虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「クローズZERO」

toshi202007-12-14

監督:三池崇史
脚本:武藤将吾


 原作は立ち読みで目を通したことがあるくらいで、詳しくは知らない。同じ舞台で、原作のはじまりの1年前を描いた映画らしい、という前知識で鑑賞。


 この映画が成功しているのは、高校時代の学生生活やイベント、授業風景などがなく、ひたすら喧嘩と不良がつるむシーンしかでてこない、という、不良がやりたい放題の不良天国を描いているからだと思う。そこらへんが「ワルボロ」との圧倒的な差かもしれない。不良純度が高い、というか「普通の学園生活」からドロップした少年たちの天国、「不良ファンタジー世界」として、鈴蘭高校というのはあるのかもしれない。とにかく濃ゆい「不良の闘争」劇が堪能できる。
 原作もフツーの学園イベントや授業風景がない、男性キャラばっかりつるんで、女性キャラがほとんどいない漫画らしいので、あの黒木メイサ演じるヒロイン?とその友達らがひたすら道具(アイテム)のような扱いなのも、原作に近いと言えば近いのかも。


 三池監督にしては非常にまっとうな作り、というか、ふだんのトリックスターぶりがカゲを潜めて、きちんとドラマのうねりのなかで、クライマックスの決闘にもっていっていく、直球な映画づくりがされており、びっくり。。三池監督としての不良感は、むしろこういう高橋ヒロシの世界と響き会うのかもしれない。。
 キャラクターもそれぞれ個性豊かで、特に高橋努演じる牧瀬(ブサメン非モテ童貞だけど度胸満点の一本気な男)はよかったですね。卑怯な手も辞さない伊崎に罠にはめられながら、真っ向勝負を挑みボロボロになった源治を指して、「(いままで誰ともつるまなかったのに)なぜ仲間にした?」と聞かれて、「理由なんかねえし、あっても俺の頭じゃなにも言えねえ」と言い返すところは、なんかぐっとくるものがある。


 この映画の脚本が一本筋が通っているのは、不良エリート集団である鈴蘭高校を中退し、いまはチンピラに堕ちてしまった片桐(やべきょうすけ)が、鈴蘭高校のトップに立つ野望を持つ源治(小栗旬)と関わっていき、やがて窮地に立つ、という流れをつくり、さらに、鈴蘭で台頭する源治と芹沢(山田孝之)の共通の友人である辰川(桐谷健太)の難病話をからめることで、ラストの決闘をきちんと盛り上げることに成功している。
 ただあの流れなら、片桐はああいうオチをつけるべきではなかったんだけど、その辺が、三池監督のまっとうなオチをつけることへの照れに見えた。


 ともあれ、三池監督作品の中では、近年まれにみるほどの正統派娯楽作であり、優れた不良ファンタジー映画で大変堪能しました。俺は好き。(★★★★)