虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「フライトプラン」

toshi202006-01-30

原題:Flightplan
監督:ロベルト・シュべンケ 脚本:ビリー・レイ
公式サイト:http://www.movies.co.jp/flight-p/


 突然の夫の訃報。それがすべての始まりだった。


 彼女は精神の不安定を感じながらも、その死を受け入れ、異邦・ドイツから故国・アメリカへと帰る。新生活への不安、喪失の痛みを無くそうとする彼女に娘の存在はとても大きなものだった。そんな彼女と娘、夫の棺を運ぶのは、最新鋭のハイテク航空機E−474。それは彼女が設計に関わった飛行機だった。
 飛行機の席につき、娘の存在を確かめながら、ふと緊張の糸が途切れたようにまどろむ。しばらくして、目が覚める。別の席で横になっていた自分に気づく。娘がいない。探し、人に聞いて回り、添乗員に探させる。だが・・・みつからない。やがて、彼女は知らされる。娘の「搭乗記録」がないことを。


 大事な娘が消えた。高度一万メートル上空の密室で。まるではじめから存在してなかったかのように。




 というわけで、人間消失という古来よりの伝統的サスペンス。トリック自体は、まあ、それほど大したもんでもないのだけれど、その辺はもう撮ってる方も分かってるのか、ジョディ・フォスター演じる母親*1ってるのかってないのか」というところに話の焦点をもってきてるのが面白い。



 娘がいないと分かるや、精神的に追いつめられた母親特有の行きすぎた執着が、飛行機中をパニックに陥らせるという展開に思わず半笑い。ヒステリック言動を連発し、乗務員をことあるごとに痛罵し、あらぬ人物に疑いをかけ、掴みかかって暴れ回ったりと、頑張れば頑張るほど周りの信頼を失っていき、やがては娘を捜して勝手知ったる航空機を暴れ回る、という展開。彼女の行動に、子供はちびり、乗客はトイレにも行けず、人種間で喧嘩まで起こる。行きすぎやりすぎ、暴走しまくり。そんな彼女が捕まると、乗客からスタンディングオベーション。笑ってしまった。


 そんな前半が面白すぎて、逆に謎が明らかになる後半がやや失速するんだけれども、それでもダレ場を作らず一気に畳みかけるので意外とこの手の映画にありがちな「うんざり感」は希薄。話自体は良くできているとは言い難いが、ハイテク飛行機内部の見せ方や映像設計自体は結構凝ってたりするし、鑑賞前に聞いていた悪評ほどには、悪くないと思った。結果として十分楽しめたので、まあよし、というところである。(★★★)


追記:私が比較的ジョディ・フォスター演じる母親に寛容だったのは直前になんでか、恋愛きちがい弁護士コメディドラマ「アリー・myラブ」第2シリーズなんぞを久々に鑑賞して、ほっこりしてたからかもしれません。ジョディのキレっぷりをアリー・マクビールと重ね合わせて、なんとなく微笑ましく見てしまった感が。アリーが母親になったらこんな感じか、とかちょっと思った。


追記2:そういや、脚本のビリー・レイって「ニュースの天才」書いた人だっけ。主役の正気と狂気のギリギリな精神状況を描く作劇や、敵がムグムグ・・・なところも含めてまったく同じだな、そういえば。

*1:フォーガットン」に続き、クラリススターリング役の女優の子供が失踪してるのは、レクター博士の陰謀か?