虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「オーシャンズ13」

toshi202007-08-10

原題:Ocean's 13
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:ブライアン・コッペルマン、デビッド・レビーン



 とりあえず第1作はともかく、「オーシャンズ12」が嫌いな人はスルーしてかまわない映画と思う。



 ゆるい映画、というのは、最近の映画ファンには好まれない傾向にある。大概低く見る傾向にあるのだが、俺はね、このシリーズは割と好きなんですよね(あんま良い映画だった記憶がない「12」にも★3つだし<読み返して気づいた)。
 このシリーズは気の合うスターたちが寄り集まってゆるい映画撮ろうぜ、というコンセプトなわけだけど、「11」「12」はともに、ソダバーグの作家性がもともと硬質なだけに、そのバランス取りがかなり稚拙だったと思う。「13」に至って、よーやく、よーやく、ゆるみの境地に一歩近づいてきたかな、と思った。真面目さとくだらなさのバランスが取れてきた、というか。
 今回、特にいいのは仲間に女性キャラがいないこと。そして、基本的に「仲間のタメのリベンジ」という目的によって彼らの行動に一本芯が通った事で、それらがゆるゆる感を好ましいものにしていると思うのだが、今回はオーシャン一家のリベンジ話なのになぜか彼らは、一緒にやるのがうれしくてたまらない、という感じでなんか妙にノリノリなのが面白い。しかも無理矢理アゲている感じというよりは、うれしさがにじみ出る感じ、というのが、「12」とは違う年相応の落ち着きも感じさせて好ましい。


 あと個人的にいいと思ったのは、基本的に彼らの復讐は大がかりな「イタズラ」「嫌がらせ」ということ。要は「○○くれなきゃイタズラするゾ」という、ハロウィン的なほほえましさがある。
 しかも真面目すぎないところがあって、リロイ兄弟(今回さりげに大活躍)がサイコロに細工するために潜入したメキシコの工場で、不当賃金闘争を開始するという展開はくだらなさの中に、適度に人情を感じさせるさじ加減が俺の心にヒットでした。
 復讐と言っても、破滅させたいわけじゃない。ただ、仲間の受けた借りを返したいだけ。そんな一家のゆるい義侠心と、それに流れで力を貸すことになったかつての「被害者」アンディ・ガルシアが、その復讐(いたずら)を観覧してうれしそうに爆笑している姿をみるにつけ、「11」時代にフルボッコにして以来、彼らとの間のギスギスしたしこりがゆるやかに消え去っていく感じが、またね。良かった。
 ラストのダニー(クルーニー)とテリー(ガルシア)の会話は、敵対しながらも奇妙な絆を感じさせる、いいやりとりだったと思う。ダニーの粋な配慮に、テリーが乗ってくる、というのもいい。


 まあ、こいつらが集結するか分からないけれど、何年かに一度、こういうゆるい映画を見るのもいいかも、と見ていて思った。(★★★)