虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「イルマーレ」

toshi202006-09-25

原題:The Lake House
監督:アレハンドロ・アグレスティ
脚本:デビッド・オーバーン


 2004年。建築家である男が、湖ぞいの家に引っ越してくる。そこは長年空き屋であったはずだが、なぜか前の居住者の葉書がポストに入っている。いぶかしく思いながら読むと、「橋には犬の足跡」、「屋根裏には箱」と書いてある。調べてみるとそんなものはない。いたずらか?と思う彼。だがある日、橋の欄干のペンキをぬっていると、犬がふらっとやってきてペンキを足につけて渡っていく。橋には「犬の足跡」ができた。
 2006年。目の前で起こった交通事故の被害者を救えなかったことにショックを感じた女性医師は最近まで過ごしていた、湖ぞいの家へとやってくる。ふとポストを見ると、後の居住者に宛てた手紙に「返事」が届いている。だが、この家、「未だ居住者が入っていない。」いぶかしく思いながら、読む。そして、「返事を書く」



 こうして、二人は時を超えて、出会った。


 同名韓国映画のリメイクであるから、とか、「スピード」カップルふたたび、という理由ではなくて、上のタイトルを思いついたので(笑)ふらっと見に行ったのだが、あまり大きな期待をかけてなかったせいか、元の映画を見てないせいか、思ってたものよりもずっと良かった。
 この映画のよさはおそらく、チョン・ジヒョン主演の「オリジナル版」にはない部分にある。それは、「時をこえた文通」というワンアイデアをオリジナルから拝借しながら、「文通」そのもののときめきよりも、相手との意気投合することで人生に希望を見出していくところに焦点を置いたことだ。40才前後の男女のファンタジーとして設定して、しっとりとしたラブストーリーに仕上げてきた点が、とにかく好ましいのである。
 で、その文通をする二人を演じる、サンドラ・ブロックキアヌ・リーヴスも、演技派というわけではないのだが、この二人の「妙に人生に疲れた感」というか、「人生に黄昏れ始めた季節」にある役のキャスティングとしては実にドンピシャで、文通相手にときめきを感じる世代としても、申し分なし。特にサンドラの、「人並み以上」には美人だし、人生に期待したいけど、厳しい仕事*1や男のいない生活に足を絡め取られていることに、疲れ始めている女っぷりは、思った以上にリアル(笑)で、そんな女が「文通相手」に惹かれていくという話に、きっちりとした説得力をもたらしている。


 この映画の肝は文通そのものよりも、彼らが彼ら自身の人生をなんとか生きていながら、その「人生」だけでは手に入らないものを、互いに相手の中で感じ始めていくという過程を、きっちりと描き切ってる点で、恋愛に対するロマンティシズムというよりも、彼女との、彼との人生に「希望」を見出していく物語として、描いている点が素晴らしいのである。
 バレバレの伏線を「裏返す」この終わり方は、SF的にもご都合主義の感がなきにしもあらずで、いささか興醒めする人もいるだろうけれでも、互いの人生にとってよりよくするための相手の生死の狭間に躍動するサンドラの必死っぷりは、かなり真に迫っていて、個人的にはかなりグッときたりした。いいリメイクになったのではないかと思う。俺は好き。(★★★★)

*1:彼女の大変さがわからん人は「ER」を見るように