虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「日本沈没」

異議ありっ!

監督:樋口真嗣


 どうした化け物。おまえのチカラはそんなものか!!


 むうううううん。悔しい。
 もう。ただ一言。もったいねええええ。


 日本版「デイ・アフター・トゥモロー*1を期待した俺の立場は!いや、そんなもん知ったことじゃないか。しかしだ!


 極論を承知で言ってしまえばさ、樋口真嗣!おれはあんたにこんなあまっちょろい話なんか期待してないんだよ!沈ませろよ!なぎ払え!ぶっちゃけ人の死に様を見せろ!もっと!もっと!日本沈没だよ!日本の国土が沈むんだぜ!こんな未曾有の大災害で、人が死なないほうがおかしいわけじゃん。それをさ、数字だけ示して、それで描写しました、って済ますなよ!


 なに、このテレビバラエティのシミュレーションドラマ豪華版みたいな話は。


 あんたは残酷な神の手を手に入れたんだぜ!おおっぴらに人でなしな行為を、大量殺戮を「やっていい」、という権利だ。それをしっかり行使しておきながら、なぜ、その様を凝視しようとしない!やる能力がない奴にそういう無理を言うつもりはないけど、あんたなら出来たはずだ。
 (数の上で示された)犠牲者たち、死に損じゃん!何千万の死に様を数字のままにするなんて無慈悲なことするなよ。なんのために日本を沈ませるなんて、壮大なホラが生まれたと思ってる!もっとも理不尽で、そしてもっとも犠牲者が出る、有効な方法は、自然界の猛威だからじゃないか。その死に様を描写すればこそ、虚構の犠牲者たちは浮かばれるのだ!

 犠牲者がもっとも少なそうなところをピンポイントで選んで、陳腐な感傷ドラマを展開させるなんて、らしくないことすんなよ!そんなもん、「三丁目の夕日」にでも任せておけよ*2!「ガメラ3」のときのアンタは、あんなにイキイキと残酷だったじゃじゃないか!


 怪獣映画はともかく、特撮災害映画方面では、ローランド・エメリッヒにすら日本は及ばないのですよ。まだ、日本はそんなレベルなんですよ。悔しい。もったいない。気分は特撮映画ワールドカップ予選敗退ですよ。


 決してチカラがないわけじゃない。それはわかる。それなのに、その使い方がまるでなってない!
 トヨエツの博士の造形とかは割と好きだし、國村隼演じるひとでなし官房長官は、すげえ好きですけど。破滅すんならきっちり破滅させろよ。プロジェクトXなら徹底的にプロジェクトXやるべきだし、シミュレーションドラマならシミュレーションドラマで、徹底的にシミュレーションすればいい。だけど、そのどれにも目移りしたあげく、どの方面にも中途半端になってしまっては意味ない。
 もっと、もっと面白くなったはず。それが悔しい。やりきれない。少なくとも俺は、この題材で、そしてこの監督で、こんな「黄泉がえり」レベルのドラマを期待してはいなかった。(★★★)


追記:ああ、あと全然関係ないけど、石坂浩二演じる首相の「理想論に過ぎるかね」というセリフ、おかしくねえ?「理想論に過ぎないかね」の間違いじゃないのか?いいの?あれで。

*1:いや、大好きなんですよ。アレ。

*2:いや、俺、大好きですけどね。>三丁目の夕日