虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「スーパーマン・リターンズ」

過去の遺物 in 現代。

原題:Superman Returns
監督:ブライアン・シンガー


 俺にしては珍しく予習してから見に行った。つまりこの映画は「スーパーマン」と「II/冒険編」の続編である、という前提を踏まえて、ちゃんと見直してから行ったのだ。はるかに昔すぎてストーリーなんて全然覚えてなかったし。
 結果としては、しまったああああ・・・・と思った。予習が仇になったとしか言えない。だって時代が明らかに5年後じゃねえじゃん。ブライアン・シンガー時代考証くらいきちんと押さえてくれよ。なんで現代なんだよ!だったら、「II」から5年後とか言うなああああ!おかげで、「II」の舞台が2001年だった、という設定のスーパーマンIII、という脳内変換を必死にしながら見るハメになった。なんでせっかく予習したのに、そんな苦労せにゃあならんのだ。そんな苦労せんためにやった予習なのに。
 というわけで、これから見に行くみなさん、予習しなくてもいいです。なんも知らないで、こういうもんだ、と楽しんだほうが得です。


 で、現代に甦ったスーパーマン。オープニングは、やっぱり興奮したし、スーパーマンの「飛翔」の描写は素晴らしくブラッシュアップされているし、その上での続編としては、ヒロインに存在を拒絶されて苦悩するスーパーマン、というお話になってて、なるほどなあ、と思いはしたものの・・・。


 困った。


 ブライアン・シンガーによほど思い入れがあるらしくて、かなり堂々たるスーパーマンである。つまり、そのまんま、クリストファー・リーブの古き良きスーパーマン像をきちんと踏襲してしまったのだ。
 ああああああ、俺、こういうの苦手なんだよ。「キングコング」なんかもそうだけど、原典に過剰に思い入れがある監督がリメイクした作品*1がすげえ苦手。監督が、映画が時代の産物だということを、コロっと忘れてしまうことが多いからだ。その時代ならば許された「嘘」が現代で通用するとは限らないじゃないか。そういう感覚が麻痺しちゃう弊害が本作でも出まくってる。
 だって、彼がいなくなったと言われた2001年(この映画に準拠するならば、だよ)つーたら、9.11ですよ。彼がいたなら、9.11なんて起きてるわけねーじゃん。しかも「II」の話って、スーパーマンの母星の3人の悪人がホワイトハウスをのっとっり、スーパーマンを窮地に追いつめる話で、そのとき合わせて4人の超人がその国にいたんだよ?テロリストだってこんな超人のいる国をどうしようとも思わないじゃん。そんな時代に、いまだに大言壮語の小悪党・レックス・ルーサーが「ライヴァル」なんだよ。なんで?なんで、いまさらこんなのが幅を利かせたり、スーパーマンという最強の生物を追いつめにゃあならんわけ?
 しかも今回の厄災の原因はクラーク・ケントが地球に持ってきた物が主因じゃねーか!それであんな大地震起こったら、ちょっとやそっと人救ったくらいじゃもたんだろがああああ!あの地震によって、彼の知らないところでいっぱい人死んでるね。


 彼の大好きな地球ってのはいまだ「メトロポリス」の一角と、ケント家周辺くらいでしかないのだろう。彼には助けて欲しい、という人の声が聞こえるという。でも、彼にはイラクのばあさんの叫びも、レバノンの少女の声も聞こえないのだろう。いまさらそれでいい、なんてほど脳天気な時代じゃないだろ、今の時代。



 スーパーマンは必要か。いらないんじゃないかな、やっぱり。現代には。


 個人的には「X-MEN」1・2の方がブライアン・シンガーらしさがにじみでていて好きだ。変に思い入れに囚われると足元をすくわれる、という好例なのではないだろうか。スーパーマンを愛しすぎちゃってどうしようもない人にお勧めする。(★★★)

*1:渡辺麻紀が絶賛する類の・・・