虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「クローズド・ノート」

toshi202007-10-11

監督: 行定勲
原作:雫井脩介


 引っ越してきた日。彼は部屋を見つめていた。それが「私」と彼の出会いだった・・・・。
 


 「嫁に欲しい」



 とか映画感想に世迷い言を吐くほど、自分は沢尻エリカが大好きで、若手女優としては日本映画界屈指の才能である、と思ってきたし、それは今も変わらない。
 今回の例の「エリカ様騒動」に関しては、正直なところ複雑な気持ちであり、確かに彼女の態度そのものはマスコミの前で取るべき態度ではなかったとは思うものの、さりとて彼女がテレビでネットで罵倒され、ましてや女優休業の憂き目に遭う姿を見るのは忍びない、と思う。


 とは言いつつもである。事の推移を傍観していて思うのは、彼女はなんであんな態度になったのか、ということである。インタビューなどで態度がLであることは噂レベルではあったが、いろいろなところから漏れ聞こえてくるくらいには有名な話だったし、いままでの映画会見であそこまであからさまな反抗的態度を取ってきた人ではないし、いろんな特番での様子を見る限りでは特にその兆候もなかったわけで。その理由がなんともいえず見えてこなかったんですけど。


 映画見てひとつ分かったのは、なるほどこの映画、彼女にとって(結果として)不本意なものであったのだろう、ということである。映画の出来そのもの、というよりは、彼女の役柄である。




 母親の再婚を機に一人暮らしを始めた大学生のヒロイン。彼女は鏡のついた棚の奥にしまわれたノートを発見する。それは前の住人である女性が忘れていったと思われる日記であった。その住人はなんと教師らしい。写真には、竹内結子似のきれいな女性が、生徒達と写っている写真があった。教師志望のヒロインは、好奇心から彼女の日記を読み始める。やがて想像力豊かなヒロインは、彼女の言葉に自分を重ね合わせ、感化されていくようになる。
 そして引っ越しの日、彼女の部屋を見つめていた男性と、バイト先で再会したことから、ヒロインは彼にほのかな思いを寄せていく。



 沢尻エリカ演じるヒロインは、物語の狂言回しである。ヒロインは他人の日記を読むほどにはデリカシーが無く、大学生としては優秀でも熱心でもなく、基本的にうかつな失敗が多い女性である。どちらかというとドジっ子と呼ばれるぐらいの劣等生っぷりなのであるけれども。
 行定監督作品をみるのは「GO」以来なんだけど、いつの間にこの人映画撮るの下手になったんだろう、と思うくらい、演出力が落ちている気がした。とにかくコメディとして落とし込むべき部分がいまひとつノリきれてないというか、ようはコメディ演技よりも端正な画を撮ることを優先しちゃってる感じして、ヒロインの幼さが魅力的にならずに、単なる身勝手に映ってしまうのだよな。


 まあ、それだけならば、さして大きな問題ではないのだけれど。問題はその先にある。


 ヒロインに比べると、竹内結子演じる女性教師・伊吹先生はヒロインの中の「理想的な新人教師≒将来なりたい自分」として、あくまでもヒロインの「想像力」の中で、「教師として、そして一人の女性としての葛藤の人生」が展開されるのだけれど、彼女は基本的にしっかり者で、それゆえに葛藤する姿を描いているだけに、行定演出の相性は悪くない。むしろヒロインより数段魅力的ですらある。(まあ、彼女は彼女で多少イタいところが散見されるのだけれど割愛)
 それだけに、どうしてもヒロインよりも「格上の扱い」に見えてしまう。


 でも、それもまあいいとしましょう。相性というのはあるし。問題は。ヒロインはその、あの、ですね。はっきり申し上げて、あまり頭の方の回転がいまひとつなんですな。察しが悪いというか、想像力の使い方がなってないというか。
 彼女は他人の日記から、自分と重ね合わせることで豊かな想像力を発揮するのですが、その中に含まれているあまりにも見え見えな伏線の数々をことごとく見逃していくんですな。つまり、ヒロイン本人が思いを寄せる彼は、なぜあの日、自分の部屋を見つめていたのか。そして日記の中にでてくる、「伊吹先生」の思い人は誰なのか。そして、いま伊吹先生の境遇はどうなっているのか。そこまで想像する力がない。


 はっきり言いましょう。「アホ」なんです。ヒロイン。


 だって、この映画のオチ自体は、観客として見れば小学生だってわかるようなもんですよ。ていうかここまでわかりやすい伏線をご丁寧に積み重ねて、あそこまで意外性のないオチを、まるで「衝撃の真実」であるかのように出す脚本がね。もう。なんつーか。観客をバカにしているというかですね。ヒロインを、沢尻エリカをバカにしてますよね。
 でね。この「先生の日記」には破り捨てられた1枚があって、それがクライマックスになってるんですけれども。そこにはね。先生が日記には残さないで秘めておこう、と思った思いが綴られていたわけなんですが。ヒロインはそれを、結果として手に入れるわけですが。それを彼女はなんと・・・


 公の場で読み上げてしまうんですよ!こ・・・ここここのクソ女ってば!!・・・・あ、俺はエリカ様になんてことを・・・。


 しっかし、このヒロインは最悪!最悪。こーれは相当、俺の中では許せない行為ですよ。百歩譲って勝手に日記読んだことは不問にしたとしても、わざわざ日記から取り除いた部分を、てめえの自己満足のために公表するバカがどこにいるってんだ!他人のポエム手帳を、本人のしらないところで朗読するくらいの暴挙ですよ。そんなもん、朗読せんと、封印するなり、相手に渡すなりするだけで、良かったんちゃうの。
 しかも驚くべき事に、それが「感動的なイベント」として処理されていて、驚愕の一言。アホか。


 きっとエリカ様は、自分が演じたヒロインが、あったま悪い上に、デリカシーのかけらもない役であることに、映画の試写後に実感したに違いないですよ。彼女としては「汚点」として認識されていたとしても不思議ではないですが、あの騒動のおかげで、逆に興業の方は大変好調なようで、映画も人生も、なかなか思い通りにはいかないものですよね、とシメたところで、この映画の感想はお開き(CLOSE)、ということで。(★★)