虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「少年メリケンサック」

toshi202009-02-14

監督・脚本:宮藤官九郎


 OLが自らの契約を賭けて、動画サイトにアップされたライブ映像に映るイケメンパンクバンドと契約しようと本人を訪ねたら、実はとっくに25年前に解散していてメンバーは全員おっさんになっていた!それでも動画への反響はすごくて、レコード会社は全国ツアーを決定してしまった!人間的にはポンコツ!演奏はさびついてる!それでも行くのか!?どうする?どうする!?・・・行くしかない・・・。狙うは、奇跡の一発逆転!
 という、中年パンクバンド+1が人生の逆転を賭けて全国を駆け巡る、ロードパンクコメディ。


 あれも見なきゃこれも見なきゃと焦る日々でも。これを見ないで死ねるか!だって天才・宮藤官九郎が脚本で監督で、主演が宮崎あおいっすよ!当たり前っすよ!


 というわけで会社帰りにふらふらになりながら見に行った!


 で。そのまんま鑑賞したんだけど、やっぱクドカンの脚本は目が覚めるほど面白い。


 そして、主人公のかんなちゃんを演じる宮崎あおいはちょう可愛い!人妻とは思えん!<言うな!
 彼女が演じる役は基本的にダメOLで、本来ならもう少し容姿が不自由な女性が演じた方が痛々しくてリアルなんだけど、やっぱ可愛いは正義っすよ<なに言ってるんだお前。大河の主役を張る国民的女優となった宮崎あおい相手に、映画でしかできないギャグをやろうと、宮崎あおいがはたかれたり、蹴られたり、あんなものをぶっかけたり、セクハラされたりとやりたい放題で、そういう意味でも楽しめました。
 さらに、シンガー志望の恋人(勝地涼)といちゃつく時の演技がちょうかわいくて悶え死にそうになるんだけど、恋人がだんだん(旦那の)高岡蒼甫に見えてきて「むきゃー!」と思ったりしていたら、やがて浮気発覚で修羅場なんて現実のリンクするようなネタが出てきて大爆笑。大変溜飲が下がりました。この映画の展開が現実になればいいのに!と思いました。


 メンバーもなかなか狂ってる。破天荒なベーシストの兄を佐藤浩市が演じて、生真面目なその弟を木村祐一が演じるギャップも面白いんだけど、特に田口トモロヲ演じる謎のボーカル・ジミーさんのキャラが最高で、ボーカルなのにライブ中の事故で言語障害でしかも、立つこともまともにできない・・・というキャラ設定は「うわあ・・・なんじゃそら」と軽くこっちが引くキャラクターなんだけど、話が進むごとに彼の存在感が増していく。
 会社に中年の「少年メリケンサック」を売り込むために、かんなは少年メリケンサックの過去をほじくっていくんだけど、彼らの過去を若手の俳優たちがノリノリで演じていて、その過去の因縁がやがて、現在のドラマと響き合うかたちでトラブルを引き起こしていく・・・という構成もいい。
 


 脚本はね、ほんとに最高に面白い!
 


 ・・・うん。脚本はね。
 とにかく脚本の面白さと勢いぐいぐい引っ張るし、演出も決して悪くはないんだけど・・・。それでもいろいろいいたいところはあるかな。


 インタビューをいくつか読んでると、脚本を叩き台にしてそこから笑いをさらに「上乗せ」していく形で演出をしているようなんだけど、クドカン脚本としてはかなり王道に近いコメディということで、前回の不条理ギャグコメディという枠でならともかく、今回は見ていて「それは・・・余計なんじゃないのか?」と思ってしまった。
 そういうのって舞台演出では有効かもしらんけど、映画では叩き台になる脚本の面白さを信じるならば、そういう上塗りの小手先ネタで笑わすのはちょっと違う気がする。そういう小ネタが話の流れで笑わせる部分の障害になってる部分が散見されて、「もったいない」と思う箇所もある。
 そしてですね、木村祐一演じるアキオと田口トモロヲ演じるジミーが、少年メリケンサック結成以前に「●●●●グループ」に所属していたという大ネタがあるんだけど、編集がいまひとつで、その「ギャップ」で大爆笑のはずが、全然うまくいってないのは気になった。さすがに、そこははずしちゃいかんところじゃないか。


 ・・・というわけで、脚本の面白さの2割くらい、演出の拙さで削り取られてる感もあって、これがクドカンドラマ演出常連の金子文紀が監督だったら、クドカン脚本最高傑作になっていた可能性も想像できてしまって、もう、本当にもったいない。
 それでも、それでも凡百のコメディを超えていく面白さであることは確かで、ウェルメイドなんかくそくらえな終盤のカオスっぷりも、クドカンらしさ爆発の素晴らしい作品でした。(★★★★)