虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「デジャヴ」

toshi202007-03-22

原題:Deja Vu
監督:トニー・スコット
脚本:ビル・マーシリイ、テリー・ロッシオ



 彼女との初めての出会いは「死体」だった。


 500人以上が死ぬフェリー爆破事件が起こる。警察はテロ集団による犯行と断定する。しかし水上の事故は証拠を得るのは非常に困難であると、捜査の長期化を示唆した。
 そんな中、ATF(アルコール・タバコ・連邦調査局)の捜査官ダグは現場を捜査し、爆発がテロだった事を証明。さらに爆発現場の近くで発見された女性の死体について捜査する。体の三分の一がやけどでぼろぼろの遺体。しかし、焼けこげてなかった彼女の顔を見て彼は言った。「美しい」
 彼は鋭い観察力で彼女の死が殺人によるものだと見抜く。
 しかし奇妙なことがあった。その被害者は死の直前ダグに電話をかけてきていた。さらに彼女の家の冷蔵庫には「お前は彼女を救える」という奇妙なメッセージがあった。なぜ。どうして。


 やがて、彼の優秀さを見込んだ捜査責任者の抜擢によって、ダグは特別捜査班に編成された。そこにあったものは、「過去」を「監視」する装置だった。そこで彼は彼女と「再会」することになる。




 えーと。泣きましたね。男泣きです。SF的整合性についてどうこう言う人がいますが、間違ってます。重要なのはそこじゃない。


(こっから先はネタバレになります。これから見たい方は要注意)


 この映画において、アクションの要素はあります。サスペンスの要素もあります。タイムトラベルの要素もあります。だけど、この映画は「4日半」という「隔絶」の中で、「運命の女」に出会った男の愛の物語。
 彼は仕事は優秀だが、私生活は孤独である。愛する人は、様々な形で彼の元からいなくなった。その彼がなぜ、「たかだか500人の命」のために動くだろうか。死ぬやつは死ぬ。それが運命。彼だって同僚を失っている。運命を変えてやりたかった。だけど過程は変わっても運命は変わらない。
 しかし、「彼女」の父親が言った「犠牲者の調査はいつだっておざなりだ。忘れてほしくない」という一言が、彼を少しずつ変えていく。「死んだ人間だって生きていたのだ」と。いや、生きている!生きているじゃないか!
 俺は死体の彼女を見ている。葬式にも出た。でも、でも、「向こう側」の彼女は俺の目の前で生きている!


 「世界」で初めて、だけど生きては戻れぬ、たった一度のタイムトラベルへ。運命の女を救うために。そしてもう一人の「彼女」とかつての相棒を殺した男の目的を止めるために。彼は「運命」を覆しにかかるのだ。そのために彼は必死に必死に動いていく。
 この「たった一度きり」のタイムトラベルへと向かう段階の踏み方も丁寧で、たったひとつの「ワームホール」を国家が管理している、というのもリアルだし、その有効活用として「再現」していると嘘をついて、その「時空の屈折」を利用して監視システムにしてしまう、というのもありそうな話だ。



 その設定をガンガン利用して、画面は躍動しながら、結末への一気呵成に進んでいく。そしてラストの見事な「デジャヴ」な画は、思わず「座布団一枚!」の粋な落ちで、もうすべて許す!な気持ちに。
 ちきしょう!もう!泣いた。泣くよ!


 設定がどうの、タイムパラドックスがどうの、ごちゃごちゃ言うな!だまされろ!男ならだまされろ!


 ・・・と力説したくなる、愛すべき映画である。大好き。(★★★★)