の乗る列車に同乗し、ワトスンを救い出し、メアリーを列車から蹴り落とすことで助けると、ふたりで「モリアーティの陰謀ぶっつぶす」という目的を兼ねた、ヨーロッパを股に掛けるネムー大冒険へと繰り出すことになる。
 まさに、シャーロック・ホームズの「きみ(ワトスン)のためなら死ねる」である。



おまたせ ようこそ ワトスン
いまから「きせき」がはじまる


皮肉を吐いたり
自分を消したり
吹き矢を吹いたり
ペンキで塗ったり


ドイツへロバで激走


館の端から滝へとダイブ
怪我ひとつないぜ俺たち


そうです みなさんおぼえて
私の名前はシャーロック・ホームズ


拷問受けたり
大砲よけたり
テロを防いだり
タワー倒したり


高速鉄道から転落(友人の嫁が)


兵器工場から緊急脱出
傷だらけですよ俺たち

いのちがキケンだ、いのちキケン
みんなは真似しちゃ「ダメだぜ!」


 という感じで、ホームズは、前作にも増して、「名探偵の頭の切れを持ったアクション・ヒーロー」と化している。「ミレニアム」シリーズでブレイク必至のノオミ・ラパスが、ジプシーの占い師というヒロインを演じ、彼女の協力を受けながら、ホームズ&ワトスンの活躍は、イギリスからフランス、ドイツ、そしてクライマックスのスイスへと舞台が拡がり、事件の規模も「世界大戦を阻止するか否か」という、スパイ映画もかくやのスケールへとふくれあがる。
 こういう脱力系肉体派ホームズに対して「こんなん違う!」と思われる方も多数いると思われるけど、僕は楽しんだクチで、すっとぼけながら敵を倒し、憎まれグチを叩きながら頭脳をひたすら回転させるロバート・ダウニーJR版ホームズは、どこか憎めない。物語の舞台はめまぐるしく変わるけれど、物語の幹は、「ホームズVS,モリアーティ」というどっしりとしたテーマがあるし、前半のホームズの、ワトスン結婚へのスネっぷりが、そのままモリアーティ対決の大きな動機づけになっているところもいい。
 副題(邦題の方)のシャドウゲームは、「格闘」の攻防を一手一手読んでシミュレーションする「シャドーボクシング」を発展させた読み合いシーンと、「闇(完全悪)との(読み合い)ゲーム」のダブルミーニングになっていてうまいのだが、この辺をきちんと演出として取り込んだ上で、「最後の事件」を想記させるエンディングへと至る、クライマックスの対決へと収れんさせた辺りは感心してしまった。


 シャーロキアンにはお気に召さない人もいるかもしれないけれど、こういうエンターテイメントに特化した翻案をしてもなお、決して崩れない、シャーロック・ホームズというキャラクターの強靱さを垣間見せる、楽しい娯楽映画になってると思いましたよっと。たぶんね。大好き。(★★★★)