虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「カンフー・パンダ」

原題:Kung Fu Panda
監督:マーク・オズボーン、ジョン・スティーブンソン
脚本:ジョナサン・エイベル、グレン・バーガー


 


 5人(匹)のマスターを育て上げてきたシーフー老師。だが、長く優秀な戦士を育ててきた老師にも「不肖の弟子」が存在した。その彼が復讐にやってくるとの、報を受け急遽「伝説」の龍の戦士を決めることになった。だが選ばれたのは、ラーメン屋の息子の「パンダ」のポーだった・・・。


 パンダっつーとあれか!北京五輪にあてこんでんのか!


 というツッコミを受けて幾星霜。公開時期までかぶっては疑われるのも当然だが。箱を開けてみればなかなかに作り込まれた、志の高い作品だと思った。OPのアニメーションでぐっと引き込まれ、パンダが村レベルでの(ここ重要)伝説の戦士に選ばれるまでのドタバタも個人的には大好きなノリ。シチュエーション・コメディの国らしい、笑いの間の取り方の絶妙さと、パンダのダメっぷりを際だたせるシーンの中に、「達人」になりうる要素を伏線の中に挟み込む流れも軽やかで、なかなか侮れない。
 今回の悪役「タイ・ラン」の強さの描き方も、なかなか酷な状況から鮮やかに脱獄させることで描ききり、なかなかに盛り上げる。


 そして、パンダの食い意地を利用した修行の数々もなかなかユニーク。この辺のモンタージュも意外性ある驚きに満ちていて、面白い。


 マスター5VSタイ・ランの橋の上での激闘もかなり白熱する。アニメーションでカンフーを描くゆえの外連が実に心地よく、クライマックスの闘いも、アニメならではのVFXとジャッキー・チェンが使うような小技を組み合わせたような戦闘シークエンスになってて、ノって見られた。
 ただ、気になる点もある。タイ・ラン脱獄から、時間軸の使い方が多少おかしいこと、タイ・ランが、老師から受けた「対価」に比べて、あまりにも扱いが悪く救いがないこと。つーか、どんだけ暗黒面に堕ちたか知らないけど、難攻不落の刑務所を単身脱獄し、あの仕打ちに遭ってなお伝令の鳥を逃がし、しかもポーの修行する時間を与えるほど、テクテクゆっくりやってきて、なおかつ5人がかりの達人に対して一歩も退かずに闘い、しかも勝つ、ってどんだけかっこいいんだお前。
 つまりポーの成長ってタイ・ランの温情(甘さとも言うけど)のおかげであるはずじゃんか。そう考えると、もう少し彼に対してフォローがあってもいいじゃんか、と思った。続編があるならば、是非タイ・ランが救済される話を期待したい。(★★★☆)