虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」

toshi202006-03-03

原題:Walk the Line
監督・脚本:ジェームズ・マンゴールド 共同脚本:ジェームズ・キーチ/ギル・デニス
公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/walktheline/


 えー、突然だが。俺は長男なんである。


 そんな私がですね、今日、「ウォーク・ザ・ライン」を見たんだけれども。この映画はですね。カントリー・シンガー、ジョニー・キャッシュと、2番目の妻となるジェーン・カーターが結婚するまでを描いた映画なんですがね。うーん。

 出来からすればね、決して悪くないわけですよ。いや、俺、ジョニー・キャッシュ本人しらんのだけど(ごめん)、ホアキン・フェニックスはなかなか熱演してるし、歌はなかなか引き込まれるものがある。ジェーンを演じるメリケン・チョキチョキズことリース・ウィザースプーンもなかなか芸達者なんで、ふたりのステージシーンなんかは素晴らしい。
 このステージを一緒にやるうちに好きになっちゃって、どうしようもなくなるわけですよキャッシュくんは。


 なんで偉大なシンガー相手に「くん呼ばわり」かっつーと、映画を見てると感じるんですよね。キャッシュが次男坊気質なのが。

 彼はですね、結婚して子供も生まれて、セールスマンもうまくいかなくて、たまたま入ったレコーディングスタジオでのオーディションでうまいことやって 才能を見出され、一躍スターダムにのし上がる。そしてツアーで全米中を回るときに、かつてラジオで歌声を聞いたジェーンと出会い、彼女に惹かれていくわけですね。妻子持ちにもかかわらず。


 彼は幼い頃に兄を事故で亡くしている。その時の父の言葉が心に針のように刺さりつづけていた。そのことが彼のコンプレックスであり、弱さの原因として描かれる。「俺が死ねばよかったのに」この言葉はおそらく夭折した偉大なる兄貴を持つホアキンにも他人事ではないだろう。



 だがなー。それにしたってなー、彼女に袖にされるたびにヤクにはまってたり、奥さんが見ているステージでジェーンといちゃいちゃ歌ったり、自分の部屋に彼女とのステージの写真を飾ろうとしたりとするんですよ、こいつ。そんな奇行まで、兄貴の死のせいにするんじゃねーよ、と思いましたよ*1
 奥さんもついに切れて家を出ちゃうわけなんだが、この映画の難点は、なんか奥さんが無理解だから別れたみたいになってること。当然だろがよ、と俺なんか思いましたもん。


 奥さん出て行っても「ジェーンジェーン」とか言って追いかけましてる辺りで、こっちは引きまくってますよ。お前、反省しろよ!ちったあ!そんでもって、父親に向かって、「ぼくあのとき、こんなこと言われてきずついたんだよー」とか泣き言言う始末。逆に親父から「俺は酒もやめたし、才能ないけど頑張って生き抜いてきたんじゃ、ヤク中ロックスター殿」と言い返される。甘ったれた次男坊に対する、強烈な一言。わはは、親父グッジョブ!と長男の俺は大喜び←ひどい。


 この映画で一番感動したシーンは、普段からファンレターを読まないキャッシュが、刑務所から届けられたたくさんのファンレターを読んで刑務所でライブ盤を録音する、という展開。「お前は俺たちの心を歌っている」という言葉に押されるように、彼は歌い手である自分に向かっていく。俺、ここが一番ぐっときた。


 つーか、ここで終わってれば良かったのにと思った。


 結局ステージ上で、ジェーンにプロポーズして承諾をもらう場面で終わるんだが、俺は、この二人の関係がどうなろうとどうでもよくなっていた。むしろ、蛇足に感じた。ジェームズ・マンゴールド監督が本当に描くべきは、ジェーンとのよろめきではなくて、キャッシュが真の意味で、「君(観客)につづく道」へと戻っていく姿のはずなのだ。(★★★)

*1:その点言い訳しないレイ・チャールズは偉大だよな